ランナーを悩ませる足の痛み。代表的な「足底腱膜炎・アキレス腱炎・シンスプリント」について、鳥居俊先生( 早稲田大学スポーツ科学学術院准教授・整形外科医)が徹底解説!
多くのランナーを悩ませる足の痛みで、「(1)足底腱膜炎(2)アキレス腱炎(3)シンスプリント」が代表的な障害として挙げられる。これらがどのようにして起こるのだろうか?鳥居俊先生(早稲田大学スポーツ科学学術院准教授・整形外科医)に、怪我の原因・治療法・予防法などについて詳しく教えていただいた。
――その(1) 足底腱膜炎とは
鳥居:足底腱膜炎は、市民ランナーに多い怪我ですね。かかとに近い足の裏が痛いと感じたら、まず足底腱膜炎が考えられます。足底腱膜は、足の裏の骨格・アーチを支える非常に頑丈なコラーゲンのバンドで、繰り返し走ることによって引き伸ばされます。バンドの一部が傷ついた結果、炎症を起こし腫れ痛みが生じます。
――痛みが酷い場合には手術が必要
鳥居:超音波やMRIの画像診断によって損傷度合を見ることができます。バンドが大きく切れると、完治するまでに数ヶ月かかることもあります。痛みが消えて傷が修復されたことで、完治したことになります。長期化する場合や、痛みが強い場合には手術を要するので、傷を修復しやすい状態に整えることが大事ですね。
――治すためにやるべきこと
鳥居:激しいトレーニングをすれば、小さな傷ができます。痛みがある場合には、休むなどして傷を修復しなければなりません。ランナーは、少し痛むなどのサインを感じるはずです。そのサインを無視すれば大きな傷となって、治るまでに時間がかかりますから注意をしてほしいですね。
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鳥居:傷が広がらないようにテーピングで抑えて、足裏にかかる負担を減らす必要があります。また、インソールや機能性ソックスでアーチをサポート(保護)することが効果的となりますね。治すためには、腱膜の細胞がコラーゲンを作って修復できる状態にしなければなりません。
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鳥居:こちらは、アーチをサポートするソックスとなります。テーピングの働きをソックスの中にもたらしています。サイズとパターンで、自分に合うものを使用してほしいですね。
――その(2) アキレス腱炎とは
鳥居:原因は様々ですが、アキレス腱自体が傷つくものとなります。足底腱膜炎と同じように腱のコラーゲンに傷ができるので、アイシングなどで一時的に痛みが軽くなっても治ったことにはなりません。足底腱膜炎と同様に、傷を修復する必要があります。
――アキレス腱の周囲の炎症にも注意
鳥居:アキレス腱の周囲が摩擦を繰り返すと、腫れたり水が溜ります。周囲炎の場合は、炎症が引けば治ります。
――速いスピードで走る危険性
鳥居:速いスピードで沢山走ればアキレス腱が強い力で引っ張られるので、アキレス腱の周囲や腱自体を痛めてしまいます。特に、トップランナーのアキレス腱のトラブルは多いですし、短距離・中距離やサッカー選手にも多いですよね。
――アキレス腱は切れてしまう
鳥居:大きな一撃の力によってアキレス腱が切れる場合があります。一昨年の陸上日本選手権で、アキレス腱障害のある200m女子の選手がゴールまで数十mの所でスピードを上げようとした時に、アキレス腱が切れてパタッと倒れました。昨年は、ウォーミングアップ中にスピードを上げて切れてしまった選手もいましたね。
――治すためにやるべきこと
鳥居:摩擦によって炎症が起こるわけですから、その摩擦を減らすために走る量を少なくする必要があります。また、走り方や足の形に問題があるケースもあります。つま先から着地をするランニングをしていると、かかとを使わない分アキレス腱に強い力がかかり怪我にも繋がります。
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鳥居:アキレス腱に痛みがある場合に、テーピングで支えたりサポーターで保護をする必要がありますね。サポーター着けることによって、横ブレをコントロールすることができます。かかととアキレス腱へのストレスを軽減します。
――アキレス腱の付着部の炎症にも注意
鳥居:シューズのかかと部が内側に入り込んだ状態でかかとを抑えつけて走った結果、アキレス腱を痛めてしまったランナーがいました。
柔らかいアキレス腱と硬いかかとの骨との間に摩擦が起これば、アキレス腱に傷がついて腱と骨との付着部に炎症が生じます。アキレス腱と骨との間にある滑液包が腫れて水が溜まり、その状態が酷くなると腱に傷がつきます。
――治すためにやるべきこと
鳥居:滑液胞の腫れだけであれば、それを引かせる治療をしていきます。腱に傷がつけば、修復が必要となりますね。腱はトレーニングによってあまり強化できないですが、修復されることで太くなります。
シューズはフィットするものを履くべきです。かかとがシューズに当たると感じたら、足に合っていないことになります。痛みがあればどのようなシューズを履いても痛くなるので、かかと部を切り取って練習している選手もいます。ただし切ってしまうと、支えが弱くなってスピードを出せなくなります。
――その(3) シンスプリントとは
鳥居:スネの内側に沿って広範囲に痛みがある状態をシンスプリントと言い、スネの後ろ側に起こりやすいですね。スネと筋肉の間にある広い筋膜が、走っている時に繰り返し引っ張られることによって傷つきます。運動量が増えた時に起こしやすいので注意が必要です。
似た怪我では疲労骨折があります。スネの骨の中に傷ができたものが疲労骨折となり、シンスプリントとは別物です。
――その(3) シンスプリントとは
鳥居:スネの内側に沿って広範囲に痛みがある状態をシンスプリントと言い、スネの後ろ側に起こりやすいですね。スネと筋肉の間にある広い筋膜が、走っている時に繰り返し引っ張られることによって傷つきます。運動量が増えた時に起こしやすいので注意が必要です。
似た怪我では疲労骨折があります。スネの骨の中に傷ができたものが疲労骨折となり、シンスプリントとは別物です。
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鳥居:筋膜の引っ張りや横ブレの動きを減らす必要があるので、ふくらはぎをテーピングやサポーターで支えます。このパッドで筋肉の付着部分をサポートします。筋肉が後ろ側にグッと膨らむのも抑える効果もあります。
ザムスト フットクラフト スタンダード
鳥居:足が内側に倒れ込まないように、インソールを入れてバランスを整えることも良いと思います。