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running2019.01.14

ランナーを1番悩ませる膝の痛み「膝蓋腱炎・腸脛靭帯炎・鵞足炎」について、鳥居俊先生( 早稲田大学スポーツ科学学術院准教授・整形外科医)が徹底解説!

膝の悩みを抱えるランナーは最も多い。前回に引き続き、鳥居俊先生(早稲田大学スポーツ科学学術院准教授・整形外科医)に、膝の痛みの代表格「(4)膝蓋腱炎 (5)腸脛靱帯炎 (6)鵞足炎」の原因・治療法・予防法などについて詳しく教えていただいた。
 

[ランナーを悩ませる足の痛み。代表的な「足底腱膜炎・アキレス腱炎・シンスプリント」について、鳥居俊先生が徹底解説!は こちら ]
 

――多くのランナーが膝の障害に悩まされている
鳥居:1979年、日本で初めて市民ランナーの障害の調査が行われました。ランナーに1番多い障害が膝で、全体の40%以上もありました。そこで我々も5年前から独自に市民ランナーへの調査を始たところ、やはり圧倒的に多いのが膝でした。

――その(4)膝蓋腱炎とは
鳥居:膝の痛みは、大きく膝の下・外・内と分けることができます。膝の下が痛い人の多くは、お皿部分にある膝蓋腱のコラーゲンが傷ついている可能性があります。この膝蓋腱炎は別名でジャンパー膝と言われ、競技でジャンプをする選手たちに非常に多いですね。

ランニングにおいても大腿四頭筋を使い過ぎると膝蓋腱が繰り返して引っ張られます。コラーゲンのバンドに傷がついたものが膝蓋腱炎となります。

――治すためにやるべきこと
鳥居:大腿四頭筋が疲労によって伸びなくなった時に、衝撃吸収によって膝蓋腱が引き伸ばされて最終的には切れてしまいます。大腿四頭筋の柔軟性をしっかりと戻して伸びるように回復させなければなりません。

また大腿四頭筋に頼る走り方ではなく、後ろ側のハムストリングを使えるようにする必要があります。走る動きを考えると前に進むわけですが、足を後ろに引くような動きであれば膝に負担がかかりにくくなります。

ザムスト RK-2

膝蓋腱への負担を軽減するために膝の下(腱)をパッドで抑えることによって、膝蓋腱が引っ張られ過ぎないようになります。また左右に支柱(ステー)があり、膝全体を支えることによって横ブレも防止できます。

――その(5)腸脛靱帯炎とは
鳥居:膝の外側が痛いのであれば、腸脛靱帯炎(別名:ランナー膝)が考えられます。腸脛靱帯は変わった組織でして、骨盤から大腿骨を通って膝の外側に下ろした薄い膜となり、大腿部の筋肉を抑える役割を果たしています。腸脛靱帯炎は、その膜が膝の出ている所で擦れ続けたり、強く擦れることによって痛みが生じます。練習量や横ブレが大きくなると、痛めやすくなります。

トップランナーでも疲れてくると、横ブレによって腸脛靱帯炎になります。先日の夏合宿で痛めたランナーが結構いましたからね。

――治すためにやるべきこと
鳥居:腸脛靱帯の膜自体は、頑丈なものではありません。膝の骨の出っ張りと腸脛靱帯の間に滑液包というクッションがあります。滑液包が腫れ上がったら、炎症を引かせなければなりません。

擦れを減らし、内転筋・お尻の筋肉・体幹を鍛えて横ブレしにくいランニングをしてほしいですね。スピードを上げると横ブレしやすくなるので、ゆっくり走るのも良いと思います。スクワットをやる時も、鏡の前で横ブレしないのを確認しながらやってほしいです。膝が横にブレることによって痛めてしまいますから。

ザムスト RK-1

横ブレに関しては、内側と外側に支柱が入ったサポーターを着けることをお勧めします。さらにこのサポーターは、膝の内旋を抑えるように設計されているので、腸脛靭帯炎のリスクファクターは減少すると考えられます。

――その(7) 鵞足炎とは
鳥居:膝蓋腱炎と腸脛靭帯炎の2つと比べますと、鵞足炎になる頻度は少ないといえます。鵞足とはガチョウの足と書き、主な原因はハムストリング内側の腱の炎症です。発生箇所はハムストリング2本と内転筋1本が集まる箇所で、腱同士と骨との間で起こる摩擦によって炎症を起こしてしまいます。

内側への横ブレやX脚の人が痛めやすいのが特徴です。ハムストリングが疲れによって伸びなければ、緊張が上がってより擦れやすくなりますね。

――治すためにやるべきこと
鳥居:筋肉疲労を回復させて柔軟性を増やす必要があります。横ブレに関しては、股関節周辺のトレーニングや体幹トレーニングが有効となります。

ザムスト フットクラフト スタンダード

鳥居:生まれつきX脚の方がインソールを入れることにより、走る際に腱が引っ張られ過ぎるのを抑えることができると思います。

ザムストEK-3

鳥居:膝の横ブレを制御するサポーターが有効です。さらにこのサポータは膝全体のぐらつきを抑えるため、鵞足炎以外の膝のトラブルなど幅広く使えると思います。

――痛めたら、まずはアイシングを
鳥居:痛めた直後にアイシングをするのが有効となります。氷と水であれば基本的に0度なので効果があります。時間の目安は1回5~10分で、感覚がなくなってきたら止めるべきです。一旦止めて感覚が戻ってきたら再び行うようにしてください。理想は3セットで、それ以上続けると凍傷になる可能性もあるので注意しましょう。

――アイシングでは治らない
鳥居:痛みがある場合にはアイシングにより腫れや出血を抑えることはできますが、それだけでは治りません。あくまでコラーゲンが細胞を作ることによって修復されるので、それまでは時間がかかります。

――職業ランナーの悩み
鳥居:ランナーは傷があっても、ある程度走ることができれば練習を続けてしまいます。特に走ることを職業にしているランナーたちは、なかなか休めないですからね。治療しながらでも走っていれば、必然と傷は大きくなります。少し力を入れただけで大怪我につながるケースもあるのでしっかりとした治療が大切です。

――長距離を走るためには筋力が必要
鳥居:長い距離を走っていると、大腿部に疲労が溜まり痛みが生じて足が上がらなくなってきます。スクワットなどで足の筋トレをする人がいますが、腰や股関節周りの筋力が弱いために足を痛める場合もあります。

重心を正しい位置に乗せて走ることができるように、体の中枢側の腰や股関節周りの筋肉を鍛えて使えるようにしてほしいですね。トップランナーでも体幹が弱く横ブレする選手も多くいますが、体幹トレーニングなどによってバランスを整える対策などにより改善できています。

――最後に、怪我が多い時期について
鳥居:ランナーの怪我は春先に多い。冬場は体温が上がらないと筋肉の組織が伸びにくいので切れやすくなりますが、寒いので入念にウォーミングアップを行います。そのため冬に怪我は起こりにくいです。だんだん暖かくなってきた春先でレースが始まった頃に、痛めてしまうケースが圧倒的に多いです。気温そのものよりも、ランニングに対する準備によって変わってきます。

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