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baseball2021.04.20

超大物ルーキー佐藤輝明がアジャストしたら、阪神タイガース優勝を導くキーマンに

昨年秋、阪神ファンは、というか、わたしの気持ちは揺れておりました。

サンズか、ボーアか。

韓国から相当に凄い新助っ人が来ることは決まった。来る人があれば去る人も出る。

シーズン序盤から中盤にかけて目ざましい勝負強さを発揮しながら、大事な終盤に大失速をしてしまったサンズと、序盤は低空飛行ながら、少しずつ少しずつ、日本球界に適応し始めているようにも見えたボーア。

さて、どちらも残すべきか。

わたしの気持ちは大いに揺れたし、サンズの残留とボーアの放出が決まってからも、「いやいや、どうせだったらボーア残すでしょ」という声に傾きかける自分がいた。

でも、4カードを終えたいまは、断言できます。

球団の舵取り、さすがでした。

これが違うシーズンであれば、阪神のフロントや現場もボーアの残留をより強く望んだかもしれない。再契約をすれば、おそらく成績は向上するだろうし、ファンのウケや選手たちからの評判もいい。というか、あの程度の成績で、あれほどファンから愛された阪神の助っ人も珍しい。

それでも、いまならばわかる、わかるのです。ボーアではダメだった。サンズでなければダメだったのです。

佐藤輝明のことを考えれば──。

絶好調だったオープン戦とは打って変わり、シーズン序盤の超大物ルーキーはちょっとした壁にぶつかっております。打率はオープン戦の半分ほどにまで落ち込み、期待されたホームランもなかなか出なくなった。代わりに、と言ってはなんだけど、セ・リーグの先輩たちをぶっちぎる勢いで量産してしまっているのが三振。

まるで、昨シーズン序盤のボーアみたいに。

当たれば飛ぶ左の大砲は魅力。打率が低いのも、三振が多いのもかまわない。ただ、同じようなタイプが2人いるとなると、チームとしてはかなりしんどいし、相手からすればずいぶんとやりやすくなってくる。

その点、サンズ、佐藤、梅野という並びになると、相手側はまったくタイプの違う3人に対処しなくてはならない。実際、ここまでのところの対戦相手は、佐藤をほぼ抑えておきながら、その前後の2人にやられているケースが多い。特に、ランナーを得点圏内に置いた際の梅野が無類の勝負強さを発揮できているのは、当たれば怖い佐藤を打ち取った相手の、ちょっとした心理の隙をついているからではないか、という気がするわけです。 


佐藤にとって幸運なのは、身長を下回るほどに打率が下がってしまった自分の不調が、チームの成績と直結していない、ということ。今年から慈愛に満ちたファンになろうと誓ったわたしではあるのですが、それでも、チームが泥沼状態に陥ってしまえば温かく見守っていられる自信はありませぬ。

ただ、どれだけ好機に三振が続こうとも、阪神がいい状態にある限り、わたしは彼の鬼振り、マン振りを微笑ましく見守ることができるのです。振らなければ当たらないし飛ばない。いつか柳田のような存在になるために、いまは頑張れよと微笑んでいられるのです。

と、そうこうしているうちに、爆発する時がくるんだな、きっと。

思えば、これまでの阪神ファン、というかこのわたしは、あまりにも辛抱が足らなかった。凡退すれば盛大なため息をつき、成績のよくないピッチャーがマウンドにあがる時はあからさまに不穏な気配を吐き出してきた。

かと思えば、まだ海のものとも山のものとも知れない若手をチヤホヤともてはやし、大成するはるか以前の段階でスポイルしてもしまってきた。

なので、オープン戦で爆上がりした佐藤の評価が、一度ガクンと落ちるのも、彼の将来を考えればいいことなのかな、という気はするのです。「鉄は熱いうちに打て」と言われるけれど、より固く強い鉄を作るためには、一度冷やすという行程も必要になってくる。

いまは、ちょうどその時期なのかな、と。

プロのバッテリーの本気の攻めに慣れてくる夏あたりになれば、きっと、鋼鉄になった佐藤が出現する。打って打って打ちまくって、チームを16年ぶりの優勝に導こうとする佐藤が出現する……。

と、いいな。

開幕12試合を終えた時点で、阪神はセ・リーグで唯一、6人の先発ピッチャーが2度の登板機会すべてでクオリティ・スタートを達成しております。あまり期待されていなかったガンケルはすでに2勝をあげ、しかも、まもなくアルカンタラがチームに加わります。

マルテ、サンズに陰りが出てくれば、これまた期待のロハスが控えており、2手先、3手先までの対策はバッチリ。よほどのことがない限り、今年の阪神は最後の最後まで順位表の上位、いや、最上位に居すわり続けるはず……。

ただ、毎年同じようなこと考えてるんだよなあ、俺。

なにしろ、21世紀に入ってからたった2度しか予想の当たったことのない人間である。

03年と05年しか予想の当たったことのない人間である。当たる確率、10パーセント以下。

わかってます。ええ、わかってはいるんです。

わたしの予想は当たらない。阪神について書くことは、予想でも評論でなく、ただの願望。

ところが、近年では願望することすらなくなっていたこと──巨人に打ち勝ってのぶっちぎりの優勝──がひょっとしたら現実のものになりそうな気がしてしまって。

すいません、ちょっと情緒不安定です。

今年はずっと、情緒不安定のままでいたいです。

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