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other2023.06.02

【リーグワン22-23シーズン総括】クボタスピアーズ船橋・東京ベイが初優勝!!経験者の存在感とフレッシュなタレントの活躍も光った

優勝したS東京ベイの立川理道主将が、リーグワンの玉塚元一理事長から優勝トロフィーを授与される。左はルディケHC、右は木田晴斗。

埼玉ワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の独走を止めるのは、果たしてどのチームなのか──それが、2022―23シーズンの『ジャパンラグビーリーグワン ディビジョン1』の注目ポイントだった。

リーグワン初代王者に輝いた埼玉WKは、前身のトップリーグに続いて連覇中である。22年12月17日のシーズン開幕戦は昨季4位の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)との対戦で、22対19と際どく競り勝った。続く2節の静岡ブルーレヴズ戦(以下、静岡BR)は、後半40分に試合を引っ繰り返して15対14で勝利した。

埼玉WKは、日本代表に多くの選手を送り込んでいる。そして、ジェイミー・ジョセフHCが率いる代表チームが11月まで活動をしていたため、主力を交えての練習が限られていた。それゆえの苦戦でもあったのだが、ギリギリの勝負をモノにしていく勝負強さはさすがだった。

3季連続準優勝の東京サンゴリアス(以下、東京SG)は、開幕戦で同3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と激突した。田中澄憲新監督のもとでリスタートを切ったチームには、フランスのクレルモンからFB/WTB松島幸太朗が20年シーズン以来の復帰を果たしていた。

ただ、東京SGも日本代表選手が多く、シーズン前の準備は駆け足である。S東京ベイに18年ぶりの黒星を喫する黒星スタートとなった。

S東京ベイは、2節以降も白星を重ねていった。10節では9戦全勝の埼玉WKと、8勝1分の2位の立場で激突する。首位攻防戦はS東京ベイが前半リードで終えるものの、埼玉WKのSO山沢拓也がトライ、コンバージョンキック、ペナルティキック、ドロップゴールのすべてを決める「フルハウス」を達成。王者が30対15で勝利した。

埼玉WKは続く11節でも東京SGを退け、13節終了時点でプレーオフ進出を決めた。続く14節ではS東京ベイが、15節では東京SGがプレーオフ進出を果たす。

残るひとつの枠を争うのは、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)とBL東京だった。最終節を前にした順位は、横浜Eが勝点49の4位で、BL東京が勝点48の5位だった。勝点で並んだ場合は、勝利数の多いBL東京が上回る。

注目の最終節で、BL東京は埼玉WKと対戦した。埼玉WKは前節の静岡BR戦で、18年12月から続けてきた公式戦不敗記録が「47」でストップした。リーグワンでの不敗記録も「30」で止まった。

それでも、王者の壁は厚かった。BL東京はLOワーナー・ディアンズの欠場も響き、序盤から追いかける展開を強いられる。後半に3つのトライを決めるが点差を詰めきれず、22対34で終了の笛を聞く。BL東京は5位に終わった。

6位にはトヨタヴェルブリッツが入った。終盤の3連勝で8勝8敗の五分まで戻したものの、昨季の5位から順位をひとつ落とした。

また、巻き返しを期した昨季7位のコベルコ神戸スティーラーズは、トップリーグ時代を含めて過去最低の9位に沈んだ。

10位以下の3チームはディビジョン2のチームとの入れ替え戦に臨んだ。その結果、10位の三菱重工相模原ダイナボアーズ、12位(最下位)の花園近鉄ライナーズは残留を決めた。一方、11位のグリーンロケッツ東葛は、ディビジョン2で2位の三重ホンダヒートに敗れ、降格の憂き目となった。


MVPに選出されたS東京ベイの立川理道主将(右)


レギュラーシーズン上位4チームによるプレーオフトーナメントは、1位の埼玉WK対4位の横浜E、2位のS東京ベイ対3位の東京SGとなった。

5月13日に行なわれた埼玉WK対横浜Eの準決勝は、15対17で前半を折り返す。僅差で後半へ持ち込めば、「逆転の埼玉WK」の本領が発揮される。

後半開始直後のトライでスコアを引っ繰り返すと、SO松田力也が正確なキックで得点をツム重ねていく。終盤には途中出場の”ラスボス“堀江翔太が、インゴールへ飛び込む。途中出場のSO山沢のコンバージョンキックも決まり、51対20のスコアでまとめた。横浜Eは後半27分のCTBジェシー・クリエルのレッドカードが響いた。

翌14日のS東京ベイ対東京SGは、壮絶な死闘となった。

波乱含みの幕開けとなった。5分、東京SGのツイヘンドリックがハイタックルで退場処分を受けてしまう。東京SGは14人対15人での戦いを余儀なくされるが、「レギュラーシーズンで2敗した相手にしっかり勝つ」(松島幸太朗)との思いが、逆境を跳ねのける力となっていく。

前半を10対7のリードで終えた東京SGは、数的不利の状況ながら13対10、13対15、13対17とS東京ベイに食らいついていく。残り2分で13対24と9点差をつけられるものの、後半終了間際にSOアーロン・クルーデンがトライを決める。これで18対24だ。すでに終了のホーンは鳴っているが、残り時間はまだある。試合は継続される。

S東京ベイにボールを蹴り出されたら、その瞬間に試合は終了する。ボールを保持して前進するしかないなかで、東京SGは43分にトライを奪う。しかし、ペナルティがあったとして認められない。なおも試合は続き、86分にモールからインゴールへ押し込む。今度こそトライかと思われたが、TMOでグランディングが確認されなかった。S東京ベイがレギュラーシーズンに続いて東京SGを撃破し、クラブ史上初のファイナルへコマを進めた。

決勝に先駆けて行なわれた3位決定戦では、横浜Eが東京SGを26対20で下した。横浜Eの南アフリカ代表SHファフ・デクラークと天才司令塔・田村優が、高いクオリティを発揮してクラブ史上最高位の3位へチームを導いた。

20日に国立競技場で実現した埼玉WKとS東京ベイのファイナルは、S東京ベイの圧力が序盤から埼玉WKを追い詰めていく。ペナルティを誘うとSOバーナード・フォーリーがきっちりゴールを決め、一度は逆転されたものの得点源のWTB木田晴斗が再逆転のトライを決める。17対15で押し切り、クラブ初の日本一に輝いた(3位決定戦・決勝戦の詳細は別記事を参照)。


ベスト15に輝いた11人が表彰式に出席。後列左から稲垣啓太、オペティ・ヘル、ワーナー・ディアンズ、姫野和樹。前列左からファフ・デクラーク、バーナード・フォーリー、木田晴斗、尾崎晟也、長田智希、ディラン・ライリー、野口竜司


決勝戦翌日には出場終了後の表彰式「リーグワンアワード」が催された。MVPにはS東京ベイの立川理道主将が選ばれた。S東京ベイからはバーナード・フォーリーが得点王に、木田晴斗がベストラインブレーカーに、フラン・ルディケHCが優秀ヘッドコーチ賞に選出されている。

MVPの立川は「本当に嬉しく思います。自分ひとりの力ではなくチームメイト、オレンジアーミー(s東京ベイのファン)のみなさんのおかげで取れました」と、笑顔で喜びを語った。33歳の経験者は、シーズンを通して存在感を大いに発揮した。

最多トライゲッターは18トライを記録したWTB尾崎晟也(東京SG)が受賞した。新人賞はCTB長田智希(埼玉WK)、ベストキッカーは松田力也(埼玉WK)、ベストタックラーはハリー・ホッキングス(東京SG)と、上位チームの選手が個人表彰を独占している。

ベストフィフティーンには、優勝したS東京ベイから4人(HOマルコム・マークス、PR3オペティ・ヘル、SOバーナード・フォーリー、WTB木田晴斗)、準優勝の埼玉WKからも4人(PR1稲垣啓太、CTB長田智希、CTBディラン・ライリー、FB野口竜司)が選ばれた。

3位の横浜Eからは、SHファフ・デクラークが選出された。さらに4位の東京SGからはLOハリー・ホッキングスと、WTB尾崎晟也が受賞している。

5位のBL東京では、21歳の巨漢LOワーナー・ディアンズが初受賞した。6位のトヨタVからはFL姫野和樹、FLピーターステフ・デュトイが選ばれた。残るひとりは、静岡BRのクワッガ・スミスだ。


新人賞に輝いた長田智希


リーグワンは終了したが、今秋にラグビーワールドカップが開催される。5月24日には日本代表候補36人、日本代表10人が発表され、稲垣啓太、堀江翔太、坂手淳史(いずれも埼玉WK)、ワーナー・ディアンズ(BL東京)、姫野和樹(トヨタV)、FLリーチマイケル(BL東京)、SH齋藤直人(東京SG)、SO松田力也、CTB長田智希(いずれも埼玉WK)、WTB木田優斗(S東京ベイ)、FB/WTB松島幸太朗(東京SG)らが選出されている。ともにフレッシュなタレントである長田と木田は、リーグワンでの活躍を評価されて嬉しい初代表となった。

史上初のベスト8入りを果たした19年の躍進を、9月開幕のフランス大会で再び──選手たちの戦いは続く。

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