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golf2021.06.18

【松山英樹のメジャーを獲るギア選びVOL.1】全米オープンの前に知っておきたい、このギアにたどり着いた理由と納得のエピソード

マスターズ制覇という大偉業を成し遂げた松山英樹選手が次に挑むのは、メジャー第3戦、全米オープンゴルフ選手権。アメリカ西部、カリフォルニア州にある「トーリーパインズゴルフコース」で、6月17日から開催される。メジャーチャンピオンとして迎える大舞台でどんな戦いを見せてくれるか楽しみだが、彼を支えるクラブにも今一度、注目しておきたいところ。

松山選手と言えば、用具へのこだわりが非常に強いことで有名だ。とくにクラブに関しては、我々アマチュアの想像を絶するレベルのこだわりをもっているという。そのこだわりの世界を探る【松山英樹のメジャーを捕るギア選び】シリーズ。VOL.1はドライバーについて、住友ゴム工業(株)広報担当の浅妻肇さんに話を聞いてみた。


「松山選手は、2016年に長年愛用してきた『スリクソンZR-30』を日本オープンで使用したことを最後に、ドライバーに悩んできました。ここ数年は、他社さんのドライバーを使ってきたことで、我々もとても悔しい思いをしましたし、同時に“松山選手に認められるドライバーを作らなければ”という思いも強くありました。そんななか2020年8月、ついに自社のドライバー『スリクソンZX-5』を使うようになり、それでマスターズ優勝という最高の結果を残してくれました。本当に感無量です」


今季、松山英樹選手が使用している【スリクソンZX-5】ドライバー


アジア人初のマスターズ制覇という偉業を成し遂げた松山選手。その手にスリクソンのドライバーが握られるまでには、険しい道のりであったと話す浅妻さん。

「松山選手は、ドライバーの顔には強いこだわりがあります。シャフトからフェースにかけての一体感を重視し、そこのラインが流れるように整っていて、きれいにスクエアに見えるクラブでないと使いません。実際にお渡ししたテストクラブの顔が悪いと、ボールを打つことすらしてくれない場合もありますし、ヘッドのわずかな個体差を見て選別したり、組みあがったクラブに対してクラウンの仕上げ部分に油性ペンで修正指示が書かれたこともあります。その点、今年の『ZX』シリーズは、昨年2月に見せたときに“カッコいいですね”と第一声からほめてもらえる顔に仕上がりました」


シャフトからフェースへのラインがすっきりとした、松山選手が求める「一体感」のあるヘッド形状となっている【スリクソンZX5】ドライバー


想像を超える松山選手のクラブへのこだわり。長い月日をかけてトライ&エラーを繰り返し続けたと浅妻さんは言う。

「しかしどんなに顔のいいクラブを作っても、飛距離性能に不満があれば、彼は絶対に使ってくれません。米ツアーで戦ううえで、飛距離が出ないというデメリットをクラブで負うことは許されないのです。正直なところ、ここ数年の弊社のドライバーは、松山選手の納得のいく飛距離性能を実現できていなかったということは否定できません。彼の中には“キャリーで何ヤード以上”という一定の基準があるようで、それをクリアすることが、彼がドライバーを選ぶ上での絶対的な条件だったようです。今回の『ZX』シリーズに関しては、昨年6月からスペックを合わせつつ実際に打ってテストを重ねていくなかで、彼の中の“基準”をクリアし、しかも他社のドライバーを上回るデータが出せていました。やはり松山選手にとって、この“飛距離”が使用に踏み切る決定打でした」


4層構造の「REBOUND FRAME」を搭載することで実現した高い反発性能は、松山選手の“基準”クリアに大きく寄与している


「そこから細かな部分での調整を積み重ねて現在に至るのですが、松山選手がツアーで使用しているヘッドは、実は街で一般ゴルファーが買う事の出来る市販品とほぼ同じものを使っているのですよ。」

プロが試合で使うドライバーヘッドは、市販品に手を加えた特別なヘッドを用意されることもあるが、松山選手は市販品とほぼ同じものを使っていて、そのヘッドでマスターズを勝ったのだという。

「マスターズでは『ZX-5』を使用していましたが、『ZX-7』を使っていた試合もあり、どちらも遜色なく評価してくれたなかで、若干『ZX-5』のほうが松山選手は飛距離が出たことから、現在は『ZX-5』がエースになっています。弾道に関しては、ただ低スピンというだけではダメで、ある程度のスピン量があったほうがコントロールしやすいと感じているようです」

テストを繰り返すうちに、松山選手のマスターズに対する並々ならぬ思いを現場のプロ担当者の話から感じていた、という浅妻さん。

「普段の練習やテストをしている中で、松山選手はつねにマスターズのことを想定しながらクラブをチェックしている、という話を聞きました。自分の打った球を見て“いまの球ならオーガスタのあのホールで使えるね”とか“この球だったらあのバンカーを越せる”とか、彼の頭の中には、いつもオーガスタがあるようです。マスターズの最終日の大詰め、彼は17番ではドローで、18番ではフェードでティショットをし、ともにフェアウェイのベストポジションにつけました。あの大舞台の土壇場2ホールでこの打ち分けができたことは、そういった彼の努力の集大成と言えるでしょう。そしてそれをきっちりやり遂げたということは、『ZX-5』が彼に完璧にマッチしている証拠なのだと思います。」

同時に、松山選手が「スリクソン」対する深い愛情を持ってくれていることに、感銘を受けたという。

「松山選手はここ数年他社のドライバーを使っていましたが、彼は“スリクソン愛”がとても強い人なのです。学生時代から、クラブはもちろん、ボールもキャップも全部スリクソンでしたし、プロになってからも使い続けていて、愛着を持ってくれています。だからこそ、『スリクソンのドライバーは他社よりも飛ばなければダメで、そうなるために一切妥協はしない』という姿勢でした。“飛ばなくても使う愛”ではなく、“飛ぶものを一緒につくる愛”。他社のドライバーを使っていたのは、その愛ゆえだったと感じましたね」

選手が最大のパフォーマンスを発揮できる最高の物づくりを、こだわりをもって続けていきたいと浅妻さん。

「今後のモデルチェンジで、仮にもドライバーの質が落ちるようなことがあれば、松山選手はまたスリクソンの使用をやめるかもしれません。我々は決してそんなことがないように、最高のものを作り続けなければならない。もちろんプレッシャーは大きいですが、彼の期待にこたえられるように、全力を尽くしていきたいと思います」

浅妻さんは、そう語気を強めて話を締めくくった。


読者の中には、松山選手が通常の試合で契約先とは違うドライバーを手にしているのを見て、「あれっ?」と感じていた方が多かったかもしれない。しかしこのエピソードを耳にすれば、『松山選手はマスターズをスリクソンで勝つためにその道をしっかり歩んできたのだ』と納得できたのではないだろうか。全米オープンでは彼のプレーとともに、その戦いを支える“スリクソン”にも注目してみたい。
 


<松山選手使用ボールに関するマガジン記事はこちら>

https://media.alpen-group.jp/media/detail/golf_210618_02.html


<松山選手着用ウェアに関するマガジン記事はこちら>

https://media.alpen-group.jp/media/detail/golf_210618_03.html

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