ジャイロボールとは? 種類や投げ方・握り方について解説
野球に興味がある方なら、「ジャイロボール」という言葉を聞いたことがあるでしょう。一時期、メディアなどでも多く取り上げられていて、「魔球」などと呼ばれることもあったジャイロボールですが、具体的にはどのような球を指すのでしょうか。
ここでは、ジャイロボールの概要や種類、投げ方のコツなどについてご紹介します。
【目次】
■ジャイロボールとは?
ジャイロボールとは、具体的な変化球の名称ではなく、一般的にはボールの回転そのものを指す言葉です。野球では、ナックルならほぼ無回転、スライダーなら斜めの回転と斜めの回転軸など、投手が投げたボールは回転と回転軸の向きによって球種が決まります。
通常のストレートの場合は人差し指と中指を使って、ボールに強烈なバックスピンをかけていて、回転軸は地面に対して平行です。ボールの下側の空気抵抗が大きくなるので、ボールの回転数が少ないと「ノビがない」と形容される力のないストレートになってしまいます。
一方、ジャイロボールは回転軸が進行方向を向いていて、ボールそのものはピストルの弾やドリルのように螺旋(ジャイロ)回転しているのが特徴です。
螺旋回転しているボールでは、空気の流れがボール全体でほぼ均一になり、空気抵抗が小さくなります。これによって、ボールが重力によって沈みづらく、手元から離れた瞬間の初速とキャッチャーミットに届く時点での終速の差が小さい、ノビのある球になるのです。
■ジャイロボールの種類
ジャイロボールは、回転方法によって大きくツーシームジャイロとフォーシームジャイロの2種類に分けることができます。それぞれ、どのような違いがあるのでしょうか。
・ツーシームジャイロ
ツーシームジャイロは、ボールのシーム(縫い目)が1回転の間に2回出てくる回転のことです。見えるシームは上下で形が異なるので、非対称ジャイロと呼ばれることもあります。
シームが一部に集中していて、空気の流れが偏りやすいので、ボールが急激に減速し落ちるのが特徴です。チェンジアップのように、打者のタイミングを外すことができます。
・フォーシームジャイロ
ツーシームジャイロとは異なり、シームが1回転の間に4回出てくるのがフォーシームジャイロです。回転軸を中心に対称なシームを見せながら回転していて、シームが90度の回転ごとに規則的に表れるので、対称ジャイロとも呼ばれます。
空気抵抗が小さく、ボールをリリースしてからキャッチャーが捕球するまでの初速と終速の差が少ないのが特徴です。一般的なストレートだと思ってバットを振ると振り遅れてしまうため、打者がタイミングを掴みづらくなります。
■ジャイロボールは少年野球の方が投げやすい?
ジャイロボールは、体の回転のさせ方や投げ方のコツが、通常のストレートとは大きく異なるため、力強いボールを投げるのは非常に難しいです。カットボールや縦に落ちるスライダーはジャイロ回転をするので、一部ではこれらをまとめてジャイロボールとして分類することはありますが、いわゆる速いジャイロボールが使われることはまずありません。
一時期ジャイロボールを投げていると取り上げられたプロ野球選手も、ジャイロボールではなくカットボールであることを明言しています。ジャイロ回転の球が存在しないわけではありませんが、ジャイロ回転で150kmを超える剛速球を投げていると公言しているプロ野球選手はいないことからも、速く効果的なジャイロボールを投げる難しさは伺うことができるでしょう。
また、バックスピンの効いたストレートの投げられない、少年野球をやっている子どもの方がジャイロボールは投げやすいとされています。これは、通常は野球をしていくうちに、きれいなバックスピンがかけられるような投げ方に矯正されていくためです。
子どもが野球を始めたての場合は、どのような回転のボールを投げているか確認してみるのも良いでしょう。
■ジャイロボールの具体的な投げ方
投げ方が一般的なストレートと異なると解説しましたが、具体的にはどのような投げ方をすればジャイロボールは投げられるのでしょうか。ジャイロボールの握り方や投げ方のコツをご紹介します。
・握り方のコツ
ジャイロボールの握り方は、ほとんどストレートやカットボール、スライダーといった変化球と変わりません。人差し指と中指を回転軸にしたい面の縫い目にかけたら、ボールを浅めに握ります。
この時、通常のストレートを投げる場合は親指を真っすぐ伸ばしてボールに当てますが、ジャイロボールでは親指の関節を曲げて、リリース時にボールを指で握りつぶすように投げます。ストレートでは人差し指と中指の付け根の関節でボールが抜けないようにしますが、ジャイロボールでは指の第1、第2関節の力でジャイロ回転を与えるのがコツです。
ただし、この握り方で強いボールを投げようとすると、慣れていない場合は怪我をする恐れがあります。もともと似たような投げ方をしていたという方は除いて、いきなりこの握り方で投げてみることはおすすめしません。
・理想的な投げ方のコツ
ジャイロボールを投げるにあたっては、握り方以上に肩関節や肘の柔軟性、体のスピンを活用して投げることが大切です。最初に、体をリラックスさせた状態で肩や肘がしなるように回してみると、手の甲が体側を向きます。槍投げのフォームに近いイメージです。
手の甲を外側にしたままトップ(ボールが一番高い所に来る位置)までボールを持ってきたら、小指側から手をひねるようにボールを加速させます。人差し指と中指の指先が地面に対して垂直になるようなイメージで、手のひらが横を向いている状態でリリースしていくと、ボールにジャイロ回転を与えやすくなります。
リリース時は、手首を立てるような状態で固定して投げるようにするのが、ジャイロ回転を上手に与えるためのポイントです。
■サイドスローやアンダースローの方が投げやすい
ジャイロボールは、リリースポイントが早めで、手のひらが横を向いている状態でリリースを始めなければいけません。そのため、オーバーハンドやスリークウォーターといった上手から投げる選手の場合は、遠心力によりボールがすっぽ抜けやすく、無理にすっぽ抜けを防ごうとすると怪我につながる恐れもあります。
しかし、サイドスローやアンダースローといった投げ方の場合は、体に回転をかけやすいうえ、横方向に遠心力は働きますが、手のひらですっぽ抜けを抑えることが可能です。体の使い方の点から見ると、サイドスローやアンダースローの投手の方が、ジャイロボールを投げやすいということができます。
■サイドやアンダースローの選手は取り入れてみるのもおすすめ
ジャイロボールは、オーバースローやスリークウォーターなど、投げ下ろすようなフォームの選手の場合、体の構造上取り入れることが難しいボールです。無理に習得しようとすると体を壊したり、投げられても棒球になったりする場合もあるので、最初からジャイロボールを投げられるような体の使い方ができている方以外は、無理に投げることを目指すべきではないでしょう。
ただし、サイドスローやアンダースローの選手は比較的取り入れやすいとされているので、横手投げの技巧派投手を目指す場合は、投げ方のコツを覚えておくのも良いかもしれません。
大切なのは、ジャイロボールを投げることではなく、ジャイロボールを投げられるくらい柔軟に体を動かせるようになることです。ジャイロボールは体がリラックスしていないと投げられないボールでもあります。コツを知ることで、普段の投球にも活かすことができるでしょう。
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