潮田玲子×藤井瑞希が語り合った「明日からもっとバドミントンが楽しくなる秘訣」
幼少期にバドミントンをはじめ、全日本総合選手権大会で5連覇、世界ランキングでは7位の戦績を残し「オグシオペア」としてバドミントン界の枠を超えた活躍をした潮田玲子さん。
そんな潮田玲子さんのトークショーがAlpen TOKYOにて行われた。
当日のサプライズとしてロンドン五輪銀メダリストの藤井瑞希さんがインタビュアーとして駆けつけた。プライベートも仲の良いお二人が語り合った、Alpen TOKYO潮田玲子×藤井瑞希トークショーとイベント後のインタビュー取材の模様をお届けします。
◆現役時代に、使い分けていたラケットの秘話
藤井:4月にオープンしたAlpen TOKYOですけれども、率直な印象はどう感じましたか
潮田:品揃えの豊富さが、本当にびっくりしました。地下2階から地上8階まで見させてもらいましたが、行きたいフロアがいっぱいあるんですよね。この規模感は、凄いですよね。欲しいアイテムもAlpen TOKYOに来ただけで全部が揃うっていうのは、非常に素晴らしいことですね。
藤井:このフロア(地下1階)を見てみても分かる通り、ラケットやシューズなど全部揃ってるんですけれど、各フロアに専門知識を持ったスタッフさんが全国から集まっています。
最初の質問になりますが、現役時代は、ラケットへのこだわりはありましたか?
潮田:一番こだわったのは、シングルスとダブルスでラケットを使い分けることでした。シングルのときは、振り抜けも良くて、ディフェンスもしやすいオールマイティーのラケットを使っていました。ダブルスのときは、振り抜きというよりもバランスを重視していたので重めにしていました。
藤井:ちなみに試合の時に、ラケットは何本持ってコートに入ってましたか?
潮田:現役時代は、6、7本持っていました。試合で折れちゃいますよね。あと、ストリングの張りも関係していました。本当に凄い繊細です。フェイントで思っていた場所と違うところに来て、ラケットが床に当たる瞬間に折れたりするぐらい繊細だったりしますからね。
藤井:本当にそうですよね。ストリングは、どのくらいで切れてましたか?
潮田:切れるのは早かったです。ダブルスをやっていたときは、割と細いケージのものを使っていたので。高反発を意識して、硬く張りたいっていうのがありました。太いと弾きが悪いので。
細めのストリングを硬く張って、弾きがいいのが好きだったんですよね。
藤井:やはり新しく張り替えたストリングの方が、パフォーマンスは絶対に上がりますよね。
ここAlpen TOKYOには、ヨネックスの最新型のストリンギングマシンが10台もあるそうです。国際大会の大会会場みたいですよね。
さて、国際大会と言えば、8月に世界選手権が日本で開催されます。世界のトップレベルの選手たちが集結しますが、それを迎え撃つ日本人選手に期待していることはありますか?
◆世界選手権で日本代表に期待している“リスクマネジメント”の重要性
潮田:昨年の東京オリンピックも、日本人選手の活躍が凄く期待されてメダルがひとつしか獲れなかった現実があります。個人的に「何が足りなかったんだろう?」って考えました。自分に置き換えてみると、自分もそうだったんですけど、リスクマネジメントをやっていなかったんです。
私の場合は、負けることを想像して練習をしていませんでした。
何故かというと、自分の良いイメージやコンビネーションでコートに入りたかったんです。負けるイメージしか湧かないときってやっぱり負けていたんですね。試合で恐怖心を感じたときって、相手に取られるとメンタル的に動揺してしまい、そこの準備が足りなかった。
でも、普段からリスクマネジメントをしていたら、「大丈夫、これは想定内」と気持ちを平常心で試合に臨めるんじゃないかな。東京五輪も最後勝ちきれなかったのは、そういうことも多少なりともあったんじゃないかな。詳しくは、分からないんですけど。自分の経験も踏まえて、そんなことを考えていましたね。
藤井:世界選手権は8月22日から始まり、決勝は8月28日。東京体育館で熱戦が繰り広げられます。また翌週にも大阪で「ダイハツヨネックスジャパンオープン」があります。2週連続で世界トップレベルのバドミントンが日本で楽しめますので、この機会に是非世界のトップに触れて、会場の盛り上がりを体感していただきたいですね。
あっという間の時間でしたが、今日のイベントはどうでしたか?
潮田:進行役がプライベートでも仲良しなので楽しくお話してあっという間に終わりました。たっぷりお話しましたが時間足りないね(笑)。会場にいらしてくださった皆さんありがとうございました。Alpen TOKYOはどのフロアも品揃えの豊富さに心躍りますね。また行こうと思います。今日は、ありがとうございました。
じゃんけん大会では、景品で世界選手権ペアチケット、バック2個、ラケット袋5個などが贈呈された。
潮田さんも藤井さんの心地良いトークに参加したお客さんも充実感が溢れる笑顔が印象的でした。イベントの最後には、皆さんで写真撮影を行いました。
イベント終了後には、アルペンマガジンによる潮田玲子さんと藤井瑞希さんの独占インタビューを実施しました。その模様もお届けします。
◆現役時代に意識していた“緊張との向き合い方”、“伸び悩んだときの練習法”
――アルペングループマガジンは、部活生にも多く見られているメディアです。高校時代のお話を伺いたいのですが、どのような練習をして選手として成長されたのですか?
潮田:私が高校生のとき、時間が本当になかったんです。朝早くから学校に行って、夕方まで授業を受けて、練習を夜8時半~9時までやり、2時間かけて電車で帰るみたいな。特に言われてることをこなすというのが部活動だったんですね。
でも、18歳で社会人になり練習の後に、居残り練習で自主練を凄くやるようになったんです。その時間が結構好きでした。自主練習ではネットの練習1時間、サーブだけ1時間みたいな感じで、今日は何の練習しようと楽しみでした。それを高校生のときから出来ていたら良かったと今感じますね。どうしても学生時代は、何か教えてもらってるって感覚が多いので、あんまり自発的にやるのが難しかったりすると思うんですよね。それを高校のときから出来てたら、絶対にプラスになります。
特に大人になればなるほど、自分で考えてやらなきゃいけないことがすごい増えるんですよ。技術的な部分だけではなくて、自分の生活や食事、オフの過ごし方など全て繋がってくるので。高校のときから習慣づけて自発的な取り組みが出来ていたら、良かったなって思いますね。
藤井:私が通っていた青森山田高校は、練習時間が短くて自由な時間が多かったですね。その空いた時間で何をやるかがとても重要だと思っていて。朝練も自由で、終わってからも2時間ぐらい自由な時間があったので、練習時間以外でどんな練習をして、自信をつけるかが凄いカギを握ると思っていて。
インターハイの前は、自分で足りないと感じたら毎日走ろうとか、練習以外の時間に自分で考えてやれたのが、青森山田だからこそっていうか。普通は、出来ないのでそれが良かったなと思いました。
――トークショーでは、ラケットのこだわりがありましたが、シューズへのこだわりはありますか?
潮田:私は正直いうとラケットよりシューズにこだわりがありました。理由はマメができやすくて。足裏にマメができると本当に動けないんです。社会人でやっていると技術よりもフットワークのほうが大事で、そうなるとこだわるのはシューズになるんです。
私は、とにかく床を感じたくない。床を感じる薄いシューズだと擦れちゃうじゃないですか。そうなると本当にマメができちゃう。とにかく分厚い、厚底のシューズを履いて床を感じたくなかったので、そんなシューズを選んでいました。それこそ、インソールもミリ単位で計って作ってもらっていました。インソールが違うだけで、全然怪我も違いますし、対応が全然違う。そんな感じでラケットよりもシューズやインソールにはとにかくこだわっていました。
藤井:私は、潮田さんとは逆で床を使いたいから、どれだけ薄くできるか。
厚底を履いてると、ひねりそうなイメージが強くて。それに、薄い方がマメができにくいんですよ。
なので、紙みたいな薄さがよくて、インソールも変えていませんでした。足袋に近い素足感覚が理想です。緊張したとき、浮き足立ってるとフットワークがままならなくなっちゃうのが怖くて。常に小指で地面を持ってます!って感覚が欲しかったので、薄ければ薄いほど良かったです。
――最後の質問になります。 お二人は、日本代表選手として大舞台を経験していますが、部活生たちに試合前の平常心の保ち方などアドバイスがあれば。あと伸び悩んでる学生プレーヤーたちにこんな気持ちの切り替えが良いというアドバイスもあれば。
潮田:私は、試合前の緊張のことで伝えたいことがあって。
緊張はみんな絶対するんですよ。でも、緊張が原因でパフォーマンスが落ちるのは駄目で、そのために私がやってことがあります。現役時代、ダッシュやジャンプをして心拍数をあえて180から200ぐらいまで上げていました。息をたくさんすると、人間は絶対に落ち着かせようと深い深呼吸が始まるんです。そうすると、緊張するときのドキドキ以上の心拍数が上がって基本的に落ち着きます。
あと緊張は決して悪いものではなくて、いい緊張感もあります。どうしても緊張を克服しようとするんですが、相手も緊張してるかもしれないし、それをエネルギーと捉えることも大事だと思います。
藤井:私が伸び悩んでいる学生にアドバイスできることは、「何をやればいいか迷ったときこそ、基本をしっかりやる」です。これは、自分が思ってるような調整や練習が出来なくて焦りを持ったときにコーチに言われた一言で、すごく大事にしていました。本番になったときに基礎レベルが上がっていればやりたいことがやれるっていう。
試合前に焦って、あれやりたいこれやりたいってイライラするんですけど、基本の技術を丁寧にしっかりやることを心がけました。伸び悩んでるなと思ったときは、基礎に戻って、しっかりと質やレベルを上げることが重要なのかなと思います。
◆潮田玲子プロフィール
公式Twitter https://twitter.com/Reishio
公式Instagram https://www.instagram.com/reikoshiota_official/
福岡県出身。幼い時からバドミントンを始め、小学生の時に全国小学生大会女子シングルスで全国3位入賞。中学校3年の時には全国中学生大会女子シングルスで初めて全国大会優勝。
その後は、女子ダブルスでペアを組んだ小椋久美子さんとのコンビ“オグシオ”ペアで、
女子ダブルス 全日本総合選手権大会を2004年から5年連続優勝、
2007年 世界選手権女子ダブルス銅メダル
2008年女子ダブルスで北京オリンピックに出場 5位入賞
2009年池田信太郎さんとのコンビ“イケシオ”ペアで全日本社会人大会 混合ダブルス優勝
2011年 全日本総合選手権大会 混合ダブルス優勝
2012年 混合ダブルスでロンドンオリンピックに出場、同年9月に現役を引退
2014年(公財)日本バドミントン協会 広報委員会のメンバーに就任
2021年一般社団法人Woman's ways 代表理事に就任。
◆藤井瑞希プロフィール
公式Twitter https://twitter.com/mizuking0805
公式Instagram https://www.instagram.com/bdmntnfujiimizuki/
熊本県出身。私立青森山田高等学校卒業後、ルネサスSKYに入社。高校3年時には1学年後輩の垣岩令佳さんとダブルスを組み、「フジカキ」ペアとして活躍。
2006年 全国高校総体で当時25年ぶりとなる3冠達成
2011年 ドイツオープン 女子ダブルス 優勝
2012年 ロンドンオリンピック 女子ダブルス 銀メダル
※日本バドミントン界史上初となるメダル獲得
2014年 ドイツ ブンデスリーガ参戦
2016年 イギリス ナショナルバドミントンリーグ参戦
2017年 再春館製薬所とスポンサー契約を結び「フジカキペア」を再結成
2019年 現役引退
2021年 あしきた親善大使就任
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