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golf2020.07.29

【生声をお届け! Salon de 女子プロ】Vol.1 渡邉彩香プロ・「アース・モンダミンカップ優勝秘話」

ツアー会場から、女子プロたちの生声を不定期でお届けする「Salon de 女子プロ」。
記念すべき第1回目は今季の女子ツアー初戦となる「アース・モンダミンカップ」で約5年ぶりに優勝した渡邉彩香プロにインタビュー。苦しかったスランプ時代と優勝したアース・モンダミンカップでの秘話を聞いた。


――優勝から時間が経って、改めてどんな思いが去来していますか。

初優勝の時よりも、今回の優勝の方が周囲の反響が大きいみたいな気がしていて、そういう周囲の反応を見ると、改めて、優勝したんだなという実感が湧いてきています。

お祝いの言葉と同時に、試合でのショットを見てくれた人から「(良い頃に)戻ってきたね」と言われたり、「これをきっかけに今年、頑張ってね」と励まされると、この1勝だけじゃなく、そういう声に応えていけるように頑張りたいと思いました。

――およそ7か月ぶりの試合となった『アース・モンダミン』には、どのような気持ちで臨んだのですか。

今回のアースの時の状態は凄く良くて、ショットも自信を持って打てるようになっていたし、もうやれるだけのことはやってきたという思いで試合に臨みました。でも何年も、練習では良いショットが出ているのに試合では出せていなかったし、ずっと試合が開催されなかったということもあり、初日のティーイングエリアに立つまでは正直、不安な気持ちの方が強かったです。1番ホールのドライバーのティーショットを打って、「あ、大丈夫だ」って思いました。

――あの4日間の試合(スコアは69、69、71、68)をどう戦ったのかを、振り返って頂けますか。

初日、2日目と進むにつれて、どんどん振れているという手応えを感じていて。あまりにも調子が良すぎて気持ちが前のめりになり過ぎて、ちょっと上体が強くなったなというショットが何回かあったんです。でもそこに気づいてからは、数字とか順位とかを気にするのではなく、とにかく今、自分がやるべきことに向き合うようにシフトチェンジしました。

――3日目は、唯一60台が出ませんでしたが。

調子が良くてどんどん振れてきたことによって、試合の中でアイアンやウエッジが飛び過ぎるようになっていたんです。ウエッジで普段よりも7~8ヤード飛んでいましたから。それで、距離を合わせるためにショットに緩みが出たり、緩むなと感じて今度は引っ掛けたりというショットが出たんです。でもそれはスウィングの問題というより、距離感とか狙い方のイメージのズレだったので、最終日には修正できていました。

――最終日は久しぶりの優勝争いで緊張しましたか。

今回は4日間、「散歩」のように回ることがテーマだったんです。4日間を通じて、それは出来ていたと思います。日に日に自分のゴルフに自信がついてきて、余裕というか、穏やかというか、メンタルは安定していました。初日、2日目はスコアボードを見ていたのですが、3日目からはキャディの川口淳さんに任せて自分は見ないでラウンドしたので、緊張をすることは無かったです。最終日の18番ホールで、バーディパットを外した時に、周辺で「ワァ~」という(残念がる)声が聞こえたので、キャディさんに、これもしかして入れたら優勝だったんですか?って聞いて、初めて自分がトップに並んでいたことを知りました。

――優勝に向けてのターニングポイントとなったような1打はありましたか。

最終日の9番ホール(183ヤード・パー3)のティーショットですね。打つ前に「ピンに向かってスタンスを真っ直ぐにとり、ピンの左奥に見える1本の木に向かって球を打ち出します。6番アイアンで距離はこれくらい。左からこれくらい右に戻ってくるように曲がる球を打ちますから」と、キャディの川口さんに言ったんです。そして実際に、言った通りのショットを打つことができました。私の中で、あれが4日間で一番良いショットでした。

あの9番ホールのティーショットは、スウィングの力感だったりバランスだったり、そういうことが全部上手くかみ合って、なにか『カチッ』とハマった感じがした瞬間というか。ずっと練習でやってきたことが、自分のイメージ通りに試合の中でできたことで、凄い自信になりました。それで、後半のハーフはショットが凄く良くなったんです。

――前年の賞金女王の鈴木愛選手が相手のプレーオフは、緊張したのではないですか。

72ホール終えた時点では、自分は、こんなゴルフができるようになるまで戻ってこれたんだと思って、凄く嬉しくて。でも、その後は、プレーオフは初めてだったし、もちろんあそこまで行ったときには『勝ちたい』という気持ちも湧いてきたし。それに、最終日は最終ホールまでスコアボードを見ないでやってきて、それでいいプレーをできたともいえるので、初めて優勝を意識した状態で、最終ラウンドの9番のようなショットが打てるのか分からない。だからプレーオフに入った時は、緊張感はありましたね。

でも、9番ホールで得た自信というものが凄く大きくて、プレーオフの18番のティーショットも、『こうやって打ったら大丈夫』という確信があったんです。実際に打ったドライバーショットは、少し左のラフにかかったんですけれど、でもイメージ通りに打てて。優勝を意識した場面で、そういうショットが打てたということが、さらに自信になったから、その後のプレーの間に緊張することは無かったです。


飛距離が出る「パワーフェード」を取り戻し、4年半ぶりの優勝を遂げた渡邉彩香

――5年ぶりの優勝を果たしたのは、最大の武器である飛距離が出る『パワーフェード』が戻ってきたことが大きいのでしょうか。

そうですね。自分が求めているのは、目標に対して真っ直ぐに構えて、球をつかまえながら左に出し、それが目標方向に戻ってくるフェードボールです。左にしっかり振って、ボールをつかまえることで強いフェードになり、飛距離も出るんだと思うんです。それが、アドレスで左を向いてしまうと、球をつかまえる要素が無くなってしまうので、強いフェードにはならないのですが、この数年間は、そういう打ち方になっていたんです。でも、その強いフェードの打ち方を、今は、しっかり取り戻せたかなと思います。

自分が求めているフェードを打つためには、ボールをつかまえたいので、インパクトでボールがフェースにくっついている感じが欲しいんです。それでボール選びでは、スピン系の『XS』にするかディスタンス系の『X』にするか迷いました。「X」は「XS」に比べると球離れは速いけれど、インパクトでフェースにくっついてくる感じは十分だったので、「X」にしました。

――どんなゴルファーにマッチするボールなのでしょう?

ディスタンス系のボールは硬いというイメージを持ちがちだと思うんですけれど、このブリヂストンのツアーB「X」は、インパクトの感触がそんなに硬くないので、飛距離を求めているけれど、あまり硬い打感のボールは嫌だなという人に、ぜひ使ってみてほしいボールです。

――ボールに関して番号とか、何かこだわりは?

特に無いんですよ。だから今回の優勝ボールも、バッグの中に入れて他のボールと混ざってしまい、どれだったか分からなくなっちゃって(笑)。


渡邉彩香のウィニングパット。下りの2メートルを見事に沈め、前年の賞金女王・鈴木愛との一騎打ちを制した

――今回、初めてボールにライン(ジャストインアライメント)が入りましたが、どうですか?

パッティングの時は、余計な情報をできるだけ入れたくないんですよね。今回のツアーBのボールは、パッティングのラインを決めたらそれにボールのラインをセットすれば、あとは、そのボールのラインの方向に打ち出すことだけに集中できるので、自分の中では凄く助かっています。

――アースの優勝を決めるバーディパットの時に、川口キャディが「得意の下りだね」、「下りだから大丈夫だよね」と、リラックスさせるために盛んに耳元でささやいていたそうですが。そういう囁きの中でも集中してウィニングパットを決められたのは……。

そう、あのボールのラインのお陰です(笑)。

――ボールって、どのくらいのペースで替えるんですか。

1ラウンドで3~4個です。ボギーとかが続いたら替えたり、バーディが続いていたらそのまま行ったりとかはしますけど、でも平均するとラウンドで4個くらいです。今回のツアーBは、ウエッジでフルショットしてもあまり気にならない程度の傷なので、カバーの耐久性は本当に高いと思います。その点でも、アマチュアの人にはおススメですね。


思わぬ不調に陥ってから4年半。コロナ禍で沈滞していたゴルフ界に久々の嬉しいニュースを届けてくれた、渡邉彩香。その活躍は、まだ、始まったばかりなのかもしれない。

※次回ゴルフ5レディスへの意気込み編を公開予定。

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