FRESH FOAM X 880 v12 | ランニングシューズにおける定番商品とは? Vol.3
「ニューバランスの歴史、その定番シューズとは?」
ニューバランスは1906年にウィリアム・J・ライリーが興したボストンのアーチサポートの会社からその歴史はスタートします。世界ではじめて量産シューズでウィズサイジング(幅のセレクトがある)を採用するなど、これは現在でもこのブランドの象徴的コンセプトになっていますよね。
そして、1970年代にJ・デービスが日産30足程度のニューバランスを買収してから、新たなストーリーがはじまったと言っていいでしょう。私たちが知っているニューバランスは彼が作ったと言ってもいい、言わば中興の祖ですね。
日本ではクラシックモデル(普段履き)の人気先行でファッションブランドのように思われている時代が長かったように、個人的には思いますが、アメリカでは、陸上でもG・トーマスはじめ短距離から長距離まで契約アスリートを有し、東京オリンピックにも多くのアスリートを派遣しました。
その他、ベースボール、サッカーなど他のスポーツでもそのロゴを見ることできる、むしろアスリートへのテクノロジー提供をベースに商品が開発されているスポーツ総合ブランドとなっています。
そのニューバランスのランニングシューズの定番モデルと言えば、FF(フレッシュフォーム)1080v12と並んで、ニューバランスが誇る定番デイリートレーナーモデルFF 880v12でしょうね。今回の最新モデルで12代目のロングリリースシリーズになっています。
「定番シューズの象徴的機能性は何か?」
ニューバランスのミッドソールは、機能性によって2種類に分かれて、使用目的がはっきりしている、FF(フレッシュフォーム)=ロンガー(より長く)、FC(フューエルセル)=ファースター(より速く)の機能性を追求したものとなっています。
このFF880v12はフレッシュフォームXを採用したニュートラルトレーナーで、ロンガーのサポートする代表的なデイリートレーナーモデルというわけです。
フレッシュフォームはソフトなクッション性、かつ、軽量なミッドソール構造です。ソール表面の凹凸は内側が出っ張っていて、外側が凹んだスタイルになっていて、硬いパーツなしで、この形状がランニング時の足の内外の動きをコントロールする構造になっています。
FF880v12は、2デンシティ(2層)クッションになっていて、硬度の違う素材で2層構成にすることで、ソフトなランディングから蹴り出しをスムーズにする工夫もなされています。
アッパーのジャガードアッパーはかなりしっかりとフィットしてくれます。ちなみに、アメリカでは、どちらの品番もその落ち着いたデザインから、ウォーキングや普段履きなど年齢層問わず、愛用者がいると聞きます。FF1080、FF880は定番ならではのベーシック感が常にある品番ですが、ラインナップとして無駄なくそれぞれが差別化されています。
「定番シューズのガイド、ドロップは?」
ちなみに、ニューバランスでは、末尾が80の品番名のモデルがニュートラルモデル、60の品番名はスタイビリティーモデル(オーバープロネイト向け)を表しています。
FF880v12、FF1080v12がニュートラルデイリートレーナー、M860v12、がスタビリティーモデルという感じで分かれているんですね。
最近のニューバランスのシューズはFFボンゴ、FFモア、FCレベル、FCプリズムなどと品番名の“名前“になっていることが増えたラインナップの中で、名品M1300などのように、少数派の番号名であることも定番の定番たる証なんです。しかも上記のようにその番号に意味がちゃんとあるから尚更です
FF1080v12とFF880v12の大きな違いは、フレッシュフォームX(FFX)の素材をワンピースにして、よりソフトなクッションとフィーリングを重視したモデルであるのに対して、FF880は、上記のように硬度の異なるFFX2層構造にして、ランナーをサポート。
実は品番名でまさについになるFF860v12も同じように2層構造。しかし、そのパーツの配置はそれぞれシューズの目的、ニュートラルモデルか、スタビリティーモデルか、で絶妙に変えられているんです。
他にFF880v12は10mmとFF1080v12は8mmとソールドロップに違いがありますね。
「この定番モデルはどんな人に向けた商品なのか?」
FF880はニューバランスを普段から愛用している方がランニング用として購入する、最初の1足としてもピッタリです。何しろ、その定番ぽいデザインは、ニューバランスぽいルックスですが、機能的には“おっ、ひと味違う“と思わせる何かは十分あるシューズだからです。
ちなみにFF880v12とFF860v12の関係性は上記しましたが、ファースターの機能性を持つこれらデイリートレーナーモデルより軽量、接地感があるテンポアップシューズも同じ関係のペアがいます。FC(フューエルセル)レベルとFCプリズムです。前者がニュートラル、後者がスタビリティモデルとなっているんですよ。
話を定番に戻しますと、やはりFF880とかFF1080のようなニュートラルのデイリートレーナーは多くのランナーの用途に合うスタイルです。
ランナーの選ばないので、脚筋力やフォームに不足があるランナーにも安定感とガイドでサポートしますし、ワークアウトで疲労したアスリートのジョグでは、同じ機能で楽ができて、怪我の予防やトレーニングの継続をサポートしますからね。
「最新モデルFF880v12はどんなモデルか?」
最新の12代目はどこが変わったのか、オーソドックスなフィット感はそのままで、2デンシティーのミッドソールの配置が多少変化しました。着地時によりソフトなライド感を求めて、硬度の高い、蹴り出しをサポートするパーツが地面に近づき、足裏から離れました。
わたしが履いた感想は、見た目の重厚かつ、ややごつい印象とは全く違って、ライド感はソフトでバウンシー、とても気持ち良いフィーリングです。FF880見た目は圧倒的に定番感が漂っているモデルですが、その中身は足あたりのいい潮流クッションを備えたモデルなんだなあって思わせます。
そして蹴り出しも確か、ソフトな中にも、確かな地面感覚があり、足抜けがスムーズな印象です。
いつも斬新にモデルチェンジをするFF1080とは対照的に、いつでも安心して選べる機能性バランス感がFF880にあります。定番のFF880、ときどきFF1080なんて、この二つを履き分けることで、それぞれがより楽しめる関係性があると感じています。
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<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(F・Shokai 【藤原商会】代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝 (2005)