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other2023.05.24

ラグビー「リーグワン」に新時代到来!クボタスピアーズ船橋・東京ベイが初の日本一に!

リーグワン第2代王者に輝いたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ

新しい歴史が創られた。

ラグビー『リーグワン』のプレーオフトーナメント決勝が、5月20日に東京・国立競技場で行なわれた。4万1794人の観衆の前で対峙したのは、レギュラーシーズン1位の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)と、同2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)である。埼玉WKはリーグでもっとも失点が少なく、S東京ベイはリーグ最多得点を記録した。今シーズンのリーグ王者を決めるのにふさわしいカードとなった。

最初に得点機を得たのは埼玉WKだ。11分、SO松田力也がペナルティゴールを狙うが、ショットはゴールポストの右へ逸れてしまう。

一方のS東京ベイは、20分と26分にSOバーナード・フォーリーがペナルティゴールを決める。34分に埼玉WKにペナルティゴールを決められて3点差に詰め寄られるが、38分にもフォーリーがペナルティゴールを決め、前半を9対3で終了する。

後半開始直後にも、S東京ベイがペナルティゴールで12対3とする。じわじわと点差を広げていくが、後半18分に埼玉WKの堀江翔太にトライを奪われ、コンバージョンゴールも決められて12対10となる。さらに後半25分、トライを奪われて12対15と引っ繰り返される。


後半18分、埼玉WKの「ラスボス」堀江翔太がトライを決める


3月4日のレギュラーシーズン第10節も、同じような展開だった。S東京ベイは前半を12対10とリードして折り返しながら、後半開始早々にスコアを引っ繰り返された。最終的には15対30と突き放された。

この日は、違った。ハドルと呼ばれる相手のトライ後の円陣で、キャプテンのCTB立川理道は選手たちに言った。

「まだ時間はある。ここで無理をして戦術を変えると、相手の思うツボになる。無理して攻めるのではなく、点差ではなく時間帯をしっかりと見ながら、うまくゲームをコントロールしていこう」

この日のS東京ベイは、キックを効果的に使っていた。逆転するためにはボールを保持しながら攻めたいところだが、キャプテンは用意した戦術を貫くとの意思統一をはかる。

果たして、S東京ベイは後半29分にトライを奪い取る。

途中出場のSH藤原忍がボックスキックを蹴り上げると、落下地点にナンバー8のファウルア・マキシが猛然とチェイスする。ハイボールキャッチに優れる埼玉WKのFB野口竜司のバランスを崩すと、続けて飛び込んだウイング根塚洸雅がボールをキャッチしてゲインする。FW陣がサポートしたところで藤原がすかさずボールをピックアップし、左へ展開する。パスを受けたのは、立川だった。

「キャッチした瞬間は、誰かにパスするか自分でキャリーするかの判断だったんですけど、横を見たときに木田が手をあげていたので、いい判断ができたと思います。最初にキックのオプションはなくて、勝手に出たというか。藤原のボックスキックの精度とマキシと根塚のハイボールのコンテストが良くて、そこからボールをリサイクルするためにFWもハードワークしましたし、藤原もすぐにさばいてくれた。僕のキックまでの過程がすごく良かった。最後のところは木田がしっかりと、『自分にくれ』とオーラを出してくれました」

ウイングの木田晴斗は、レギュラーシーズンでリーグ2位の16トライをあげていた。実質1年目でチームの得点源となっていたが、この日は前半10分過ぎにトライ寸前まで持ち込みながらタッチへ弾き倒され、その衝撃でHIA(頭部外傷評価)となり一時退出した。既定の時間を消化してピッチに戻ったが、その後はチャンスが巡ってこないままこの場面を迎えていた。

「リーグ戦でも同じような場面があったので、とにかく大声出してハルさん!って呼びました」

5メートルラインでキックパスをキャッチした木田は、そのままインゴールに飛び込む。これで17対15、逆転のトライだ。24歳は力強くガッツポーズをした。

「自分に運がまわってきたな、運があったな、と思います」


逆転のトライを決めた木田晴斗が、ファンデンフィーファー(背番号15)に抱き抱えられて祝福される


残り時間はまだ10分ある。終盤に強い相手は「逆転の埼玉WK」と言われるが、S東京ベイは慌てることなく試合を進めていく。ラスト2分からは攻め続けて終了を告げるホーンを聞き、フォーリーがボールを蹴り出して試合を切る。埼玉WKの連覇を阻んだS東京ベイが、創部以来初の日本一に輝いたのだった。

埼玉WKのSH内田啓介は、「規律を守れなかったのがすべて。自分たちで崩れてしまったな、という印象です」と、ペナルティの多さを敗因にあげた。同じく埼玉WKの日本代表PR稲垣啓太も、「こういう決勝ではミスが命取りなんですね。ミスをいかに少なくするか。少なかったチームが勝つ。今日はスピアーズさんのほうがミスが少なく、自分たちのラグビーを徹底していた印象があります」と、勝者のラグビーを讃えた。

強みとする大型FWを生かして埼玉WKに圧力をかけ、ペナルティを誘う。リーグ得点王に輝いたフォーリーが、ペナルティゴールを確実に決めていく。そして、勝負どころで得点源の木田がトライを決める。S東京ベイは、自分たちのラグビーで埼玉WKを打ち破ったのだ。

「ホントに嬉しく思いますし、シーズンを締めくくる素晴らしいファイナルになったんじゃないかと思います。クボタスピアーズがやろうとしてきたラグビーができたというのはありますし、パナソニックさんのプレーも、ファンも、レフェリーも含めて、すごくレベルの高い試合ができたんじゃないかと思います。そのなかで勝ち切れたのは、すごく嬉しく思います」

胸のなかでゆっくりと広がっていく歓喜を、立川はゆっくりと口にした。S東京ベイがクラブの歴史はもちろん日本ラグビーの歴史に新たな歴史を創り、2022―23シーズンのリーグワンは幕を閉じた。


決勝戦に先駆けて行なわれた19日の3位決定戦では、レギュラーシーズン3位の東京サントリーサンゴリアス(以下東京SG)と、同4位の横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)が対戦した。

前半は東京SGの15対7で終わるが、後半6分のプレーが流れを変える。キヤノンがモールで押し込んでいくと、南アフリカ代表SHファフ・デクラークがボールを持ち出し、スペースへのショートキックを自らキャッチしてインゴールへ飛び込んだのだ。

このトライで12対15と3点差に迫り、後半17分にもトライを奪った横浜Eは、コンバージョンキックも決めて19対15と逆転する。しかし、同21分にトライを許し、再び19対20とリードされる。

シーソーゲームにピリオドを打ったのは、横浜EのSO田村優だった。後半26分、絶妙なキックパスを味方に通し、トライを演出したのである。19年のW杯で日本の8強入りに貢献した司令塔が、閃きと技術を見せつけた。

横浜Eは26対20で試合を締め、クラブ史上最高の3位に輝いた。12年のトップリーグ昇格後、8戦全敗だった東京SGから奪った初勝利は、クラブをひとつ上のステージへ押し上げるものとなった。

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