2番遊撃手も打撃力必須の時代になった | 富山GRNサンダーバーズ 二岡智宏監督(元巨人、北海道日本ハム)が語る野球観とは?
現役時代は球界を代表する内野手として巨人、北海道日本ハムで活躍された二岡智宏さん。今シーズンは1年間、ルートインBC リーグに在籍する富山GRNサンダーバーズの監督としてチームを指揮されました。
昨シーズンまで在籍した巨人では、コーチとして岡本和真選手の育成に携わるなど、卓越した手腕で知られている二岡さん。現役時代の思い出や、監督として過ごされた2019年についてお話をお伺いしました。
――まずは、BCリーグ、富山GRNサンダーバーズの監督に就任されるまでの経緯を教えてください。
昨年の秋、巨人のコーチの退任後にBCリーグに直接電話で問い合わせて、監督が「空席」だった富山GRNサンダーバーズをご紹介いただいたのがきっかけです。電話口で「あの、二岡さんですか?」って言われましたね(笑)。
――富山GRNサンダーバーズの指揮官として過ごされている2019年シーズンですが、11年ぶりに背番号7を背負ってプレーされていますね。この番号を選ばれた理由はありますか?
一番は、球団のPR戦略ですかね(笑)。巨人で着けていた7番、日本ハムで着けていた23番、巨人コーチ時代の75番、81番、どれも僕にとっては思い入れのある番号です。富山GRNサンダーバーズのユニフォームは、正面に番号がないので、自分自身ではあまり見えないんですけどね(苦笑)。
――富山GRNサンダーバーズの指揮官として率いられた2019年は、二岡さんにとってどのようなシーズンでしたか?特に前期は、目前に迫った優勝を逃すという悔しい想いもされていらっしゃいますよね?
前後期とも、投打が噛み合わない試合が続き、悔しさや野球の難しさを肌で感じたシーズンでした。今シーズンからコーチと兼任選手としてプレーしている乾真大(元巨人、北海道日本ハム)に、手薄なリリーフに回ってもらいましたが、それでも厳しい戦いを強いられることになってしまいましたね。
――全体練習が終わった後も、個人練習に取り組む選手の皆さんの姿が印象的だったのですが、就任当初と比べて変化はありましたか?
まずは、練習に取り組む姿勢や技術力の向上という点では、格段に変化がありましたね。今、プレーしている選手は、僕の現役時代をギリギリ知っているか、知らない世代なのですが、それでも就任当初はコミュニケーションが少なく、今思えば選手との間に距離があったように思います。日頃の指導やミーティングなどを重ねて、良い環境を作れたのではないかと思います。
――昨年は、巨人のコーチとして岡本和真選手の飛躍にも貢献されました。若手選手の才能を伸ばすために、心掛けてがけていらっしゃることはありますか?
(岡本)和真の場合には、飛躍するタイミングで指導できたという「縁」もあると思いますが、指導するにあたっては、どちらかと言うと「長所を伸ばす」ことを重視しています。
例えば、長打力がセールスポイントの選手には、「三振を恐れずに振っていい」と言う方針で指導をしています。弱点を意識しすぎて持ち味が発揮されないのは、勿体ないですからね。
――2019年シーズンの岡本選手は、優勝争いをするチームとは対照的に、苦しむような場面も見受けられたように感じますが?
今シーズンの(岡本)和真は、なかなか結果が残せず、4番を外された試合もありました。2018年のような好成績(3割30本100打点)が毎年残せればいいですが、実際にはなかなか上手くいかないところが、バッティングの難しさでもあります。一方で、試行錯誤しながらも、シーズンを通じて試合に出られていると言う点は、素晴らしいことだと思います。
――2019年シーズンのプロ野球では、二岡さんが昨年までコーチをされていた巨人が堅実な戦いぶりを見せています。二岡さんは、好調な理由はどの辺りにあるとお考えですか?
シーズンを通して見られているわけではないですが、丸選手の補強に加えて、若手の成長もあり、チームの弱点を補えたことが大きいと思います。
あと、あえて一人名前を挙げるとしたらベテランの亀井選手ですかね。彼がルーキーとして巨人に入団した頃には、僕も一緒にプレーしたこともありましたが、当時から高い才能のある選手でした。これまでには怪我に苦しむシーズンもありましたが、1番打者として安定した成績を収められていることが、チームの躍進にも繋がっていると思います。
――2019年のプロ野球では、巨人の坂本選手、横浜DeNAの筒香選手など、これまでは主軸を打つような選手が「2番」を任されていますが、現状についてどのようにご意見をお持ちでしょうか?
監督をやってみて、初回に送りバントでアウトを与え、相手を楽にしてしまうのは嫌だなと思いました。なので、2番に強打者置くメジャーリーグのようなオーダーに、個人的には賛成です。実際に富山GRNサンダーバーズでも、打撃力の高い選手を置いていますしね。
――二岡さんご自身も、現役時代には2番として活躍されたシーズンもありました。実際に経験されてみていかがでしたか?
当時は、(高橋)由伸さん、松井さんなどの球界を代表するバッターが並ぶ打線だったので、あまり制約もなく、自由に振らせてもらえました。さまざまな打順を経験させてもらったなかでも、2番は好きな打順でしたね。
――走塁のサインや、駆け引きなどはあまりありませんでしたか?
(高橋)由伸さんをはじめ、初球から積極的に振っていく打者が多かったので、一般的な2番打者より、サインプレーも少なかったように思います。サインプレーがあったのは、(鈴木)尚広さんが1番に座ったときくらいでしたかね。
――長距離打者が揃う当時の巨人でプレーされていたときの、印象的な出来事がありましたら教えてください。
ランナーとして一塁にいたときに、松井さんが打つライナー性の打球が怖かったですね。左打席から一塁方向に、凄まじい速さで飛んでくるんです。守備をしている時には、グラブに収められると思いますが、ランナーで出た時には、いつもヒヤヒヤしながら打球を避けていましたね。
――現役時代、苦手な投手はいましたか?
実際にはおそらくあったと思うんですが、「苦手」だと思わないようにしていましたね。プレーに悪影響が出るのが嫌だったので、そのような数字については極力考えないようにしていました。なので、縁起担ぎとかもしませんでしたね。
――二岡さんは選手時代の2003年、主にショートとして全試合に出場され、3割29本塁打と言う成績を残されました。今シーズンの巨人も、坂本選手がショートというポジションを任されながら、既に本塁打を30本以上放っています。いままでは、どちらかと言うと守備力重視のポジションだったように思いますが、最近は打撃力を備えた選手も増えてきました。ショートというポジションの現状や果たすべき役割について、二岡さんご自身はどのように考えでしょうか?
かつては、二遊間を守る選手には、そこまで打撃が求められていなかったように思いますが、今は違いますね。レギュラー選手としてプレーするならば、打撃力が必須条件です。それだけ野球や、ショートに求められる役割が変わってきています。
僕が現役としてプレーしていた頃にも、日本では松井稼頭央さん(埼玉西武ライオンズ)、メジャーリーグではアレックス・ロドリゲス選手などのバッティングが注目されていましたが、今はその「打撃重視」の傾向が一層強くなってきたように感じています。
――現役時代の二岡さんといえば、高めの打球を右中間方向に打つ姿が印象的でした、右打ちは、いつ頃から得意でしたか?そして今、まさにプロ野球選手を目指して必死に野球に取り組まれている子どもたちが、二岡さんのようなバッティングを身につけるには、どうすればいいでしょう?
大学時代に1度、逆方向に大きい当たりを打ててから、感覚をつかみましたね。個人的には、トレーニングよりも、まずしっかりバットを振ることの方が大事かなと思います。
――さらに現役時代のプレーについてお伺いします。堅実な守備や肩の強さが印象的でしたが、これらを身につけるにはどうすればいいでしょう?
小学生の頃からよくランニングをして、下半身の強化をしていました。その積み重ねの結果かなと思います。
――続いて、道具(ギア)についてお伺いします。現役時代に、道具選びのこだわりがございましたら、教えてください。
小学校4年の時に、兄を追うようにして野球を始めたので、 当初は兄が使わなくなったバットやグローブを使っていました。プロに入るまでは、2回ぐらいしか購入していないような気がします。
プロ入り後に使ったバットやグローブも比較的シンプルなものでしたが、唯一、スパイクだけは本当に気を遣いました。
怪我が多い選手生活だったことや、ドーム球場の人工芝でプレーする機会が多かったので、足形からオリジナルのスパイクを作って、少しでも足腰に掛かる負担を減らすために、ありとあらゆる方法を試しましたね。
――現役時代、怪我に対する不安とどのようにして向き合ってこられましたか?
怪我そのものや、ゲームを休んでいるときに代わりの選手が活躍し、レギュラーを奪われてしまうという不安はありました。でも、もし怪我をしてしまったら、まずは治療して、出遅れた所から必死に巻き返すしかない。不安のなかで、地道に積み重ねた現役生活でしたね。
2019年シーズンは1年間、ルートインBC リーグに在籍する富山GRNサンダーバーズの監督としてチームを指揮された二岡さん。
9月17日に、富山GRNサンダーバーズの球団ホームページで、今シーズン限りでの監督退任を発表されました。コメントでは、「野球界の為に何ができるかを考え、一人の人間として今後も成長できるよう、自分で決めた道を進んでいこうと思います」と想いを記した二岡さん。今後についてはまだ明かされていないが、来年以降のさらなるご活躍に期待したい。