茂木健一郎(脳科学者)がアシックス『GT-2000 7』を語る「安定感とフィット感が優れているので楽しく走ることができる」
多くのランナーの走りを快適にするために、安定性などの機能を向上させて新登場したアシックスのランニングシューズ「GT-2000 7」。この「GT-2000 7」を履いて走った茂木健一郎氏は、脳科学の視点で一体何を語ったのだろうか?
――ランニングを、いつ始めましたか?
茂木:小学生の時に突然思い付いて、校庭にあるトラックを2、3周走ったんですよね。それからずっと走っていますよ。
私は普段かなり走っているので、近所では「走るおじさん」として有名です。最近はバッグにランニングシューズを入れて、世界中何処へ行っても走っていますね。
――「GT-2000 7」を履いて走ってみて、いかがでしたか?
茂木:まず、アシックスの社名の頭文字は「Anima Sana in Corpore Sano」と言い、「もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神あれかし、と祈るべきだ」となります。創業理念が「ランニングやスポーツをすることで、体が整って心が健康になる」ということなので素晴らしいと思います。
「GT-2000 7」は、かなり良いランニングシューズですね。安定感とフィット感が優れているので楽しく走ることができると思います。走っていてもクッションによって足への負担を感じにくく、足が捻れにくい構造になっているのが面白いですよね。これを履いて10km以上の距離を走ってみると、より効果を感じることができるはずです。
――ランニング中に、怪我をしたことはありましたか?
茂木:過去に、坂道やラフなところを走って足首を捻って痛めたことがありました。多くのランナーが足の内倒れによって怪我をするみたいですね。ソール裏にある2本の硬いライン(樹脂製の硬いトラスティック) が安定性を高めてくれるので、倒れるのを抑制してくれるとのことです。
ランニングをする際に、怪我だけには気を付けてほしいですね。有森裕子さんから、「靴は唯一1番大事な道具だから、きちんと靴選びをした方が良い」とアドバイスを受けたことがあります。
――脳科学の視点で、「GT-2000 7」について語れることはありますか?
茂木:そうですね。脳科学の言葉で言いますと、道具は体の延長線上にあるものとなります。履いていることを意識しない、足の一部となる「GT-2000 7」のようなシューズが良いですよね。脳内で身体イメージを作る所では、自分と一体化したものは体の延長として神経細胞が表現しています。「GT-2000 7」を実際に履いて走ることで、体の延長であることを体感できるはずです。
ドットとドットを結び付けて新しいひらめきを生み出す回路ディフォルト・モード・ネットワークは、走ることで脳が活性化されるというデータが出ています。ディフォルト・モード・ネットワークは、脳がアイドリングしている時に、情報を整理して記憶を定着させたり、ストレスを解消させたり、感情の歪みを除去させたりします。
現代人は、常にスマホをいじっていますよね。走っていればスマホをいじらなくなるので、強制的にディフォルト・モード・ネットワークが働く状況を作り出すことができます。
――茂木さんは、音楽を聴きながら走りますか?
茂木:走る時は、基本的に外で鳥の声を聴いたりしながら走っています。ディフォルト・モード・ネットワークを考えると、音楽を聴かないか、または気にならない程度のものを聴くのが良いのかなと思います。
――普段、何km走りますか?
茂木:私は1日に時間があれば、10km走るのを習慣化しています。その間に、経験したことや気持ちを整理したり、研究や仕事でのアイディアのひらめきが起きたりするんですよね。
時間がないときは、200m走るだけでもリフレッシュできますね。素敵なファッションで走っている方が増えていますが、走る際の格好はジーンズでも何でも良いと思いますよ。ランニングは、シューズ1足あれば走ることができるスポーツですからね。
――ランニングは、人間にとって相応しいスポーツなのですね。
茂木:人間は進化の過程で、他の動物よりも走るスピードが遅かったと言われています。ですが、獲物を2、3日も追い続けて、他動物が諦めた時に捕まえていたんですよね。人間は意外と長距離走に向いているみたいです。
――走ることは健康に良いと考えられますか?
茂木:私はストレスが全くなく、10年近く病院に行っていませんし、人間ドックでも健康体です。健康なのは、走っているからだと思います。
僕の周りでは、走り始めたことによってコンディションが改善された人達が多いですね。最近、脳と体が一体化されていることが分かってきたので、心の調子が悪いと思っている時に体も調子が悪かったりします。走ることによって体のコンディションが整うと、心の方も整います。走ることは脳科学者として当たり前のたしなみなので、私は走り続けます。脳科学者は、走るものである、と。
マラソンなど、定期的に運動をする人が増えれば認知症は減ります。アンチエイジングを実現する意味でも、ランニング人口をもっと増やして、多くの方に健康で長生きしてほしいですね。ランニングによって、グリット(やり抜く力)が付き、人生観が変わります。私はランニングと仕事によって、グリットを磨いてきました。
――1人で走る派ですか?仲間と走る派ですか?
茂木:普段は、1人で走っています。何人かで走るとペースを気にしてしまうんですよね。一緒に走ることで、モチベーションが上がる人もいますよね。
――東京マラソンに出場してみて、いかがでしたか?
茂木:東京マラソンの場合は、常に周りに人がいるので全然気にならなかったです。仮装している人達は偉いと思います。ただでさえ走るのが大変なのに、着ぐるみを着て走るわけですから本当に尊敬しています。
小出義雄先生の本を読んで、「前半を抑え気味で走る」ということを知りました。マラソンの30km地点まで遅いと思えるくらいに走ると、本当に完走できたので嬉しかったですね。
――2019年の東京マラソンにも出場されるのですね。
茂木:2019年の東京マラソンにチャリティ枠で出場するので、無事に完走できれば良いですね。マラソンを1年に1回走ることで、「今年も無事に過ごせたな」と思うので、目標タイムはありません。
東京マラソンでは、沿道からの応援がずっとあるのが嬉しいですし、外国の方が増えて国際色豊かでもあります。マラソンには、苦しいことを一緒に乗り越えていくという一体感があります。
――最後に、ランニングを続けるためのアドバイスをお願いします。
茂木:走り始めるには、きっかけが大事だと思います。いきなり10kmだと無理なので、始めは家の近くのコンビニまで走るだけでも十分です。3日坊主でも良いと思いますよ。例え3日しか続かなかったとしても、また3日を続ければ良いわけですから。1年に3日坊主を50回もやれば150回も走ったことになるので、続いているようなものですよね。