『阪神タイガースが優勝する、幾つもの好材料。』
Jリーグの優勝予想をするのは難しい。今年は特に難しい。
マリノスは強いが、去年の彼らはまったくのノーマークに近い存在だった。どのスポーツでもそうだが、サッカーの場合は特に、強いチームほど難しい試合が多くなる。勝ちに来る相手に勝つより、勝ちにこない相手、引き分けでもいいと考えてくる相手の守りをこじ開ける方が、よほど面倒くさい。昨年のフロンターレのように、内容で圧倒していながら、終わってみればドローといった試合が、今年はマリノスにも増えるはず。
天皇杯を制したヴィッセルや、逆襲を誓うフロンターレ、いい補強のできたガンバや、オルンガというツボにハマればワールドクラスなストライカーを擁するレイソルあたりが優勝に絡んでくるのでは、と予想するが、正直、自信はまったくない。
その点、プロ野球、特にセ・リーグの予想は簡単である。
阪神が優勝するに決まっているからだ。
極めて遺憾ながら、いまやセ・リーグで2番目に優勝から遠ざかったチームになってしまった阪神だが、今年に関しては好材料しかない。
まずは相対的な戦力の優位性。
昨年優勝の巨人からは投手陣の柱の一人だった山口が抜け、2位のDeNAからは大黒柱の筒香がいなくなった。ヤクルトから長年打線を牽引してきたバレンティンの名前が消えた。それぞれ、穴埋めには動いているようだが、すべての選手が期待通りの大活躍をしたとしても、マイナスがゼロになるぐらいで、大きなプラスに転じることは考えにくい。
その点、阪神は全盛期を過ぎたメッセンジャー、鳥谷がチームを去ったぐらいで、大きなマイナスはなかった。なおかつ、チーム史上初めて外国人を8人保有するという「下手な鉄砲数打ちゃ当たる作戦」に打って出た。ここ数年、大砲と期待された助っ人の不作に悩まされてきたが、これだけいれば大丈夫だろう、きっと(ちなみに野手は3人。あれ?去年も外国人野手は3人じゃなかったっけ……なんてことは考えない)。
万が一、いや、億が一の確率でマルテ、サンズ、ボーアの3人がいずれもスカだったとしても心配はいらない。最近の虎を支えてきた投手陣は今年も健在で、しかも、中日のレジェンド山本昌さんを臨時コーチに招いたことで、苦悩の日々を過ごしてきた藤浪や、凄い直球をもちながら黒星の先行していた高橋などに、大爆発の気配がある。投手王国どころか、帝国になってしまいそうな勢いだ。
もっとも、今年に関してはやれ新戦力がどうだの他チームの比較論においてどうだのということは、あまり意味を持たない。運命が、歴史が、阪神の優勝を暗示しまくっているからである。
85年の吉田義男、03年の星野仙一、05年の岡田彰布。阪神の優勝に導いた3人の監督は、いずれも就任2年目に結果を残した。矢野監督は今年2年目。これはもう、どうしたって優勝するしかない。
さらにいうなら、前回東京でオリンピックが開催された64年、優勝したのは阪神だった。南海との日本シリーズ第7戦は、観客15,172人と、いまだ残る日本シリーズ最終戦における最少観客数を記録してしまったが、それは、最終戦の行なわれたのが10月10日だったから、だった。
日本中が東京オリンピックの開会式に釘付けとなっていたその日、阪神は日本一を争っていたのである。
新型コロナウィルスによる騒動が峠を越え、東京オリンピックが予定通り開催されるとなれば、20年の日本はオリンピック一色に染められることだろう。開幕前はあまり話題にならなかったラグビーでさえ、あれだけ盛り上がった。あのときとは比較にならないほど多くの、そして発信力のある人たちが、オリンピックの魅力、凄さをすでに連呼している。盛り上がらないはずがない。
1964年の前回大会とは違い、今回は日本シリーズがオリンピックとかぶったりすることはない。それでも、壮大な宴のあとに行なわれるプロ野球の日本一決定戦は、例年よりは気の抜けた、どこか熱のない空気の中で行なわれそうな気がする。
終わってみれば当事者以外はどこが勝ったか覚えていないような、そんな日本シリーズになってしまうとしたら、嗚呼、そこに登場してしまうのが阪神タイガースというチームの性なのである。
だから、今年の阪神は勝つ。スポーツライターとして断言する。
ただ、フリーのライターになって25年、セ・リーグに関するわたしの優勝予想が当たったことは、03年と05年、たった2度しかない、ということはお断りしておきたい。
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