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baseball2018.11.01

ミズノ野球用品企画担当者に訊く、新軟式「J号球」対応のグラブとバットのすべて【インタビュー前編】

今年から、軟式野球のボールが変わることをご存知だろうか。全日本軟式野球連盟が2016年12月にボールの新規格を発表し、2018年から小学生用の「C号球」が「J号球」へと変更される。まだ発売されてはいないが、11月はじめには店頭に並ぶ予定だ。

ボールがJ号球に変わることでどうなるのかというと、C号球より硬くなり、多少重みも増す。したがって、よりパワーが求められるようになり、軟式プレーヤーはしっかりとしたトレーニングが必要になってくるだろう。

そして、ボールの変更に伴い、グラブやバットなど野球用品もJ号球に対応した新たなモデルが誕生。総合スポーツメーカーのミズノは、すでに新グラブ『 GE H Selection 02』『 セレクトナイン』、新バット『 BEYONDMAX GIGAKING』『 BEYONDMAX OVAL』の計4種類を開発し、店頭で販売している。

そこで今回は、その新しい野球ギアを生み出したミズノの企画担当者、三上大智さん(バット担当・写真左)と須藤竜史さん(グラブ担当・写真右)に、ボールが変わることによるプレーへの影響と、新商品の特徴をそれぞれ解説してもらった。


バウンドは低く、打球の球足は速くなる。「C号球」から「J号球」に変わることによる影響

ーー今年から軟式野球の小学生用のボールがC号球からJ号球に変化しますが、ボールが変わることによって野球のプレーにどのような影響を与えるのですか?

須藤:グラブの観点で話をすると、ボールが重くなる・硬くなるということになれば、守備で捕球する時、単純に手が痛いです。加えて打球の力に負けてボールを弾いてしまうとか、そういった影響が想定されますね。

三上:バットでお話をさせていただくと、小さい子供たちはバットを強く振る力がない中で打ちにいくので、重いボールだと当たった瞬間にどうしても押し負けてしまう可能性があります。そこが大きな懸念材料になっています。

J号球(左)とC号球
 

ーーなるほど。では、ボールが変わることによって選手に求められるプレー、あるいは気をつけるべきポイントがあれば教えてください。

須藤:守備面で言うと、ゴロの打球処理での高い捕球技術が要求されてくると思います。

というのも、昨年、一般用のA号球、中学生用のB号球の規格がM号球(中学生・一般)として統一されたんですね。J号球はそれの少年版というイメージで、両方同じように少し硬く・重く変化しています。なのでJ号球に変化した時には、M号球に変化した時と同じような影響が見られると予想されます。

それを踏まえてお話しますと、M号球に変わったことでよく言われているのが「ゴロ打球のバウンドの変化」。

従来の軟式球は硬式球に比べて2倍近く弾んでいたのですが、重くなることによって明らかに弾まなくなりました。バウンドが小さくなり、速い打球が飛んでくるようになるので、特に内野手はそういう低くて速い打球をしっかりと捕球する技術が必要になってきますね。

三上:バッティングに関しましては、M号球でプレーされている方からは投手の球が速くなったとよく耳にします。さらに変化球のキレが増して、投手のレベルが上がっていると言われていますので、まずはそこに対応しなければいけません。

そして前述に話した通り、少年野球では筋力がない子が多いので、いかに投手のボールに押し負けないかがポイントになってきます。

ーーボールが重く・硬くなるということは、やはり打感はだいぶ変わってくるのでしょうか?

三上:変わりますね。今までの軟式球というのは、打っても柔らかくて打感がぼやけるような感じだったのですが、硬くなることで打ち応えは増してきます。実際に僕らもM号球で試し打ちをしましたが、A号球との違いはかなり感じました。


ミズノの企画担当者が解説!J号球に対応した“次世代野球ギア”【グラブ編】

ーーでは、この度開発されたJ号球対応の新商品の紹介をお願いします。まず、グラブの特徴からお聞かせください。

須藤:はい。グラブの新商品は『GE H Selection 02』と『セレクトナイン』の2種類になります。商品によってアプローチは変えていまして、まず前者は「平裏」と呼ばれる、手を入れる内側の部分を加工しています。

そこには「型押し加工(革に凸凹模様を彫った押し型で強圧し,浮き出し模様をつくる加工方法)」をしているのですが、そうすることによって革がグッと締まるので、グラブの耐久性が増します。

グラブの革のパーツを持ちながら説明する須藤さん
 

須藤:さらにグラブの受球面裏に当て革を施しています。、革を一枚挟むことによって耐久性が増し、グラブのパワーを増幅させます。

最終的には受球面裏・平裏・当て革の3層構造にし、この当て革と平裏にも型押し加工をしているので、それによってグラブにパワーを持たせ、硬く重いJ号球でもしっかりと捕球できるようになっているんです。

また、型押し加工をすることでボールを捕球するポケットの部分が型崩れしにくくなります。なのでポケット形状を維持したままグラブが馴染んでくるようになるので、より捕球しやすくなるというわけです。

ーー3層構造でパワーを持たせ、型押し加工で耐久性を高めているわけですね。一方の『セレクトナイン』はいかがですか?

須藤:こちらの商品はどちらかというと、少し初心者向けのグラブになっておりまして、これから野球を始める方でもすぐに使いこなせるように作っているんです。

構造としては、特徴が2点あります。まず1点目は、『GE H Selection 02』と同じように当て革補強をしているんですけれども、その当て革に少し切り込みを入れている、という部分になります。そうすることによって、当て革でパワーを持たせつつ、グラブの握りを邪魔しないようにしているんです。

要するに、“強さ”と“柔らかさ”を両立したグラブになっているわけですね。

2点目は、受球面のポケットにある親指の付け根の部分に補強紐を装着しているところになります。見ていただくと分かると思うのですが、ウエブ下部の隙間に紐がくくりつけられているのが分かるでしょうか?

『セレクトナイン』のウエブ下部にある補強紐を指差す須藤さん

須藤:グラブって、硬式・軟式どちらも一番破れやすい箇所が、この捕球面の親指の付け根なんですよ。ゴロを捕る時にどうしても一番当たる場所なので、段々と負担がかかり、裂けて破れてしまうケースが非常に多く見られます。

今後、J号球に変わってボールが重くなる・硬くなるということになれば、よりこの箇所に負担がかかることが想定される。そこで、この紐を付けることにより、衝撃を吸収して破れを防止しようと考えたわけです。

ーー画期的ですね!それは『GE H Selection 02』には採用しないのですか?

須藤:『GE H Selection 02』はJ号球に、より対応するためにグラブの強さ・耐久性という部分を特化しましたので、今回は見送る形となりました。ですが、いずれ全モデルに装着しようとは考えておりますので、次回はバージョンアップした『GE H Selection 02』をお見せできると思います。


ミズノの企画担当者が解説!J号球に対応した“次世代野球ギア”【バット編】

ーーありがとうございます。続いて、J号球対応バットの特徴を教えてください。

三上:はい。バットの新商品は『 BEYONDMAX GIGAKING』と『 BEYONDMAX OVAL』の2種類になります。

まず、ミズノには『BEYONDMAX』という2002年から販売されているバットのシリーズがありまして。打球面に柔らかい素材を装着することにより、軟式球を金属バットよりも飛ばすことができるという、軟式野球の常識を超えたバットとなっております。

このシリーズのトップモデルとして生まれたのが、今回の『BEYONDMAX GIGAKING』です。

その特徴は、何といってもその“反発性の高さ”。今までのモデルよりもさらに遠くへボールを飛ばすことが可能となっています。

そして、2014年に発売された『BEYONDMAX MEGAKING』が先代のモデルとなるのですが、新商品はこのバットより約2.3%、反発性を上げることに成功しました。

バットの打球面に触れながら解説する三上さん
 

ーー見た目はあまり変わらないのですが、確かに打球面に触れるとだいぶ柔らかいですね!この素材を開発するうえで、どこが一番大変でしたか?

三上:お話した通り、ビヨンドマックスは打球面に柔らかい素材を使用していますので、ボール(重さ・硬さ)の変化に伴い、その素材を変えなくてはいけなくなった。そこが一番の懸念だったんです。

そこで新軟式球になった時にどんな素材が合うのか、という検証を何度も行いました。そこは新商品を開発するうえで特に力を入れたところなので、反発性能・打球性能などいろいろな部分で新しいボールに合うか検証し、計10種類以上は試験検証をしました。

加えて、ボールに対してバット本体が押し負けないか、という部分もポイントになってくるので、バット内部にある芯の構造にもケアを行い、ボールに押し負けない打撃を可能としたのです。

ーー強い打球を打つことはもちろん、ホームランの量産も期待できますね!では、もう一つの『BEYONDMAX OVAL』は『BEYONDMAX GIGAKING』と比べてどこが違うのでしょう?

三上:違いは3つあります。まず1つ目は、打球部の素材です。反発性能は『BEYONDMAX GIGAKING』の方が高くなっています。2つ目はバットの質量です。『BEYONDMAX OVAL』は約20~30g軽いので、「よりヒットが打ちたい」「確実性が欲しい」という初心者や子供たち向けの商品ですね。

また、値段的にもお求めやすい価格設定なので、そういう意味でも手に取りやすいビヨンドマックスと言えます。

3つ目は、バット内部の芯が「楕円形状」になっているところです。この構造の効果としては、楕円の腹の方でボールを打つと、打球が前に飛びやすくなります。逆に薄い方で打つと、より打感がダイレクトに手に伝わるってくるので打感の違いを感じられます。

それにビヨンドマックスの中では軽量型なので、初めてバットを握る方でも使いやすいモデルになりますね。


後編: 新軟式「J号球」導入による野球界の変化 につづく。


 

【インフォメーション】

ミズノ公式ウェブサイト

https://www.mizuno.jp/
 

【商品情報】

・《グラブ》GE H Selection 02 [詳細は こちら ]

・《グラブ》セレクトナイン [詳細は こちら ]

・《バット》BEYONDMAX GIGAKING [詳細は こちら ]

・《バット》BEYONDMAX OVAL [詳細は こちら ]

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