開幕投手やリアル二刀流の裏に立場の危うい選手も?明暗分かれる日本人メジャーリーガー
待望のメジャーリーグが開幕した。4月1日、ダルビッシュ有と前田健太が揃って開幕戦投手を務め、続く4月4日には、大谷翔平が「2番投手」の“リアル二刀流”で先発出場し全米を大きく賑わせた。開幕1週目から大きな話題を集める選手達がいる一方で、菊池雄星、筒香嘉智と秋山翔吾は今季目に見える結果が求められている。4月12日、まだ開幕直後ではあるが、それぞれ違う立場で戦う日本人選手達の動向を改めてチェックしていきたい。
昨季シカゴ・カブスでナ・リーグ最多勝を獲得したダルビッシュは、今季からサンディエゴ・パドレスでプレーする。昨季ナ・リーグで2位の勝率を残し今季優勝を狙うパドレスは、昨オフ大幅な戦力補強を行った。
ダルビッシュの昨季の活躍に惚れたパドレスは、カブスからトレードで獲得し、開幕投手にまで指した。チームから大きな期待を背負うダルビッシュだが、ここまで2試合に登板し、防御率は4.22。期待されていた数字よりやや高めに見えるが、地元からの評価は相変わらず高い。特に2戦目のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦では、6回3安打1失点1与四球の投球みせたダルビッシュに、米大手メディア『CBSスポーツ』は「本来の調子を取り戻した」と評価。
更に「この日パドレスの打撃陣は7回まで1打点と十分な援護を与えられなかった」と擁護されるほど、現地では認められているだけに、今後どれだけチームを勝利に導けるか注目だ。
メジャー6年目を迎える前田は、今がまさに全盛期であるといっても過言ではない。昨季ミネソタ・ツインズに移籍し、ガラリと印象を変えた。昨季は11試合に先発し、6勝1敗、防御率2.70と結果を残している。地元紙『スター・トリビューン』からも、「最も信頼ができる先発だ」と高く評価されている。
開幕初戦こそは5回途中での降板となったが、4月7日の2戦目には、対デトロイト・タイガース戦で早くも今季初勝利を飾った。試合後のインタビューで「野手にたくさん助けられた」と謙遜した前田だが、ここまでの防御率は2.61と好調であり、現地メディアも「誰もが認めるエースになるだろう」と賞賛している。
ツインズは2004年以来、18試合連続でポストシーズンで敗北している。この米メジャースポーツのワースト記録を打ち破るため、前田にはより一層大きな期待がかかりそうだ。
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平は今、全米の野球関係者を騒がせている。調子を落とした昨季とは一転して、特に打撃面で大暴れをしている。
大谷は、代打を含め打者では9試合に出場し、打率2.94と上々。本塁打は既に3本で、日本人選手の中では最速のメジャー通算50号に達している。好調の裏には、左膝の使い方にある。「2019年に手術した箇所の状態がかなり良くなり、スイングが安定した」と現地メディアは分析する。大谷自身も「かなり重要なところだなっていうのは感じてます」と明かした。今の打撃がこのまま続けば、シーズン30本を達成しそうなところが大谷の凄さだろう。
一方で、投手としての大谷も今季は期待できそうである。今季初登板の試合では、メジャー史上118年ぶりとなる「2番投手」で出場し大きな話題を呼んだ。勝利こそは得られなかったが、4回2/3を投げて防御率1.93、7奪三振を記録。また、その試合では100マイルを超える速球を何度も投じ、多くのOB選手やファンを驚愕させた。
マメの影響で一度登板を飛ばしたことが気がかりだが、他のフィジカル面では何一つ心配するところはない。このまま健康状態を維持することができれば、米ファンが期待する「18勝30本」を実現してしまうかもしれない。今季の大谷にはそれぐらい期待ができる。
続いて、今季結果が求めらる選手たちを見ていこう。現在、日本人選手唯一の左腕のシアトル・マリナーズの菊池雄星は、これまでの通算防御率が5.39で厳しい評価を受けていた。
菊池はここまで2試合に登板し、防御率は3.75と好調。2試合とも3失点以内に抑えるクオリティ・スタートで、これまでの評価を跳ねかえす好投を続けている。菊池は、今季から真ん中に球を集めることを意識すると語り、その言葉の通り、初戦では89球を投げて67球ものストライクを奪っている。
そして、もう一つは変化球を使い分けていることだ。これまでの力勝負中心のスタイルから、緩急で打者を翻弄する姿に大きく変わった。菊池の作戦は功を奏し、2試合で16奪三振を記録している。
もちろん球速へのこだわりは変わってない。キャンプ中、平均球速は約4キロも速くなった。最大32kmといわれるスピード差の投球で空振り率を増やした菊池だが、今季どれほど化けられるかで、チームからの評価を大きく変えられそうだ。
タンパベイ・レイズの筒香は、現地メディアから今季打率.250、20本塁打、65打点の成績を期待されている。筒香は、昨季8本(チーム内2位タイ)の本塁打を記録したが、今季開幕7試合で本塁打はまだない。
キャンプ中に怪我をした正一塁手、チェ・ジマンの離脱で出場機会を得ている筒香だが、一部からは「もし結果が出なければ、シーズン途中でクビになるかもしれない」という厳しい声まででている。4月9日のニューヨーク・ヤンキース戦で、今季初の二塁打を放った筒香だが、昨季以上に長打が求められる立場はまだ変わらなさそうだ。
シンシナティ・レッズの秋山翔吾は、今季打率.265を現地メディアから期待されている。そのカギを握るのは、対左投手の攻略だといわれている。
昨季、対右が.254で対左が.190だった秋山。その成長を楽しみにされていた最中のオープン戦で、左ハムストリングを負傷してしまったのは本当に残念でならない。
今季のレッズは秋山を含め6人の外野手を用意しており、ポジションは確約されていない。もし他の選手が好調であれば、秋山の出番は少なくなってしまう可能性も高い。怪我による離脱でスタートが遅れた秋山は、現在不利な状況にいる。怪我からの復帰後、どれだけ活躍ができるかに注目したい。
シーズンは始まったばかりだが、MLBの日本人選手たちはより一層の結果が求められている。早くも活躍を見せている選手もいるが、コロナ禍の影響で大幅に短縮されてしまった昨季とは大きく異なる2年ぶりとなる全162試合の長いシーズンで、どれだけその調子を維持できるかがカギとなりそうだ。各選手にとって、今季は昨季を上回る熱いシーズンになるだろう。
(日付は全て現地時間。選手成績は全て4/12現在までのもの。)
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