世界一のシューター、ステフィン・カリーがシュートを外した少女に伝えたかったこと
2メートルを超える大男たちがコートを駆け回り、豪快なダンクシュートを決める。バスケットボールの最高峰、NBAと聞いてこんな場面を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。もちろん、これらのシーンはバスケットボールの醍醐味の一つですが、現在のNBAではスリーポイントシュートが主流になっていて、アウトサイドのシュートの正確性が試合の勝敗を大きく左右します。
これまでの常識を覆して、オフェンスのメインストリームを作ったのが、ゴールデンステート・ウォリアーズに所属するステフィン・カリー選手です。カリーはスリーポイントラインより遠く離れたエリアからでも、次々にシュートを沈めます。402本という1シーズンでのスリーポイント成功数をはじめとして、数々のNBA記録を保持。これまでにチームを3度のリーグ制覇へと導き、自身も2度のMVPに選ばれています。世界で一番シュートがうまい選手と言っても過言ではありません。しかし、カリーがここにたどり着くまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
泣きながら改造したシュートフォーム
NBA選手だった父の背中に憧れ、バスケットボールを始めたカリー少年。子どものころから非凡な才能を見せていましたが、その身体はプロを目指すにはあまりにも小さいものでした。高校に入学したころのカリーは、身長170センチ、体重60キロにも満たない小柄な体格で、あまりに非力のため腕を上げてシュートを打つことができませんでした。大学でプレーするには、シュートフォームを変えなければならない。カリーは父とともに、猛特訓を始めました。毎日、腕の力がなくなるまで泣きながらシュートを打ち続ける日々。この時に、世界NO.1シューターの基礎が築かれました。
高校を卒業するころには身長が180センチを超えて、カリーはチームを勝利へと導く活躍を続けていましたが、世間の彼を見る目はとても厳しいものでした。5段階の評価で、後にプロ入りする多くの選手が5つ星を獲得する中、カリーのそれは星3つ。進学を希望していた強豪大学からのオファーを一つも受けることはできず、地元の大学へと進みます。
度重なるけがとの闘い
良い指導者との出会いもあって順調にキャリアを積み上げたカリーは、大学で目覚ましい活躍を続けます。ドラフト会議ではウォリアーズから全体7位で指名され、念願のNBA入りを果たしました。しかし、この時点でも彼がプロの舞台でプレーすることに対して、懐疑的な声は消えていませんでした。「身体が小さすぎる」、「身体能力が足りない」。そんな評価を覆そうとカリーは奮闘しますが、何度も足首のけがに悩まされることになります。プロ入りから3年間は、シーズンを通してプレーすることはできませんでした。
4年目、懸命なリハビリによって一回り大きくなった身体とともに、カリーは遂に開花します。スリーポイントのリーグ記録を樹立すると、翌シーズンにはオールスターに初選出。その後の栄光は前述の通りです。カリーは自身の道のりについて、こう振り返ります。
「僕は身体が小さかったおかげで多くのことを学んだ。バスケットボールIQ、ボールハンドリング、クイックシュート。何かを成し遂げるために、誰かのまねをする必要はない。絶え間ない情熱と強い意志をもって努力し続けること。大切なことはそれだけなんだ」
大切なのはあきらめないこと
2018年のオフシーズン、都内にある小学校の体育館にカリーの姿がありました。日本の子どもたちと交流し、バスケットボールを教えるイベントの中でこんな場面が生まれます。
チームを代表して、フリースローに挑戦した一人の少女。しかし、2本、3本とシュートを放ってもゴールを決められません。少女がその場を離れようとした時、カリーが彼女を呼び止めてこんな言葉をかけました。
「僕も30年バスケットボールをプレーしているけど、すべてのシュートが入るわけじゃない。シュートが外れてしまうことは問題ない。大切なのは、シュートが入るまであきらめずに打ち続けることだよ」
カリーの言葉に勇気づけられた少女が放ったシュートは、ネットに吸い込まれます。会場から自然にわきあがる歓声と拍手。自分自身も多くの困難を乗り越えてきたからこそ、カリーはどうしても少女に伝えたかったのです。この時の様子は、以下の動画に収録されています。
アンダーアーマー「STEPHEN CURRY ASIA TOUR - SCHOOL VISIT」(画像をタップして動画を再生)
「カリーブランド」の誕生と決意
2020年12月1日、カリーはアンダーアーマーとともに「カリーブランド」を創設しました。これまでにもさまざまな慈善活動に取り組んできたカリーですが、「世界中の若者たちがスポーツを楽しむ機会を創出する」というミッションを明確にして、より具体的な活動をスタートさせることにしたのです。そして、このブランドの商品の売り上げの一部は、子どもたちが安全にスポーツを楽しむための場所をつくったり、コーチを育成したりするために投資されます。ブランド設立の目的について、カリーはこう説明します。
「10年以上にわたる地域での活動を通して、才能はどこにでもあるけど、機会はどこにでもあるわけではないことを学んだ。自分がやらなければならないのは、このギャップを埋めて、より平等な場をつくること。今の自分があるのは、子どものころにスポーツをしていたから。スポーツは若いアスリートに多くの大切なことを教えてくれる。だからカリーブランドを通じて、誰もがこれらのチャンスをつかめるよう、情熱を注いでいく」
生まれながらの才能だけではなく、信念と努力によって人生を切り拓いてきたカリー。そんな彼が、アンダーアーマーと一緒に商品の企画段階からつくりあげているのが、カリーブランドが送り出すアイテムです。ぜひ、以下のリンクからチェックしてみてください。
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