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baseball2018.10.10

山崎武司(元中日・オリックス・楽天) 理想の指導者像と感覚を大切にした道具選び【インタビュー後編】

[前編: 代名詞は豪快なホームラン。勝負強さの秘密と思い出の一発 はこちら]

27年のプロ生活の中で山﨑武司が出会った監督の数は11人に上る。その中には“ID野球”野村克也監督や“闘将”星野仙一監督も含まれる。

それぞれの監督が自身の個性の下にチーム作りをする中で、その手法を選手として見続けてきた彼は今後どんな指導者を目指していくのだろうか。

また、球界屈指のスラッガーは一体どのような道具を使い、ホームランを量産していたのか。

後編ではより深く山﨑武司の野球へのこだわりを紐解いていこう。
 

対照的な指導者との出会い。それぞれから得た学びを生かして。

-考えて野球をするようになって、やはり野村克也監督との出会いが大きかったのでしょうか。

野村監督との出会いは僕を変えてくれましたね。もし出会ってなかったら今の自分はいなかったと思います。今でこそ嫌いなものは嫌い、好きなものは好きと勝手気ままにやらせてもらっていますが、それも野村監督が僕を再生させてくれたおかげです。

-あともう一人山﨑さんと言われて思い浮かべるのは星野仙一監督でしょうか。

星野監督の時は理不尽なこともたくさんありましたね。こんなことに一体何の意味があるのかと思ったことは本当によくありました。でもそれが精神的な修行になって自分は強くなれました。

-非常に対照的な指導者と言えそうですね。

野村監督は自分の考えを選手に植え付け、その上で考えさせて実行するタイプで、星野監督は力でねじ伏せて選手を動かすタイプでした。

ここはチームの状況やフロントの意向も絡んでくる部分なのでどちらが正しいということはないです。実際僕自身も星野さんが監督の時は難しい宿題を出されて正直きつかったですけど、それをクリアしたことでホームラン王を獲らせてもらいました。

ただ、力でねじ伏せるやり方は、一気に分裂してしまうという弱さも孕んでいると僕は思います。 一方で野村監督の場合は選手自身に考えさせて野球をやるので、黄金期のヤクルトは長く強い時期が続きました。

阪神も楽天も優勝させたのは星野さんですが、いずれも基礎の部分はその前に野村さんが作ったと言えると思います。野村監督の下で考える野球を実践できるようになった選手を星野さんは力で統率するという自分の色を加えることで優勝させた部分はあったのかもしれません。

-様々な監督と野球をしてきた山﨑さんは将来的にどのような指導者になりたいですか。

個々に指導者は自分の色は出したがるもので、これはどんなスポーツでもそうだと思うんです。僕も現役生活を通して11人の監督とお付き合いさせてもらったので、その人たちの良いとこ取りをしていきたいですね。

合っていようが間違っていようがまずは自分の色にチーム全員を山﨑カラーに染めていって、それでうまくいかなければ責任を持って新しい人にバトンタッチするという覚悟を持って取り組みたいと思っています。

あとはトップに立つ人間として、向こうに敵がいるとわかっていて部下に先に行かせるようなリーダーではなく、自分が先に行って戦うくらいの覚悟を持っていたいと思います。

グラブとバットは軽く。道具は変化を好まず。

-山﨑さんが現役時代使ってきたグラブのこだわりを教えてください。

僕がグラブで一番重視していたのは軽くて皮が固いことです。でも固いものにするということはある程度皮を分厚くする必要が出てきます。だから多少壊れるのが早くなったとしても皮が薄くて軽いグラブをお願いしていました。一番長いもので7年くらい使っていました。そのグラブは楽天の最後まで使ったかな。

-軽いものがいいということはあまりオイルなどは塗らなかったのでしょうか。

いや、むしろ僕はベンチにグラブオイルを持って行って毎イニング塗っていました。 塗って乾拭きしてというのを繰り返して、常にベストな状態で使えるように準備をしていましたね。グラブのしっとり感は毎イニング変わりますし、ゴロが転がれば砂にさらされて滑りやすくなりますから、試合中は状態をこまめにチェックしていました。逆に試合が終わってからは手入れをしなくて、また試合が始まる前になると磨くという流れです。

-数々のホームランを支えてきたバットや手袋はどのようなものを使っていたのでしょうか。

バットはトップバランスで軽めのものを使っていました。素材は最近では原木が少なくなってきているアオダモを最後まで使わせてもらいました。打った時のしなりの感覚が全然違うんです。バットの木の種類はアオダモの他にメイプル、ホワイトアッシュといったものがあります。しかし、今主流のメイプルはしなりが弱く、真っ直ぐなまま出てきてしまうので全然合いませんでした。逆にホワイトアッシュはしなりが大きすぎてしまいます。それに比べてアオダモは当たった瞬間、一瞬しなり、そこから反発して一気に飛んでいく感覚が得られます。

バッティンググローブは僕の場合左しかつけなくて、長くても2試合ぐらい使ったら練習用に回しちゃってました。

デザインの流行的には手首を固定するテープのところが年々太くなっていってるんですけど、僕は昔の細めのタイプが好きでそれを最後まで貫きました。

バットも他の選手はヒットを打つとそれは長く使いたいと思う人もいるみたいですが、僕はちょっと凹みが見えたりするとすぐ変えていました。

スポーツ用品も日々進化していて使いやすいものをメーカーさんは開発してくれてると思うんですけど、それに僕はついていけなくて。例えばスライディングパンツなんかも通気性が良くなったり、改良されてると思うんですけど、自分には合わなくて20年くらい前のモデルをその時に大量にストックして引退するまでずっと同じタイプのものを使っていました。アンダーウェアも今はピタッとしたタイプのものが人気ですが、僕の場合は最後まで昔ながらの緩めのアンダーシャツを使っていました。

-下半身を支える上ではスパイクも重要ですよね。

そうなんですけど、今はスパイクを履かない人も結構いて、特に外国人選手はゴムシューズで打席に入ったりとかするんですよね。

僕もゴムシューズで1年やったことがあって、そのシーズンは打率を残すことができました。でもやはり遠くに飛ばすためにはグリップ力も必要だというところに行き着いて、スパイクに戻しましたね。

僕が現役の時は横浜のローズが刃の枚数が減らしたスパイクを履いていました。そこでミズノの人にそれを応用した金具とゴム両方の刃を使った形のスパイクをオーダーしたことがあります。そこは結構選手の間での評判もよかったですよ。

グリップ感が強すぎると嫌がる人も多いですから。踏ん張って止まれるだけじゃなくて、ほどよく抜ける感覚もあった方がスイングしやすいというか。

あとはマジックテープだとずれてしまうので、守備につく時は紐靴じゃないとダメです。スパイクの手入れについては汚れたら磨くぐらいでした。

山﨑武司の打撃の基本は“回転”

-最後に山﨑さんのように豪快に打球を飛ばしたいと思う野球プレーヤーに向けてアドバイスをお願いします。

よくホームランを打つためにはどうしたらいいか、という質問をされますが、誰だってみんな160kmのボールを投げたいですし、打球をできるだけ遠くに飛ばしたいと思っているものです。その中で柵越えを放てる人というのは限られた人だけなんです。でもその代わりに野球にはホームランを打つこと以外にも、いろいろな貢献の仕方があります。自分の強みを生かしてそれぞれの役割にハマることが大切ですから、ホームランを打つためにどうしたらいいか、というのは実は一番難しい質問なんです。もちろんボールを遠くに飛ばす上での細かい技術はいろいろありますけどね。

ただ、それでももしあえて1つアドバイスをするとしたら、打球は押したり引いたりしても飛ばないということ。ボールを飛ばすために大切なのは回転することです。体をうまく回転させれば今60〜70m飛ばせる人は飛距離が80mくらいにはなるでしょう。ただし、それをいきなり100mにすることは不可能です。打撃において大切なのは回転だということは皆さんにお伝えして、これからも野球を楽しんでもらえたらと思います。

[前編: 代名詞は豪快なホームラン。勝負強さの秘密と思い出の一発 はこちら]

 




【インフォメーション】
山崎武司オフィシャルウェブサイト
http://www.yamasakitakeshi.com/

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