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other2019.10.16

伊原六花│登美丘高校ダンス部の仲間は"家族"。本音を言い合える関係性が力を生んだ【後編】

登美丘高校ダンス部元キャプテンで、現在は女優や歌手として活躍する伊原六花さんに、ダンス部時代の経験について聞いた本インタビュー。後編では、仲間との関係性や、芸能活動とダンス経験のつながり、そして現在部活動へ打ち込む学生たちへのメッセージをお届けする。


■本音を言える関係性の大切さ


──先輩や、同学年の仲間たちとの関係はどうでしたか?

先輩は、本当に尊敬できる存在でした。厳しいことを言われるときもあったけど、ちゃんとできたらすごく褒めてくれたり、先輩たち自身がきちっとルールを守っているのを見て、「私たちもしっかりしなきゃ」と思わせてもらったり。ダンスのことに関しては学年関係なく意見を言ったり、ときには注意してもOKという雰囲気を作ってくださったのもありがたかったです。
同期の仲間たちとは、ただの仲良しではなく、本音を言い合える関係性を築けました。

──どうやって関係性を築けたのでしょうか?

1年生のころ、先輩に「1年生は上辺の付き合いしかしてないから、ちゃんと本音で話し合って」って言われたんです。初めのうちは「上辺のつもりはないし、ちゃんと話し合ってるのにな」って思っていたのですが、ミーティングを重ねるうちに、実はそれぞれ言葉にしてこなかったことがたくさんあったことがわかって……。2年生になったころのある日、一人が直したほうがいいと思うことを言ったことをきっかけに、次々とみんなから意見が出てきたんです。「あなたのこういう態度はよくないと思う」とか、個人に対する言葉もどんどん飛び交って。そのときやっと「上辺じゃない関係って、こういうことだったんだな」「仲が良いように見えても、本音を言えていなかったんだ」ってみんなで気づきました。

──関係性が変わってから、ダンス部全体の雰囲気や姿勢にも変化がありましたか?

私自身、以前は人から「こうしなさい」って言われたくないタイプで、何か言われても自分の意見を突き通してしまっていたんです。ミーティングのときに「もうちょっと人の意見に耳を傾けてほしい」って言われてから、少しずつ変わることができて。だんだん、いろんな人の考えを聞いてみたいって思えるようになりました。ほかにも、「高校でダンスを始めた組が、経験者組に注意するのは気が引ける」って思ってたことを知って、経験者組が、知らず知らずのうちに言い出しづらい雰囲気を作ってしまっていたのかなって気付かされたり。本音で言い合える仲になってからは、こうやって少しずついろんなことが改善されていきましたし、一人ひとりが発言しやすくなっていきました。そのおかげで、キャプテンになったときにも「この子はこういうタイプだから」って、それぞれの性格も意識しながらいろいろ考えられるようになりました。


■「全国優勝」の目標を掲げて


──キャプテンになってからは、どんなことを心がけていましたか?

意識的に、後輩と接するときは厳しめにしていました。決して、ただ先輩顔をしたかったわけではなくて。私たちの代では、それまでちょっと理不尽だと感じていたルールを変えようという考えを持ってやっていたんです。そのぶん、前よりもっと学年を越えて団結しやすくなったり、良いことももちろんあったのですが、距離が縮まりすぎてなんだか締まらない雰囲気になってしまうこともあって。それで、緊張感を持って練習するためにも、部長とキャプテンはちょっと嫌われ役的な存在になってもいいのかなって思って、厳しく接するようにしてました。でも、同期のみんなはその考えをわかっていてくれたので、「何かあったら言ってね」ってよく気にかけてくれて、ありがたかったです。

──その後、登美丘高校ダンス部はさまざまな賞を受賞したり、「バブリーダンス」をきっかけに大きな注目を集めるようになりました。活躍の裏には、部としてのどんな取り組みがあったのでしょうか?

私たちの代になったときに「全国大会で優勝したい」と、改めて目標を掲げて、そのために必要なステップを部員全員で意識合わせできたのが大きかったと思っています。優勝を目指してどんなスキルを上げたらいいか、大まかな方向性をコーチに教えてもらってからは、具体的なメニューだったり、より効果的に練習するための工夫は自分たちで話し合って決めました。一歩引いたところから見ているような人は誰もいなくて、より良くするための方法を一人ひとりが自分ごととして考えられるようになったのがすごく良かったと思います。


■しんどくても、騙されたと思って続けてみてほしい


──ダンス部で培った経験で、現在の芸能活動にも活きていると感じるのはどんなことですか?

できるだけ最大限の準備をしていこうっていう心がけには、ダンス部での経験がすごく活きているかもしれません。以前、コーチに「緊張するのは、準備ができてないからだよ」って言われたことがあって、本当にそうだなって思ったんです。オーディションのときも、ダンスの振付をそこまで落とし込めていないと、自信を持てないからつい後ろに下がっちゃうんです。反対に、バッチリ準備ができて自信があれば、「絶対受かってやる!」って目立つ服を着ていったり、目につくポジションをとったりする。これは今のお仕事にも通じていると感じています。それと、人と同じことをなぞるんじゃなくて、良いところは参考にしつつも、誰もやっていないようなことにチャレンジしたほうが絶対に注目してもらえるという考えも、部活で学べたことです。

──最後に、現在部活動を頑張る学生たちに、伊原さんからメッセージを送るとしたらどんなことを伝えたいですか?

それぞれ、いろんな状況や環境があると思いますが、部活はぜひ続けてほしいなって思っています。今、部活を離れたからこそ気づいたのが、同じことをやりたいと思う人が、同じ場所に集まって、莫大な時間をかけて同じ方向を目指して集中するのって、学生時代にしかできないんだろうなということ。それに、本音で言い合える友達って、部活以外で作るのがなかなか難しいと思うんです。普通、友達に対してちょっとでも「ん?」って思うことがあったとしたら、そっと距離を置くことだってできますよね。でも、部活の仲間だと欠点も受け入れて、ときにははっきりと「嫌だ」と伝えて、家族みたいな関係になっていく。そんな一生ものの仲間を作れるのは、部活ならではだと思います。

私自身、部活が大変で辞めたいって思ったこともあったのですけど、続けたからこそ達成できたことだったり、今につながっていることがめちゃくちゃあるんです。ありきたりな言葉かもしれないけど、「続けたらいいことあるよ」っていうのは本当なんだって、身を持って実感しました。高校3年間部活を頑張れたという自信はその後にもつながっていくと思うし、しんどくても、騙されたと思って続けてみてほしいです。


■プロフィール


伊原六花
1999年6月2日生まれ。大阪府出身。大阪府立登美丘高校ダンス部元キャプテン。高校卒業後は芸能活動を開始し、女優や歌手として活躍している。

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