フリーワード検索

running2021.09.27

『薄底シューズについて考える』Think on the RUN ―走りながら考える― vol.13

2017年以降レーシングシューズは「厚底シューズ」が代名詞となりました。ご存知の通り、それまでの日本のレーシングシューズは「薄底シューズ」が主流で、それは日本のランナーに履き続けられた歴史であり、常にマーケットのトレンドでもありました。そんな「薄底シューズ」も昨今ではほとんど語られなくなりマーケットでも影を潜めています。それではこの先マーケットから消えてしまうのか?といえば、決してそんなことはないように感じています。今回は敢えて「薄底シューズ」について考えてみたいと思います。



「厚底シューズ」登場以前にテレビ画面に映し出されるトップアスリートの足元は誰もが「薄底シューズ」でした。皆さんもそんな光景をご覧になられては、色々なシューズを試されてきたのではないでしょうか?一方、トレーニング時はどうだったのかといえば、硬い路面で走るロードでのトレーニングなどを中心に怪我をするリスクが高いことなどからクッション性の高い厚底のトレーニングシューズを着用する機会が多かったように思います。それでは何故「厚底シューズ」なのか?といえば、そのリスク回避であるミッドソールのクッションとカーボンシャンクに代表される反発、ランニングエコノミー(効率)を上げるために設計されたツーリング(ソール部)のハイブリッド構造が多くのランナーに支持され、世界中のランナーのパフォーマンス向上に貢献しているのが理由だと考えます。一方であまり語られていないツーリングの特長の一つにオフセット(ドロップ)があります。これはソールの前足部と踵部の厚みの差のことを指しますが、「厚底シューズ」は厚底と呼ばれるだけにソールの厚みはあるものの、そのオフセットは従来の「薄底シューズ」とあまり変わらない設定となっているシューズもあり、最初は多少の違和感があるものの、馴染みあるオフセットバランスなので、履きこなすテクニックさえ身につけてしまえば、克服に難しくないと感じるランナーが多いことも事実だと思います。

それではこの先「薄底シューズ」は必要ないのか?ということになりますが、日本のマーケットではこの先も一定数の需要があり、共存するのではないかと考えます。それは当然のことながら「厚底シューズ」が合わないランナーがいらっしゃるでしょうし、トラックでのトレーニングが中心の学生やスプリンターのトレーニング用としても幅広く使用されると思います。また、本来の目的とは少し違いますが、素足の延長線上の感覚で着用できるので、フォームの見直しの際に着用するのもいいかもしれません。一般的に着地の際、体重の3倍の衝撃がかかると言われていますが、その衝撃とストレスが掛かる箇所を分析し、効率的な動作を「薄底シューズ」で習得できれば「厚底シューズ」での更なるパフォーマンス向上にも期待できるのではないかと考えます。

日本の伝統や文化を分析してみると、理にかなった習慣がとても多いように思います。日本人の骨格や体型などを考慮されながら進化してきた「薄底シューズ」も同様で、この先も使い方がきっとあると思いますし、「厚底シューズ」と併用することにより気がつくことや課題が明確になることも沢山あると思います。走りのバランスを崩されている方や「厚底シューズ」に頼りがちでパフォーマンスが停滞している方などは定期的に「薄底シューズ」を着用し、ご自身の走り原点と現状を見つめ直すこともいいかもしれません。本来の使用目的からは少し外れることになるかもしれませんが「薄底シューズ」にはまだ色々な可能性が秘められていると思いますし、今後も日本のマーケットからはなくしてはならない大切な商品だと考えます。



 

■Profile

横山 順一

年齢: 51歳

ランニング歴: 39年

國學院大學卒業(1992年)

#junike0708


略歴

中学より陸上競技を始める。800m, 1,500m, 4×400mRを専門とする一方、大学では箱根駅伝予選会にも4年連続出場。マラソンは社会人になった20歳代後半から現在に至る。

外資系スポーツメーカーなどに勤務後、現在はコンサルティング会社にてターンアラウンドスペシャリストとして経営コンサルティング、企業・ブランドのブランディングなどを従事。


自己ベスト

フルマラソン: 2時間26分55秒

ハーフマラソン: 1時間08分50秒


主な出場レース

東京マラソン、福岡国際マラソン、びわ湖毎日マラソン、別府大分毎日マラソン

ニューヨークシティマラソン、ゴールドコーストマラソン、ホノルルマラソン、バンクーバーマラソン

BUY NOW

SEARCH フリーワード検索