フリーワード検索

other2019.08.13

依吹怜│厳しかった練習、キャプテンとしての悩み。今の自信につながっているバレーボール部だった頃の日々【後編】

[ 前編はこちら ]

モデルや女優として、雑誌、TV、舞台など幅広く活躍する依吹怜さんに、学生時代にバレーボールへと打ち込んだ日々について聞いた本インタビュー。後編では、ケガやキャプテンとしての重圧に悩まされた日々、現在の活動にバレーボール経験がもたらしてくれたこと、そして部活動に打ち込む学生たちへのメッセージをお届けする。


■ケガと、キャプテンとしての責任に悩まされた日々


──高校時代はどんなケガをしてしまったのでしょうか。

頚椎のヘルニアです。いろんな病院をまわって「バレーをやめないと車椅子生活になる」と言われました。1年生の9月ごろからしびれが出はじめて、思うように身体が動かせなくなって。練習もできなくなってしまったんですけど、逆に治らないケガだったからこそ気持ちを切り替えられたのか、「自分にできるのは声を出すことだけだ」って思うようになりました。自分がプレーできなくなっても、みんなのことが大好きだったから部活に行かないという選択肢はまったくありませんでした。重い荷物はチームのみんなが持ってくれたり、監督も、私の葛藤とかを理解したうえで、絶対に無理をしないよう止めてくれたし……周りにも本当に助けられました。チームをサポートする立場になってからは、とにかく必死に声を出して、1球1球に気持ちを込めてボールを渡していた気がします。その後、球拾いをする私の姿を偶然見ていたスポーツドクターの先生が声をかけてくださったんです。「そんなに輝いてるのに、どうしてプレーしないの?」って。「首をケガしてしまっていて」と話したら、トレーニングをサポートしてもらえるようになりました。そのおかげで少しずつ首を動かせるようになっていって。ケガする前ほどには戻らなかったけれど、最終的には監督からも「このサーブ一本だけ決めてみろ」みたいな感じで、ピンポイントでなら試合にも出させてもらえるようになりました。今考えてもすごい出会いです。

──高校時代は、ケガに苦しみながらもキャプテンを務めていたそうですね。

はい。でも、今思えば自分にプレッシャーをかけすぎていたな……。「自分自身がプレーできないからこそ、ちゃんとしなきゃ」と、周りにも厳しくしてしまって。後輩とかは私のこと嫌だっただろうなと、後悔しています。空回りしちゃってましたね。当時はもう必死だったので、なかなかその空回りを修正することはできなかったんですけど。でもとにかく後輩との関係に悩んでいました。

──悩みを抱えていたとき、どんなふうに乗り越えていましたか? 身近に相談できる人がいたりしたのでしょうか。

周りにはほぼ相談しませんでした。本当の本当に、「このままだと自分が保てない」っていうギリギリの状態でコーチに相談したことはありましたけど、チームメイトにはなかなか話せなかったんです。周りの子たちもそれぞれにもがいていたので、「私なんかが頼っている場合じゃない」なんて考えたり、とにかく背負い過ぎちゃっていて。大人になってから同学年の子が「あのときは自分のことで精一杯で、サポートできなくてごめんね」って言ってくれたこともありました。今振り返ると「青春してたな」って感じですけど、当時は本当に悩んでばかりでしたね。


■自分のなかでスポーツの世界が広がった


──その後、順天堂大学のスポーツ健康科学部に進学されますが、大学でスポーツを学ぼうと思ったのはどうしてだったのですか?

自分がケガをしたことで「将来、自分と同じような子をサポートできるような体育の先生になりたい」と思ったのがきっかけでした。大学に入ってからはバレー以外にもいろいろなスポーツをやったり、教え方も学んだり、科学的な方面からもスポーツを考えたりするようになって、私のなかで新しくスポーツの世界が広がりすごく面白かったです。その後は、アルバイト先のフィットネスクラブで一緒に働いていた人が芸能界を目指していたり、いくつかのきっかけが重なってモデルの道へ進むことになったのですが、今でもスポーツは大好き。月に1回はバレーボールをやっているのと、週に2回ほどはランニングもしています。追い込みたいときは、スイムとトレーニングも入れたり。筋肉痛になって「頑張ったな」って思えるのが好きで、忙しければ忙しいほど運動したくなっちゃいます。モデルをしていて目まぐるしく環境が変わっていくなかでも、スポーツを通してつながった友達といると安心できたり、生活のリズムが整っていく感じが好きなんです。


■部活動での何もかもが、今の自分に活きている


──学生時代に部活動に打ち込んだり、大人になってからもスポーツを続けてきた経験が、今のお仕事に活きていると感じることはありますか?

本当に何もかもが活きていると感じています。部活動をやってきたおかげで、ちょっとやそっとのことじゃ動じないというか……過酷な状況を乗り越えたり悩んだ経験が、今では自信にもつながっていると思います。「もっと人を頼ってもいいんだ」というのも部活を通して学んだことです。モデルの仕事をしていても、現場にはカメラマンさんやメイクさんだったり、「みんなで良いものを作ろう」という思いのもと、スタッフさんたちと“チーム”を組んで動いています。この感覚は本当にバレーをやっているときと同じだなと思うんです。みんなで力を合わせるからこそできることがあるっていうのが、すごく素敵なことなんだと日々実感しています。

それから、仕事をするうえでもやっぱり楽しめなきゃいいものは作れないと思うし、見ている人にも伝わらないと思うんです。でも、努力しなければ楽しさって絶対に生まれてこないとも思っています。このあたりの考えも、バレーを通して得られたものですね。

──最後に、現在部活動などでスポーツを頑張っている人たちに向けてメッセージをお願いします。

大人になってからつくづく思うのが、部活動での経験に勝るものはなかったな、ということ。苦しかったことも嬉しかったこともやっぱり忘れられなくて、全部の経験が活きているんですよね。でも、今部活を頑張っているみなさんはきっとまだ想像がつかないというのもすごくわかります。私自身、厳しい部活を経験していたので……。だけど、どうか未来を信じて楽しんでほしいです。それでもどうしてもつらいときは、部活以外の世界にも目を向けてみてください。毎日目の前のことに必死だと、ついつい「部活が世界のすべて」みたいに思えてしまう気持ちもすごくわかるんですよね。逃げ道がないように思えてしまうこともあるかもしれないけれど、決してそんなことはないはず。ときには逃げたっていいし、周りを頼ってもいいんです。私が中学生のころにこう言われても響かなかったかもしれないけれど……少しでも伝わるといいな、と思います。



[プロフィール]


依吹怜
モデル/役者。特技はバレーボール。モデル活動だけでなく、「朝だ!生です旅サラダ」(テレビ朝日系)や「世界ふしぎ発見!」(TBS系)にも出演の場を広げている。「名古屋ウィメンズマラソン2019」では大会イメージモデルを務め、自身初となるフルマラソン完走を果たした。

BUY NOW

SEARCH フリーワード検索