長井 かおり(ヘア&メイクアップアーティスト) RUNNING TICKET Vol.6
彼女は、なぜ走るのか。
ランニングを日常の中に取り入れて生きる女性たちに「走る理由」をお聞きするインタビュー企画、「RUNNING TICKET」。第六回目となる今回は、スポーツメイクの第一人者であり、ヘア&メイクアップアーティストとして活躍する長井かおりさんにインタビューを行なった。
【ランナープロフィール】
長井 かおり(ながい かおり)
雑誌・広告・映像などの第一線で、モデルや女優のヘアメイクを手がけるかたわら、女性向けのメイクレッスン講師としても活動。また、スポーツの際に崩れにくい「スポーツメイク」の第一人者でもある。
著書「〜周囲がざわつく自分になる〜必要なのはコスメではなくテクニック」は10万部を超える大ヒットメイク本となり、2017年発売の2冊目の書籍「こんなことで良かったの!?96のメイクテクニック 美しくなる判断がどんな時もできる」も5万部を超える大ヒット本に。理論的で、取り入れやすいメイク法がたくさんの女性に支持されている。
■ 「なにか力になれないか」その想いが、「スポーツメイク」を生む
親子やカップルが散歩を楽しむ秋晴れの多摩川沿いで、颯爽と走る長井さんに会った。
スポーツメイクの考案や、女性のためのランイベントの運営にも携わっている長井さん。
走る女性たちを応援する彼女に、なぜランニングをするのか、その理由もうかがう。
-長井さんがランニングを始めたきっかけを教えてください
長井:以前、ランニングが趣味の友人が「一緒に走ろうよ」と誘ってくれたんですね。
でも当時の私は日々の仕事でいっぱいいっぱいで、その誘いになかなか乗らなかったんです。
なんだかんだ1年くらいは断っていたかな(笑)。
でもある日、いつものようにその知人と呑む約束をしていたら「じゃあ、呑む前にちょっと走らない?」と提案されたんです。
それで試しに走ってみたら、すごく楽しかった。
それからというもの、その友人とお茶や食事をする際には「まず走ってから」というのが当たり前になっていったんです。
お酒を呑む際に走ると、「今日はちゃんと走ったから」と罪悪感も消えますし(笑)。
-そんな始まりだったんですね。それがどんどん本格的にハマっていったと
長井:誘ってくれた友人は当時、「ランガール」という企画集団を立ち上げていました。
この「ランガール」は今年で結成8年目になるのですが、女性ランナーのための練習会や大会イベントの開催、メディア運営などを行なっています。
長井:結成当時はまだ「走るのが好きなフリーランスの女性チーム」といったものだったのですが、私もその活動を目の当たりにして「なにか力になれないか」と考え始めたんです。
私はメイクの仕事をしていたので、「女性をきれいにする」という共通点が響いたのかもしれませんね
-その「なにか力になれないか」という想いが、「スポーツメイク」を生むことに?
長井:そうですね。いろいろと当時のマラソン事情を調べていく中で、国内のマラソン大会のほとんどが男性主体の大会であることを知ったんです。
これは参加者の8割が男性であるため仕方のないことではあったのですが、実際に女性ランナーの声を聞くと、不満や悩みはたしかにありました。
特に印象的だったのは、「ゴールの瞬間に顔を伏せてしまう」という声でした。
大会にはオフィシャルのカメラマンがゴール付近に待機していて、ゴールするランナーを写真に撮っていくのですが、彼女たちのほとんどがすっぴんで走っていたんですね。
もしくはメイクが汗で崩れてしまっていた。
その顔を写真に撮られたくないと、ゴールの際に顔を伏せてしまう女性が多かったんです。
-せっかく清々しいゴールの瞬間なのに、なんだかもったいないですね
長井:そうなんですよ。たしかに私もランナーの彼女たちがみんなすっぴんであることには違和感を感じてはいたんです。
その頃は派手な蛍光色のランニングウェアなどが流行っていて、みんなピンクやイエローの鮮やかなファッションで走っているのに、顔だけはすっぴん。
普段ならファッションに合わせてメイクするはずなのに、走る時だけそうではないんですよね。
そこで、汗に崩れにくくヘルシーな印象の「スポーツメイク」というメイクをもっとみんなに伝えなければと思い立ったんです。
当初はそれこそ男性を中心に「なんで走るのにメイクが必要なんだ」と理解してもらえないこともありましたが、徐々に賛同してくださる女性たちや化粧品メーカーも増え、スポーツメイクの講習会にもたくさんの方々に参加してもらいました。
オリンピックに出場する女性アスリートにもスポーツメイクの方法をレクチャーすることがあります。
たとえ日本を代表するアスリートでも、みんなきれいになりたい普通の女性ですから。
■ 目の前の道に集中することで、仕事のことを強制的に忘れる
-長井さんご自身も「スポーツメイク」の実証や研究のため日常にランニングを取り入れていますが、走ることでなにか変化はありましたか?
長井:以前は肩凝りがひどかったので、少しでも時間が空いたら整体に通っていたんです。
それが走り始めたらそもそも肩を凝ることが少なくなりました。
今では時間が空いたら整体ではなく走るようにしていますね。
ランニングはシューズさえあればできるスポーツなので、ちょっとした時間でも行えるのが良いですよね。
-ランニングをする際に設けているルールってなにかありますか?
長井:走っている最中はなるべく仕事のことを考えないようにしたいので、意図的に走ったことのない道を選ぶようにしています。
そうすれば「あれ? この道ちゃんと繋がっているのかな」と慎重になったり、「なんだか雰囲気の良いお店だな、今度来よう」と新しい発見があったりするんですよ。
目の前の道に集中することで仕事のことを強制的に忘れることができるんですね(笑)。
■ 愛用しているのはnew balanceの「FUEL CORE Sonic」
-普段使っているランニングシューズについて教えてください
長井:愛用のランニングシューズはnew balanceの「FUEL CORE Sonic」です。
これは最近出たばかりのランニングシューズで、靴ひもがない代わりに側面にダイヤルが付いていて、このダイヤルを回すことでシューズを調整することができるんです。
脱ぐ際もダイヤルを引くだけなのですごく便利ですよ。
このシューズは中級から上級者も満足するんじゃないかなって思います。
というのも実際履いてみると、「スピードが出せるシューズ」という印象なんですね。
軽いというよりは、「かろやか」という表現が近いかもしれません。
■ ランニングをする際に、日焼け以外にも気をつけるべきこと
-ほかに普段使っているアイテムはありますか?
長井:日中走る際にはサンバイザーを使うことが多いですね。
このサンバイザーは以前ランガール★ナイトの参加賞として、協賛企業のベルメゾンさんとコラボして作ったオリジナルサンバイザーなんです。
いまだにこれをつけて走っているランナーさんもいて、とても嬉しく思いますね。
ウエストバッグにはスマホやちょっとしたコスメを入れることができるので便利です。
大会の際にはここにドライフルーツなどの食べ物も入れていますね。
ウエストバッグは買う前に実際に身につけてみて、少し走ったりジャンプしたりすると良いですよ。
少しでもガチャガチャと揺れると、走っている最中にかなり気になってしまうので要注意です。
-走る際に「これだけは持っておいたほうがいいよ」というコスメはありますか?
長井:最低限、2つは持っておいてほしいですね。
それは日焼け止めスプレーとリップクリームです。
日焼け止めスプレーは髪にも肌にも使えるものを選びましょう。夏場などは意外と髪も日焼けするので注意が必要です。
ランニングをする女性って、日焼けについては気をつけているのですが、どうしても保湿を怠っている方が多いんですよ。
ランニングのようなスポーツは、汗をかくことによって想像以上に水分が身体から失われていきます。
そのため、肌が乾燥しやすい状態にあるんですね。
ですから、普段から保湿は心がけましょう。
長井:また、リップクリームは走っている最中でも塗り直すようにしてください。
色付きのリップを選べば、保湿効果だけでなく見た目もかわいくなるのでオススメですよ。
フルメイクをしなくても、リップや目元だけメイクするだけでも印象はかなり変わります。
できればUVカット効果のある色付きリップが理想的ですね。
-これからランニングをはじめるみなさんにメッセージをください
長井:メイクって、すごく心に作用するものなんです。
メイクひとつで気分が晴れやかになったり、気持ちが強くなったりすることってありますよね。
スポーツをする際にも、それは同じことだと思います。
ぜひ、スポーツメイクを生かして、見ためも心もHappyになってくださいね!
長井かおり公式Twitter:@nagaikaori0918
Instagram:kaorimake