「これほど優れた活躍をするとは全く予想していなかった」エンゼルス番記者が振り返る大谷翔平選手の衝撃の1年。
10月3日(現地時間:以下同)、米メジャーリーグの今季のレギュラーシーズン最終戦が行われた。ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手は、敵地シアトルでのマリナーズ戦に「1番・指名打者」で出場し、初回の第一打席に待望の第46号の先頭打者本塁打を放った。チームも7−3で勝利を収め、試合後の会見で大谷選手は「すごい楽しい1年だったかなと思います」と、充実したシーズンを過ごすことができたことを明かした。
今季、投打で158試合に出場した大谷選手は、打者としては138安打、46本塁打、103得点、26盗塁、打率.257の成績を残し、また投手としては23試合に登板し130と1/3イニングを投げて、9勝2敗、156奪三振、防御率3.18の成績であった。
大谷選手は、最終戦の本塁打で100打点をマークし、日本選手としては2007年に松井秀喜(元ニューヨーク・ヤンキース)以来の記録を達成。また、この日までに打者としては100安打と100得点を、投手としては100投球回と100奪三振を達成しており、この100打点達成により、投打の混合5部門での「クインティプル100」というメジャー史上初の快挙を成し遂げた。
ベーブ・ルース以来103年ぶりの「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」の記録や、本塁打王の獲得は惜しくも逃した大谷選手ではあるが、前述のように投打での傑出した成績で、これから発表されるア・リーグMVP賞や打撃で最も著しい活躍をした選手に贈られるハンク・アーロン賞の獲得が期待されている。
そんな大谷選手ではあるが、現地メディアは、初めて二刀流としてシーズンを完走したことに驚きの声をあげる。『ヤフー・スポーツ』は、10月3日に「ベーブ・ルースでさえ、二刀流として初めてシーズン完走した大谷翔平選手には敵わない」という記事の中で「大谷選手が4年目(今季)に行ったことは、今も非現実的に思える。それほど彼は野球選手の限界を全て壊した」と、その活躍を大いに称えている。
このように今季、全米に大きな衝撃を与えた大谷選手だが、エンゼルスの地元メディアは今季をどうみていたのか。筆者は、エンゼルスの地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』のジェフ・フレッチャー記者に直接話を聞くと、大谷選手の躍進を次のように語った。
「投打両方でこれほど優れた活躍をするとは全く予想していませんでした」
同記者は、エンゼルス入団当時から大谷選手の二刀流挑戦には肯定的であった。しかし、昨季の登板2試合目で右ヒジ付近を痛め早々に投手を断念した大谷選手の姿を見て以降、二刀流の継続は難しいのではないかと懸念を持つようになった。昨年の10月に著者が同記者に取材した際には次のように述べている。
「エンゼルスは二刀流を続けられる機会を与えるべきですが、もしまた故障をすれば投手としてのキャリアは終わってしまうかもしれません」
また、今年1月に行った取材時には、今季が二刀流としてラストイヤーとなる可能性も示唆している。
「私は大谷選手が2021年に二刀流で成功できなければ、野手に転向し打者一本に絞られるかもしれないと考えています」
この頃は、同記者に限らず、昨季の成績を知る現地メディアは同様の意見を述べており、そもそも二刀流で無事にシーズンを終えることを予想していたものは少ない。大谷選手はオフにトレーニングを重ね二刀流としてシーズンを臨むように巡撫をしていたのだが、フレッチャー記者でさえ、「確かに、春のキャンプ時に、それ(投打両立)ができるかもしれないという兆候はありました」とはいうものの、開幕直後にはその確信はいなかった。
しかも、今季は2年ぶりに162試合でフル開催された年でもある。フレッチャー記者自身も、「(昨季が60試合での短縮開催であったため)この長さを忘れていましたし、今年は特に長かったように感じました」と述べるほど、選手たちも久しぶりの長い長いシーズンを過ごしたようだ。
そんな中、大谷選手が健康状態を維持しながら投打両方で出場を続けていたのだから、現地メディアがどれだけ衝撃を受けたのかは容易に想像できるだろう。
それに加え、大谷選手が自身が抱えていたいくつかの課題をシーズン中に解決しているのも驚きだ。特に投手としてシーズン序盤に抱えていた右指のマメの問題はいつからか全く聞かなくなった。このことについて、同記者は次のように推測している。
「(シーズン当初にあった)マメの問題については、彼が100%の速度(165キロ超え)で投げることをやめたことで解決したとみています。また、1年投げ切ることができたことで皮膚も強くなったのではないでしょうか。最後はこの件について何も聞くことがなかったですからね」
出場を重ねるごとに調子を上げて好成績を残す大谷選手に、いつしか全米メディアから注目を集めるようになった。そして、その注目度が高まる度に、エンゼルスの本拠地には多くのファンが駆けつけた。
その様子に、フレッチャー記者は、「再び満員のスタジアムを見ることができたのはうれしかったです」と感慨深いシーズンであったことも述べている。いずれにせよ、今季の大谷選手は地元記者とって間違いなく最大の話題であったようだ。
そんな投打で大活躍を見せた大谷選手だが、最終戦後の会見で来季以降も二刀流を続ける意向を示している。ファンとしては今季同様の活躍に期待も膨らむが、フレッチャー記者は、「来年も同じ活躍に期待できるかは、私はわかりません」という。
その理由としては、大谷選手が二刀流としてシーズンを完走できたのは、メジャー4年間の中でも今年が初めてであったことが大きい。もちろん、「投打両立で活躍ができることを願っています」と期待はするものの、今季の成績から将来の予想を立てるのは、「まだ時期尚早である」と至って冷静でもあった。
今季、大谷選手が所属するエンゼルスはア・リーグ西地区4位(77勝85敗)と、成績が振るわなかったことも大きいだろう。また、序盤からマイク・トラウトやアンソニー・レンドンなど主力級のケガが相次ぎ打力が低迷。投手でも特にブルペン陣の弱さが目立ち、今オフ、チームは投手陣再建に全力を注ぐ予定でいる。来季の大谷選手の活躍はチーム状態次第ではあるが、来季終了後、現地記者を驚かせるような活躍に期待したい。
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