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golf2023.04.07

穴井詩選手 優勝特別インタビュー。激戦「ヤマハレディースオープン葛城」を勝ち抜いた4日間!Part1「本戦編」

3月30日~4月2日に静岡県の葛城ゴルフ倶楽部で行われた「ヤマハレディースオープン葛城」で、ゴルフ5所属の穴井詩選手が自身4年ぶり4度目となる優勝を成し遂げた。

巨匠・井上誠一氏の設計による難コースを舞台に、見ごたえのある優勝争いを繰り広げ、最後には壮絶なプレーオフを制して勝利を手にした穴井選手の戦いぶりは記憶に新しい所だ。

この試合では穴井選手の活躍もさることながら、普段から穴井選手を含めたチームゴルフ5のコーチをし、今大会では穴井選手のキャディも務めた田子元治プロの存在も大きかったようだ。


穴井詩選手(ゴルフ5所属)と田子元治キャディ(プロ・チームゴルフ5コーチ)


試合後の忙しいなか、この二人がアルペングループマガジンのために貴重な時間を割いてくれた。二人三脚の勝利ともいえる今大会の優勝秘話、そして裏話を2回に渡ってお届けする。まずは最初に、本戦の4日間について聞いてみた。


●勝因はオフから取り組んできた「ショットの精度アップ」

スイング改造によってティーショットの精度がアップ。今大会のフェアウェイキープ率は90%に迫る


――穴井選手、田子キャディ、「ヤマハレディースオープン葛城」優勝おめでとうございます!

穴井選手・田子キャディ ありがとうございます!


――4年ぶり4度目の優勝は大変な激戦でしたね。

穴井:日を追うにつれてグリーンが硬く、速くなっていくし、3日目の午後からは風も出てきて本当にシビアでしたが、なんとか耐え切ることができました。


――ズバリ勝因はどこにあったのでしょうか?

穴井:ティーショットの精度に尽きると思います。昨シーズン終了後、ショットの精度向上に取り組んできたのですが、先週のアクサレディスの途中くらいからそれが噛み合ってきて、今大会では3日目まで毎日(ドライバーを使う)14ホール中13ホールでフェアウェイキープできたんです。最終日は力みも出て3つフェアウェイを外しましたが、それでもトータルでは9割近いフェアウェイキープ率を維持できました。難しい葛城GCで結果が出せたのはそのおかげだと思います。


――飛距離が武器の穴井選手が精度アップしたら、鬼に金棒ですよね。具体的にはどんなことに取り組んだのでしょうか?

穴井:石井コーチの指導でアドレスの姿勢を変えて、猫背にならないようにしたんです。スイングに関しても、オフの間に「一度くらいキレイなスイングを目指したい」と思って(笑)、シャローイングを取り入れてみたりもしました。それは効果がなくてやめたんですが、元のスイングに戻り切らなかったみたいで(笑)、結果的にスイングもコンパクトになって、飛距離は落ちましたが精度はアップしました。


――スタッツを見ると、ドライビングディスタンスは1位(257ヤード)でしたが、それでも平均飛距離は落ちたんですね?

穴井:はい、飛距離は15ヤードくらい落ちました。


――田子キャディから見て、穴井選手の状態はどうでしたか?

田子:オフの合宿からスイング改造の様子を見てきて、練習では確実によくなっているのは知っていました。試合では力感が強くなってラインがズレたりタテの距離が合わないことがまだ多かったのですが、今大会は初日から練習でやっていることがコースでできていたので「今週は面白そうだぞ」とは思っていました。


――優勝を予感していた?

田子:優勝までは想像できませんでしたが、初日の出だし3ホールの状態を見て、上位では戦えるだろうなと感じましたね。これを続ければ4~5月のうちに1勝できるんじゃないかという感触はありました。


●2日目スコア「66」の大爆発で躍進

2日目、7バーディを奪って一気に上位に躍り出た


――初日はイーブンパー、36位タイのスタートでした。葛城GCとの相性はどうなんですか?

穴井:葛城GCは、難しいコースなうえに予選落ちが多い印象で、あまり得意なコースではなかったんです。初日のショットについては悪くはなかったんです。でも、3パットのボギーを2つとOBが1発あって、「悪くないけどもったいない」というゴルフでした。2日目は、その「もったいない」をなくそうというテーマで取り組みました。


――それが2日目の「66」というビッグスコアにつながったんですね。

穴井:同組だった渡邉彩香ちゃんが私と似たタイプの選手というのもあって、いい感じで引っ張られて伸ばし合った感じでしたね(渡邉選手も5アンダー)。でもあと2つは伸ばせたかな。

田子:17番ホールで僕が2mのバーディパットのラインを読み違ったからなあ…。

穴井:あれは相談して納得して打っているので、田子さんのせいじゃありませんよ(笑)


――3日目は34-37と、好調なスタートながら後半伸ばせませんでした。

穴井:午後から風が強くなり出したのと、グリーンもどんどん硬く、速くなっていって…。

田子:葛城GC独特の山あいの風が本当に読めなくて苦労しました。詩選手に「風どっち?」って聞かれても「わからない」って答えるしかない場面もありました。


●最終日は「世界一似合う」黒のウェアで勝負!

スタート前に黒のウェアに着替えて気合を入れたという


――最終日は最終組の3組前で5位タイからのスタートでした。どんな気持ちで臨んだのですか?

穴井:具体的に「優勝」までは考えていなくて、割と気楽に「よーし、自分を追い詰めてやるぞ!」というくらいの気分でしたね。実は朝、コースには「ハッピーな色 」(笑) の 派手なウェアを着て行ったんです。でも、これじゃ追い上げる立場として迫力がないなと思って、田子さんに「これと黒のウェアとどっちがいい?」って聞いたんです。そうしたら……

田子:僕は「詩は黒が世界一似合うから黒がいいね!」って答えたんです。


――それでスタート前に黒のウェアに着替えた?

穴井:はい。


――それはカッコいいエピソードですね! 戦略的にはどんなことを考えていたんですか?

穴井:とにかく「手前から」ですね。最終日は風も強かったし、グリーンもさらに硬く速くなっていました。傾斜も強いので、ピンハイにつけてもチャンスにならないんですよ。

田子:たとえば10番ホールでは、2打目でいいショットが打てて手前につけられたと思ったので「2000点のショットだね!」って褒めたんです。でも、グリーンに行ってみたらボールが止まらずにピンハイまで行っていた。そうしたら詩選手が「マイナス2000点だったね」って(笑)。12番もナイスショットと思ったら奥のカラーまで行っていたし、13番も手前かと思ったらやっぱりピンハイ。こういうのが何度もあったよね。

穴井:だから全然余裕がなくて、リーダーボードもハーフターンでチラッと見た後は、ホールアウトするまで一度も見ませんでした。


――最終日は上位スタートでアンダーパーだったのは穴井選手だけで、どの選手も苦しんでスコアを伸ばせていませんでした。穴井選手は、苦しいパーパットをかなり決められていたように見えました。

穴井:ラインは読めていて、自信を持って打てていました。とくに終盤にかけては集中力が高まっていて、調子はよかったです。

田子:実は上りの長いラインはショートしがちで、初日の3パットもそれが原因でした。でも、最終日はそこからパーパットを決めてしのげていた。とくに下りの速いラインはタッチが出ていたと思います。


●バーディフィニッシュで混戦から抜け出す

苦しい場面も好調のパットでしのぎ、クラブハウスリーダーでフィニッシュ


――混戦でしたが、16番でついに単独首位に立ちました。田子キャディは順位を確認していたのでしょうか?

田子:ときどきチェックはしていて、ハーフターンでトップと2打差にいるのは知っていました。16番でカメラマンが多くなってきたのに気付いて「これは単独2位くらいにいるかもな」と思って17番ティでボードを見たらトップ。詩選手には気付かれちゃいけないと思って、態度に出さないようにしていました。17番はなんとかしのぎたいパー3なので、心の中では「頼むからセンターに乗せてくれ!」って祈っていましたね。


――その祈りが通じてセンターにナイスオン。パーを獲って最終18番に向かいました。

田子:18番でバーディを獲れれば、悪くてもプレーオフには行けるなと僕は思っていました。


――そして18番。見事なバーディフィニッシュでしたが、2打目は5番アイアンでショートしましたね。

穴井:あれは、15番パー5のセカンドでUTを持って奥まで行ってしまったイメージが残っていて、同じように飛んじゃって奥はイヤだから「花道でOK」と思って小さめの番手で打ちました。


――アプローチで上手く寄せて、最後のバーディパットではガッツポーズが出ました。

穴井:3m弱だったと思いますが、ラインは読めていました。


――クラブハウスリーダーとして後続を待つ気持ちはどうでしたか?

穴井:アテストが終わってリーダーズボードを見た段階で、山下(美夢有)ちゃんと(ささき)しょうこの2人が8アンダーで、どちらかがバーディならプレーオフ。「あの2人なら決めるだろうな」と思って、プレーオフに備えて体だけは冷やさないようにしておこうと準備していました。

田子:「頼むからプレーオフだけはやらせて」ってつぶやいてたよね(笑)

穴井 あの2人ならチップインイーグルもあり得るから、さすがにそれはやめてよって思ってました(笑)

Part2「プレーオフ編」に続く
 


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