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football2020.01.14

『日本サッカーの生きる伝説、三浦知良が語る「2020 日本サッカーこう戦う」』

2020年が、ついに幕を開けた。
日本サッカー界にとって重要な1年である。
SAMURAI BLUEこと日本代表は、2022カタールW杯アジア2次予選の後半戦に挑む。ここまで4連勝でグループ首位をキープしているが、このまま白星街道をひた走りながら9月開幕の同最終予選を迎えるのはノルマだ。

23歳以下の選手(※)でチームが編成される東京五輪の男子サッカーは、1968年の銅メダル以来44年ぶりとなる表彰台を、それも一番高い場所──世界の頂点をターゲットとする。

女子サッカーは年齢制限がない。なでしこジャパンこと日本女子代表が、史上初の金メダル獲得を目ざす。2012年に銀メダルを獲得しているが、16年はアジア予選敗退の憂き目にあった。昨年の女子W杯も、ベスト16にとどまった。再び世界の頂点へ返り咲くことは、彼女たちの使命である。



男女ともに国際舞台に臨む2020年の日本サッカーは、どのような1年になるのか。19年12月22日、東京・文京区の日本サッカーミュージアムに男女のレジェンドが顏を揃えた。キング・カズこと三浦知良選手(横浜FC)、元日本代表の前園真聖さん、元なでしこジャパンの川上直子さん、11年女子ワールドカップ優勝メンバーの岩清水梓選手(日テレ・ベレーザ)が、『2020 日本サッカーこう戦う』をテーマにトークショーを開いたのだ。




トークショーは1時間半の予定だが、カズ選手はスケジュールの都合で30分のみの参加となる。このため、序盤はカズ選手を中心にトークが進んでいった。

カズ選手は16歳で単身ブラジルへ渡り、サッカー王国でプロ選手となった。当時から「日本をワールドカップに出場させたい」との目標を掲げ、90年の帰国とともに日本代表でプレーしていった。

「プロとしてのメンタリティやプライドといったものは、ブラジルで身体で感じたものですね。代表の重みも同じで、ブラジルでは特別なもの、スペシャルな存在です。ほんの一部の選手しか辿り着けない場所で、みんなの支えであり、目標であり、夢でもある」



日本代表とU-23日本代表を指揮する森保一監督とは、日本代表のチームメイトだった間柄だ。司会者から「森保監督は……」と話題をふられたカズ選手は、「ポイチでしょ」と現役当時の愛称で答える。すぐに「ポイチって言えないですよね」と笑顔で切り返すと、2学年下の後輩を気遣った。

「代表監督のプレッシャーは、僕には想像がつかないですよね。まずは東京五輪ですが、彼の信念を曲げずにやってほしいですね。代表で一緒にやっていた当時は、いつも後ろで地味に僕らを支えてくれたものです。ああ見えて芯が太くて理想を曲げない、貫くところがある。いい時も悪い時も顔色を変えないけど、あれはなかなかできることではないですよ。みんなで頑張って、いい成績を残してほしいですね」



U-23日本代表と日本代表に招集されている久保建英選手について聞かれると、「ちょうど昨日、試合のハイライト映像を観たんですよ」と切り出した。スペイン1部のマジョルカでプレーする18歳には、カズ選手も注目をしているようだ。

「18歳であれだけのプレーをスペインでやる。信じられないですよ。(19年6月初旬まで所属していた)FC東京でもそうでしたが、最初からうまくいっているわけではない。でも、何か月かで修正をして、求められるものをやりつつ自分のスタイルを出せるようになっていく。努力しているんだなあ、と思います。修正することで自分のプレーができなくなる選手は多いけれど、彼は修正しつつ自分のスタイルを出せるのがすごいですね。スペインでも大変だったと思いますが、いまはしっかりスタメンで出ていますし。違いを作れる選手で、まだ18歳ですからね」



最後にカズ選手は、シーズンへの抱負を語った。

「横浜FCがJ1リーグに昇格したので、活躍できるように努力していきたい。毎シーズン変わらないことですが、スタメンで90分出場するための準備をしています。1分でも長くピッチに立っていたいですね」



ここからは前園さん、川上さん、岩清水さんの3人でトークが展開されていく。最初の話題はなでしこジャパンだ。

03年の女子W杯と04年のアテネ五輪に出場した川上さんは、「若い選手が高倉監督の期待に応えて、うまく伸びてきた。中堅、ベテラン、若手がミックスされてきていると感じます」と、19年のチームの印象を明かした。3度のW杯と2度の五輪を経験してきた岩清水選手は、「ベレーザの後輩たちが多く活躍している。チームでやっているプレーをしっかり発揮して、代表にうまく適応していると思います」と、自チームの選手たちの奮闘に声を弾ませた。



前園さんは高倉麻子監督に触れた。

「高倉さんはアンダーカテゴリーから監督をやってきて、以前から自分が見てきた選手たちが徐々になでしこ力を出しているのでは。もちろん、五輪本大会では勝負強さが求められます」

それぞれが期待している選手を聞かれると、川上さんは杉田妃和選手をあげた。INAC神戸レオネッサ所属の22歳のMFである。

「中盤でのゲームコントロールに長けた選手で、アンダー世代から注目されてきたエリートです。彼女がもうひと皮むけて状況判断、スピード、力強さといったものが世界のトップレベルまで来ると、なでしこの力も上がると思います」



岩清水さんは熊谷紗希選手(オリンピック・リヨン / フランス)をあげた。11年の女子W杯をはじめとする数多くの国際大会で、彼女たちはセンターバックのコンビを組んできた。

「チームのキャプテンとしてたくさん苦労をしていると思いますが、誰とでも分け隔てなくコミュニケーションを取れる選手です。経験も豊富ですし、肝心なところでの勝負強さに期待しています」

前園さんはストライカーの小林里歌子選手(日テレ・ベレーザ)の名前を出した。彼女が高校時代に指導をした縁から、その後も気にかけているという。

「大きなケガをして戻ってきて、19年にはじめてなでしこに選ばれたんですよね。スピードがあってゴールを決められて、最前線から中盤へ一度下りてきてまた前に出ていける。試合の途中から出場して、流れを変えることもできます」



続いてU-23日本代表へ話題が移る。まずは前園さんがマイクを口元に引き寄せた。

「この年代でこれだけ多くの選手が海外でプレーしているのは、これまでにないこと。そういう選手たちは厳しい環境で経験を積んで代表に合流しているし、日本代表でポジションを取っている選手もいる。ただ……」

かつて自らも経験した代表の難しさを、前園さんは指摘する。

「代表は集まれる日数が限られている。自チームのサッカーが染みついているなかで、すぐに融合するのは難しい。3日とか4日の準備では合わせきれない部分もあるでしょうが、そこをアジャストさせることを代表では求められる。それができる選手が、代表で生き残っていくでしょう」



男子も注目選手をピックアップしていく。前園さんは「たくさんいますねえ」と悩みながらも、冨安健洋(ボローニャFC / イタリア)をキーマンに指名した。

「この年齢(21歳)で日本代表でも試合に出ていて、本職のセンターバックだけでなく右サイドバックもできる。彼がいることで、チームがすごく落ち着きます。最終ラインでどっしり構えてくれるのは頼もしい。守備だけでなく攻めのフィードもできますし」



「オーバーエイジを招集するなら?」という質問には、「吉田麻也、柴崎岳、大迫勇也」と即答した。すると、川上さんから「本田(圭佑)選手が五輪に出たいと言っていますけれど」と突っ込みが。前園さんは「うん、うん」と頷きながら、「所属クラブとの兼ね合いで、僕があげた3人も実際に選べるかどうかは分かりません。とにかく、ベストメンバーで臨んでほしいです」と期待を言葉にした。川上さんも「3人のオーバーエイジが加わって、チームがさらに良くなればいいですよね」と話した。



センターバックの岩清水選手は、前園さんがあげた冨安選手を選ぼうとしたそうだ。「同じ選手にするのもどうかと思うので」と苦笑いを浮かべ、「堂安律選手(PSVアイントホーフェン / オランダ)が楽しみな存在です」と素早い切り替えを見せた。

「堂安選手は自分にプレッシャーをかけるように、あえて大きなことを言ったりしている。五輪でどこまで結果を残せるのか、すごく楽しみですね」



予定された1時間半は、あっという間に過ぎていった。来場者へのあいさつで、トークショーは締めくくりとなる。

前園さんは「今回は自国開催、男女ともにメダルの可能性を持ったチームだと思います」と力強く宣言した。現在は産休中の岩清水選手は、「今日この場に来て、サッカーへの情熱を改めて勉強させてもらいました」と、出産後の現役復帰への意欲を新たにした。

川上さんは女子のサッカーのサイクルを踏まえ、「19年のW杯を受けて、20年の五輪はなでしこの集大成の大会になります」と説明し、「なでしこがもう一度世界の頂点を目ざして頑張りますので、皆さん応援をよろしくお願いします」と語り、来場者から拍手を受けた。続けて「男子は決勝戦のチケットが当たりましたので、会場で応援します!」と明かすと、会場が驚きの声に包まれた。

日本サッカーは2020年も国際舞台に挑み、新たな地平を切り開いていく。



(※)五輪の男子サッカーは開催時に23歳以下の選手に出場資格があり、そのほかに年齢制限のないオーバーエイジを3人まで登録できる。

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