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other2024.03.06

パリ五輪へ視界良好!男子バスケ日本代表が公式戦2連勝を飾る

パリ五輪へ視界良好だ。

『FIBAアジアカップ 2025 予選 1次ラウンド Window1』の男子グアム代表戦、男子中国代表戦に臨んだバスケットボール男子日本代表が、2連勝を飾った。

今回は昨夏のW杯後初の実戦であり、NBAでプレーする渡邊雄太と八村塁、ネブラスカ大所属の富永啓生が合流していない。しかもBリーグがシーズン中で、準備期間も十分でなかった。

そうしたなかで、2月22日の対グアム戦は77対56で勝利した。リスタートとしては悪くないはずだが、河村勇輝は「自分たちが目指しているバスケットボールにはほど遠かった」と振り返った。前半を35対36で折り返すなど、内容に不満が残ったからだろう。パリ五輪を控え、選手たちは高い目線で自分たちを見つめているのだ。

グアム戦から3日後の25日、トム・ホーバスHC(ヘッドコーチ)が統べる日本は中国と激突した。FIBAアジアカップ(予選を含む)より上位レベルの公式戦(主要国際大会)で、1936年のベルリン五輪を最後に88年も勝利をつかめていない相手である。

試合会場の有明コロシアムは、日本のチームカラーの赤に染め上げられた。ホームの熱気が渦巻くなかで、日本は河村、比江島慎、馬場雄大、吉井裕鷹、ジョシュ・ホーキンソンがスターティング5に名を連ねた。

先制点を許した日本は、馬場が3ポイントシュートを決める。しかし、そこからは中国に連続して得点され、追いかける展開となっていく。

序盤の攻防について河村は、「自分たちのオフェンスの流れは作れていたと思うのですが、自分たちのシュートが入らずに、中国がしっかりと決め切っていた」と振り返る。井上宗一郎が3ポイントを連続して決めて14対14とし、終了間際には富樫勇樹も3ポイントを突き刺し、19対20の1点差で第1クォーターを終えた。

第2クォーターも馬場の3ポイントでスタートするが、22対30まで点差を広げられる。ここからホーキンソンが攻守に存在感を発揮し、テーブス海が価値ある得点を決める。一時は逆転に成功したものの、38対38の同点で前半を終了した。


スターティング5に名を連ねた河村勇輝選手


後半は比江島のレイアップシュートから、スコアが動いていく。ホーキンソンのフリースローと富樫の3ポイントシュートなどで、日本は55対46と9点差をつける。しかし、残り1分半から失点が続き、55対51でラスト10分間を迎えることとなった。

勝負の第4クォーターは、馬場のアグレッシブなプレーがスコアに反映されていく。その裏づけとなったのが、的確な状況判断だ。「前半のプレーを見た相手が3ポイントを警戒し始めたので、ペイントエリアの空間を見つけました。そこは自分が得意としているところで、ディフェンスの守りかたを見て冷静に判断できました」と馬場は言う。相手のファウルを誘発してフリースローを確実に沈めた背番号18が、リードを保つことに貢献した。

さらには河村が3ポイントを連続して決め、ホーキンソンがダンクを叩き込む。第3クォーター以降は一度もリードを許さず、76対73で中国を撃破した。

熱狂に包まれた有明コロシアムに、ホーキンソンの弾むような言葉が響く。

「素直に嬉しく思います。選手みんながステップアップして、勝ちをつかむことができた。2連勝で締めくくれて、ホントに嬉しいです」


ジョシュ・ホーキンソン選手は攻守に奮闘


パリ五輪を前にしたタイミングでの歴史的勝利は、間違いなく価値がある。両チーム最多の24得点を記録した馬場は、記者会見で素直な喜びを明かした。

「トムさんの最初の試合で負けた相手だったので、やり返すことができたのが僕としてはすごく嬉しくて。試合としてはチーム全員がフィジカルな試合ができたからこそ勝てた、と思っています。35分でも38分でもなく、40分やり切ったからこそ勝つことができた。チームの勝利だと思います」

キャプテンの富樫も、取材エリアで笑みをこぼした。

「トムさんの体制になって最初の2試合で、ボロボロに負けたのをすごく覚えている。そこから成長できたところを、みなさんに見せることができたと思います」

この日は12分40秒の出場で、8得点1アシストを記録した。自身のパフォーマンスについて問われると、表情に納得感がにじむ。

「第1クォーターも含めてチームに流れを持っていく意味では、控えから出る選手としてつなぐことはできた。そこはできたかなとは思います。正直決められたシュートもあったとは思いますけど、打つべきというか、チームで作ったシュートを打ち切ることができたので、流れのなかでいいバスケットができたかなと思います」

33歳のベテラン・比江島は、22分11秒のプレータイムで5得点2アシストのスコアを残した。「自分が出ている時間帯に流れをつかめたかというと、そういう手ごたえはあまりないです」と、自身のパフォーマンスには厳しい評価を下す。それでも、チームの出来には手ごたえを感じている。

「しっかり勝ち切ることができたのは良かったです。出だしは相手のリズムになったけど、そこからしっかり修正してというか、慌てることなく自分たちのペースへ持っていける。どんなシチュエーションでも対応できるのはW杯で自信を得て、やれている部分。しかも、誰が出てもリズムを作れるところに、成長を感じます」

自身のプレーに厳しい目を向けるのは、河村にも共通する。背番号5は27分20秒の出場で、12得点3アシストをマークした。

「個人的にはすごく反省の残る試合です。スタートとしてゲームの流れを作っていかないといけない部分で、相手にランされてしまったのはポイントガードとして責任を感じます。シュート精度も反省点です」

勝因を聞かれると、メンタルに触れた。ふたつのワードが出てきた。

「88年勝てていないなかで、中国が強いイメージがあったと思うんですけど、トムさんの体制に変わってから自分たちもW杯で結果を残すことができた。中国にも勝たなきゃいけないという強い信念とプライドというものが、プレーの一つひとつに結びついたかなと思うんです。チャレンジャー精神を持ちつつ、自分たちは強いんだというプライドも持って戦わないといけないと思います」

そうしたメンタルセットの先には、言うまでもなくパリ五輪がある。中国戦の第1クォーターを踏まえて、河村はこう話す。

「パリ五輪で戦う相手は、ホントに簡単じゃない。スタートからつねに自分たちの流れへ持っていけるような形は、作っていかないといけないです」

ホーバスHCも「高いクオリティのチームに勝利したことは、全員の自信を高めるもの」と勝利を評価する。そのうえで、課題をあげることも忘れない。

「今日は3ポイントの成功率が34パーセント。これは、まだまだ足りない。パリ五輪の目標はベスト8へ行くことなので、40パーセントまでいかないと。そこのパーセンテージは上げたい」


馬場雄大選手は両チーム最多の24得点を記録


中国撃破の立役者となった馬場は、落ち着いた口調で話した。

「こういう試合で自分のプレーを表現するために、トムHCと練習をしてきたし、Bリーグに入ってからも練習してきました。パリ五輪でもさらに磨きをかけた自分を、披露できたらと思います」

キャプテンの富樫も、高い視座から語る。

「アジアで当たり前のように勝てるようになって、世界と戦っていけるようになるのがいまの目標です。高いところを目ざしていきたいと思います」

次の活動は6月の国際強化試合の予定だ。ホーバスHCは「試合が終わってからみんなにも言ったけれど、今日のメンバーは絶対にまた代表合宿に呼びます」と、選手たちのパフォーマンスを讃えた。パリ五輪のロースター入りをめぐる競争は激しさを増していき、それが、チームの可能性を高めていく。


注)FIBAアジアカップ2025の予選1次ラウンドは4チームずつ6グループで争われ、日本は中国、グアム、モンゴルと同グループに。各グループの上位 2 チームが出場を確定。3位チームは2次ラウンドで 2グループに分かれて総当たり戦を行ない、 各グループ上位 2チームが出場権を得る。

Window1の2試合を経て、日本は連勝で首位。2位は1勝1敗の中国、3位は1勝1敗のグアム、4位は連敗のモンゴルとなっている(2位と3位の順位はポイントディファレンスによる)。

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