『時間がない方の効率的なトレーニング方法を考える』Think on the RUN ―走りながら考える― vol.5
社会人ランナーの悩みの多くは「時間がない」こと。ここでは「時間がない」ことについて深く言及するつもりはありませんが、仕事やプライベート、家族との時間を調整し、継続的にトレーニングを行うことは簡単ではありません。また、コロナ禍でレースの多くが中止され、トレーニングを続けるモチベーションが下がる一方という方も多いと思います。
目標設定の大切さは本稿初回でもお伝えさせていただきましたが「現実的な目標設定」をどのように設定すればいいのか?今回はそのアプローチについて少し考えてみたいと思います。
「1kmを〇〇分のイーブンペースで走ればマラソンで何時間を切れます」、という当たり前の言葉を耳にする機会は多いと思います。トレーニングバイブルやマラソンの解説などランニングでよくあるコミュニケーションの一つです。しかしながらトップ選手のレースを観戦していてもそんな走り方をする選手を目の当たりにすることは少ないと思います。
人間は機械ではないですし、ロードを走るマラソンコースは平坦でもなく、風や気温、湿度など自然との戦いでもあります。そういった意味でも日々のトレーニングでは常に自分の体と向き合い、目標達成に向けて改善ポイントを明確にし、限られた時間の中で行う以上、効果的なトレーニング内容を考えたいですよね。とくに高温多湿のこれからの季節は、冬場に行うトレーニングと同じコース、同じペースで走ったとしても当然ながらトレーニング強度が異なります。
これらを客観的に分析するには心拍数(脈拍数)が計測できるGPSウオッチなどを活用し、トレーニング中及びトレーニング後に解析ツールでご自身のパフォーマンスを分析することをお勧めします。また、安静時の心拍数と最大心拍数(厳密に計ろうとするとかなり大変ですが)を知っておけば、トレーニングのコースやレイアウトに関係なく、効率的なトレーニングを行うことができると思います。
一般的にトレーニング理論には、いくつかの「原理と原則」がありますが、その中でも皆さんに是非考えていただきたいのは、人はそれぞれ特性が違うので自分に合ったトレーニングを行うこと、すなわち「個別性の原則」に従ってトレーニングをすることが肝要だということです。
私は「時間がない」社会人ランナーには、トップ選手が行うようなグループで行う集団走よりも、自分と向き合い、目標に向けて効率的なトレーニングを継続的に行うことの方がパフォーマンス向上に繋がるのではないかと考えます。私もかつては仲間とトレーニングを一緒に行うことがありましたが、この15年ぐらいは一人でトレーニングを行ってきました。それはやはり「時間がない」ことと、オーバーワークで怪我をすることが多かったことが最大の理由でした。レースペースでのトレーニングを一人で行うことは大変ですが、あらゆる場面を想定し行うトレーニングはマラソントレーニングならではの醍醐味があると思います。
皆さんも「1kmを〇分ペースで〇〇kmを走りました」というトレーニングから「1分間の心拍数が〇〇○拍で〇〇分走りました」という効率的且つ効果的なトレーニングへ発想の転換をしてみてはいかがでしょうか?きっと新たは発見と「現実的な目標設定」を見つけるヒントがあると思います。
■Profile
横山 順一
年齢: 51歳
ランニング歴: 39年
國學院大學卒業(1992年)
#junike0708
略歴
中学より陸上競技を始める。800m, 1,500m, 4×400mRを専門とする一方、大学では箱根駅伝予選会にも4年連続出場。マラソンは社会人になった20歳代後半から現在に至る。
外資系スポーツメーカーなどに勤務後、現在はコンサルティング会社にてターンアラウンドスペシャリストとして経営コンサルティング、企業・ブランドのブランディングなどを従事。
自己ベスト
フルマラソン: 2時間26分55秒
ハーフマラソン: 1時間08分50秒
主な出場レース
東京マラソン、福岡国際マラソン、びわ湖毎日マラソン、別府大分毎日マラソン
ニューヨークシティマラソン、ゴールドコーストマラソン、ホノルルマラソン、バンクーバーマラソン