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running2022.08.15

“現状打破”を掲げる、マラソンランナー川内優輝が語るASICSシューズの進化と理想的な走り

公務員ランナーという肩書きで、突如現れて世界選手権に3度出場し、'14年アジア大会では銅メダルを獲得するなど、マラソン界の話題の中心に君臨している川内優輝。

現在は、プロランナーとして日本中・世界中を飛び回るという「夢」を現在進行形で実現している。

そんな川内優輝のトークイベントが、 Alpen TOKYOにて行われた。

イベント中のトークセッション、取材インタビューを交えながら、川内優輝を支え続けているASICSシューズについて、プロアスリートとして部活生へのアドバイスなど走ることがより楽しくなる秘訣を力強く語っていただいた。


■市民ランナーから成りあがった、川内の運命を変えたレース

――川内選手は、久しぶりのトークイベントになると思いますが、心境はどうですか?

当日は新型コロナウイルス感染症対策として、トークショー中はマスクを着用


こういうスポーツショップでのイベントは本当にいつ以来だろう。すぐ右手にはASICS商品がズラリと並んでいますけれど、なかなか無い環境ですね。本日はよろしくお願いいたします。


――最初の質問になります。何故、市民ランナーからのスタートだったのですか?

当時は、公務員の仕事が優先だったので、マラソンは趣味で続けていきたい気持ちがありました。楽しみながら走り続けた果てに、“フルマラソンを2時間10分で切りたい”、“都道府県リレーの代表になりたい”という2つの目標があって。そんな気持ちで続けていたら、まさか日本代表に選ばれるとは思っていなかったです。


――そこから、日本を代表する有名なマラソンランナーになりますが、要因はどのように感じでいましたか?

日本代表になるキッカケは、2011年の東京マラソンで突然いい走りができて、2時間8分37秒で日本人トップの3位で入賞し、そこから人生が変わりましたね。うまくいった要因は、前年に行われた大会がすごい雨でスローペースでしたが、その中で40キロ過ぎまで先頭集団で走ることができて、2時間12分という当時の自己ベストを出しました。その経験が、やはり大きかったかですね。


――今日のイベントには、普段から走られている方も多く見られますが、川内選手からこんな練習をした方がいいなど、アドバイスはありますか。

そうですね、私の場合には1日1回の練習を集中することを大事にしています。

ただある程度、練習時間を確保できるんであれば、朝か夜に分けて練習した方が、より長い距離を連続して走れますので、それはいいのかなと思います。


この暑い時期は、土日の休みを利用して涼しいところに行くのがいいのかなと思います。私も公務員のときは、週末に栃木の日光で、低公害車じゃなくて一般車が入ってこない道路を走ったり、山にトレイルランニングという形でよく走っていました。夏場は長期の合宿が難しい市民ランナーの場合は、週末を使って涼しいところに行くことが、秋から冬に良い走りをするために一番重要なことだと感じています。


■12年前の川内の自己ベストを破る快挙を支えた、METASPEED SKY+とは。

――ぜひシューズの履き分けについて、たくさん教えてほしいと思います。練習とレースのシューズの履き分けは、どうされていますか?

私の場合には他の選手ほど、あんまり履き分けていなくて。レースのときは、METASPEED【series】を履いてます。一方で、ウォーミングアップやジョギングシューズとしてNOVABLASTとGEL-KAYANOを履き分けています。普段の練習では基本的にはGEL-KAYANOが多いんですが、少しリズム良く走ったり、ちょっと長めに走るときにはNOVABLASTを履いています。


――川内選手が感じている、GEL-KAYANOの特徴をお聞かせください。

GEL-KAYANOはすごいクッション性を重視しています。踵はがっちり固められていて、走っていると最初は硬いような気がするんですけど、何回か走っているうちに足に馴染んでくる。走りを増すごとに良くなるシューズという印象がありますね。

私は怪我が多くて、ジョギングの際は怪我をしないことを念頭に置いてるので、そういう意味でもGEL-KAYANOを愛用しています。


――続いては、NOVABLASTの魅力をお聞かせください。

NOVABLASTは、前の部分が跳ねるのが特徴で、走っているとすごく気持ちよくなります。普段のジョギングで変化をつけたいときに役立っています。気持ち良さや、足の疲労具合に応じて履き分けています。


この黒のNOVABLASTは、普段履きとしても履いてます。NOVABLAST2は、深みが増して、クッション性が向上した印象です。NOVABLAST とGEL-KAYANOは、値段を見ると少し高いと思うかもしれませんが、とても丈夫なのでかなり長持ちします。結果的に、お買い得なシューズだと思いますね。

私も数ヶ月、履いている。多分距離だと2000キロ近く走っています。底が簡単に削れないし、穴も開かない。レースシューズと違って、アップシューズは長持ちしています。


――そして、今、川内選手のレースシューズは何を履かれているんですか?

普通のマラソンレースやハーフマラソンでは初代のMETASPEED SKYを履きます。

ただ10キロとか短い距離のレースの場合には、METASPEED SKY+です。

理由は、METASPEED SKY+ は、すごく跳ねるので、10キロとか短いレースの場合に、スピードに乗れるので楽に行ける感覚がある。実際、1月にMETASPEED SKY+の元になったプロトタイプで10キロを走って28分53秒で優勝できました。

しかも28分台は、初めての記録です。

元々ベストが29分2秒という2010年の記録でしたが、12年前の記録を破るという。

20代前半のバリバリスピードがあったときの記録を更新できました。うまく履きこなすとすごくスピードが出るシューズだと思う。5キロ10キロ、ハーフなどでお勧めします。

――他にも川内選手が感じている、METASPEED SKY+の魅力はありますか?

通気性が良くて、夏に履いてもあまり蒸れません。あとヒモが本当にほどけにくい。丸ヒモだと走っていると少しほどけてしまうこともあるんですけれど、このヒモだとほどけずに足にフィットします。このヒモは、実際に取って触ってみてほしいなと本当に思います。

ベロの部分もすごく薄くなって、足の甲が締め付けられる感覚もない。通気性も穴があいてたり工夫されています。 


――会場からの質問コーナーになります。川内選手は、世界中で色んなレースを経験していますが、レース中に風景を楽しむことはありますか?

独走して勝てたレースの場合は、風景を見ながら走ってるときが多いです。なので地方大会とはいえ、優勝した際の風景も含めて記憶に残っています。ですが、大阪マラソンや琵琶湖マラソンみたいに、限界ギリギリで走ってると風景はあまり入ってこないですね。


――最後になりますが、本日のイベントの感想をお聞かせください。

本日は短い間でしたが、ご参加いただきましてありがとうございました。すごく暑い時期に、無理して走りすぎてしまうと秋冬まで疲れが残ってしまうことがあります。暑い時期は無理しすぎずに、ジムに行くなど週末の休みを活用して涼しいところで走ってください。

旅行を兼ねていくと楽しい思い出にもなります。

“この暑い中でどう楽しむか”を意識して、秋冬にしっかり練習をすれば記録もぐっと伸び、自分が望む結果に出会えると思います。皆さんの今後の大会での活躍を応援しています。

本日は本当にありがとうございました。


イベントでは、川内選手のトークセッションに加えて、サイン色紙のプレゼントやお宝シューズのプレゼント会なども行われた。参加したお客さんも満足の笑顔でイベントを満喫し、川内選手も久しぶりのイベントに充実感が溢れる笑顔が印象的でした。


イベントの最後は全員で記念写真を撮り、参加者にとっても忘れられない一日に


イベント終了後には、アルペングループマガジンによる川内優輝選手の独占インタビューを実施しました。その模様もお届けします。


◆忙しい中高生にこそ実践してほしい、“ながらケア”と“ながら筋トレ”

――NOVABLAST、GEL-KAYANO、METASPEED+などのシューズの使い分けについてトークショーでは話がありましたが、それぞれのシューズ、そして年代によって取り組んだ方がいいトレーニングや練習方法などありますか?

独占インタビュー時、感染対策を施した上で撮影時のみマスクを外しています


GEL-KAYANOとNOVABLASTに関しては、普段のジョギングジュースとして、とても適しています。中学高校の強豪校ですと朝練のペースが早いので、重いGEL-KAYANOだとキツイときは、NOVABLASTで走ってほしい。なるべく早いペースでもNOVABLAST、そうじゃないときはGEL-KAYANOなどにしないと、怪我のリスクが高まります。

今は、ウォーミングアップシューズも厚底の方が適用しやすい。ウォーミングアップから薄くて軽いシューズだと実際のレースで影響がでる可能性もあります。私も、GEL-KAYANOやGT-2000を履くようなってから怪我が減っただけじゃなくて、キック力がついたんです。

重いシューズはクッション性が優れてますけど、キックをしっかり使い、そこそこのペースで走らないと前に進まないんです。足作りという意味で、中高生にはクッション性のあるシューズを履いて欲しい、と自分の経験から伝えたいと思います。


――川内選手がシューズを履きこなす上で、フィジカルトレーニングはどんなことしてますか?

GEL-KAYANOを履くこと自体がフィジカルトレーニングになっています。蹴りが強くなりますし。足を守りながらトレーニングできるのでGEL-KAYANOをお勧めしたい。他にも軽いシューズはあるんですが、ある程度の重量でクッション性があることが足作りにはとても大事です。

私もMETASPEED+を履く際は、回転や捌きがうまくいかないと前に進まないので、レッグカールをやりました。私は、ハムストリングが弱かったので器具を使わずに足の左右トレーニングを100回× 5セットやっています。連続してやると筋肉が疲れて、超回復しないので日にちを空けてやるようにしている。週に3回レッグカールをやるといいと思います。

急に100回× 5セットをやると怪我のリスクもあるので、徐々に増やしていけばいいと思います。慣れてきたら、本を読んだりスマートフォンで何かを調べながらでもいいと思います。いかに継続するかを考えると、“ながら筋トレ”が生活の中に溶け込みやすい。学校の宿題をやりながら足をバタバタすれば良いので、中高生も無理なく取り入れられる。

筋トレと同じくらいケアも大事です。厚底だと足に負担がかかります。中高生だと治療院に毎回行けないので、セルフケアが大事になってきます。数千円単位で買える治療器具もあるので買った方が良い。低周波とかマイクロカレットがあります。

筋トレやケアを忙しい中高生こそ大事にしてほしいですね。


――マラソンは、自分との戦いのスポーツですが、川内選手が自分に負けない為に普段から意識してることはありますか? 

やっぱり“メリハリをつけること”ですね。頑張るときはとことん頑張る。しかし頑張らないときは、頑張らなくてよい。常に頑張ってる状態だと壊れてしまう可能性がある。メリハリが大事なんだと思います。

私は、大事な練習の最後にラストスパートかけて終わることを毎回毎回繰り返しています。マラソンのラストで強い理由がそこにあります。途中へばっても強いスイッチが入る。

学生ですと、駅伝のラスト1キロが勝負になるので、練習のラスト1キロは必ずペースあげること。1キロが長ければ、ラスト300でもいいから必ずペースをあげる。どんなにきつくても上げることを体に染み込ませておくと、いざレースでも同じように走れます。最後に追い込む習慣をつけてほしい。毎回じゃなくても週に2回位やれるといいと思います。そういう取り組みが練習だと思います。


――最後になりますが、走ることを頑張っている学生、部活生にメッセージをお願いします。

1つは楽しく走ることが大事です。私の学生時代を思い出しても楽しいときより、どちらかというと苦しい、辛い、チームの目標のために頑張んなきゃいけないと無理をしていた時期もありました。でも、チームの目標が達成できるときは、自分が楽しいときだと思うんですよね。チームの雰囲気も良くなって、自分も走っていて楽しい。

では、楽しく走るために必要なことを挙げるとしたら怪我をしないことです。痛みを感じた状態で走ってても楽しくないですから。

怪我をしないために何が必要かって言うと、“ながらケア”と“ながら筋トレ”です。自分の足をケアする、鍛えるその両面からしっかり意識すること。

その意識した先には、「楽しんでるのにアイツどんどん速くなっている」って言われると思います。苦しみながら結果が出ないというよりも、“楽しみながら結果が出て良い方向にいく”。そういうのが、走ることの本当の楽しさです。誰に指示される訳でもなく、楽しいから走り、どんどん記録が伸びる、ライバルに勝つから走る、そういうことを感じてほしいなと思います。
 


■川内優輝プロフィール

砂原小学校1年生で陸上を始め、鷲宮中、春日部東高、学習院大と陸上競技部に所属。箱根駅伝にも関東学連選抜(現.関東学生連合)6区として2度出場。2009年に埼玉県庁に入庁後もフルタイム勤務の市民ランナーとして競技を続け、これまでに招待選手やゲストランナーとして240回以上(一般参加等も含めると600回以上)のレースに出場。フルマラソンはすべて完走しており、サブ10の世界最短間隔記録(中13日)や日本人最多記録(15回)なども樹立している。また、フルマラソンのサブ11~サブ20の1分刻みの達成回数は全て世界一であり、現在も記録を更新し続けている。2019年4月にプロランナーに転向し、2021年2月のびわ湖毎日マラソンで2時間7分27秒の自己記録をマークした。


公式ホームページ: https://www.yuki-kawauchi-marathon.com/

公式Twitter: https://twitter.com/kawauchi2019?lang=ja

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