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running2022.12.29

【2022年日本マラソン界を総括】パリ五輪で日本陸上界の復権を担う選手たちは、ハイレベルの争いを繰り広げている

24年のパリ五輪へ向けて、日本マラソン界はすでに競争の真っただ中にある。五輪代表の選考レースとなるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)出場のタイムと順位をクリアするために、有力選手が対象大会でしのぎを削っているのだ。

男子は22年早々にビッグニュースが飛び込んできた。

2月6日に行なわれた『第70回別府大分毎日マラソン』で、一般参加で初マラソンの西山雄介(トヨタ自動車)が優勝した。大会新記録となる2時間7分47秒で走り切った西山は、「初マラソンの歴代優勝を狙ったのですが、あと5秒足りなかったです。これからもしっかり走って、世界を目ざしていきたい」と頼もしい言葉を残した。このレースでは優勝した西山に加えて2位の鎧坂哲哉(旭化成)、3位の藤曲寛人(トヨタ自動車九州)、4位の古賀淳紫(安川電機)、5位の相葉直紀(中電工)、6位の中西亮貴(トーエネック)までが、MGCの出場権をつかんでいる。

2月27日開催の『第10回大阪マラソン兼第77回びわ湖毎日マラソン統合大会』では、星岳(コニカミノルタ)が2時間7分31秒のタイムを叩き出し、初マラソン初優勝を飾った。同時に、初マラソンの日本人最速記録を、11秒更新したのである。

レース後の星は「驚いています。ちょっと出来すぎたと思いますが、嬉しいです」と、率直な思いを明かした。MGCの出場権を、一発解答でつかんだ。

3月6日の『東京マラソン2021』では、日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)がMGCの出場権をつかんだ。日本人最高となる2時間5分28秒を叩き出し、4位に食い込んだのだ。

現地時間7月17日開催の『2022世界陸上競技選手権大会』の男子マラソンには、西山、星、鈴木の3人が日本代表として出場した。

西山は30キロまで先頭集団でレースを進め、2時間8分36秒の13位でフィニッシュした。これは、世界選手権における日本人最高タイムだ。レース後には「入賞ラインで勝負したかったです」と話しつつも、「いい経験ができました」と手ごたえを口にした。

2度目のマラソンとなる星は、2時間13分44秒で38位に終わった。鈴木は新型コロナウイルスの陽性反応が出たため、無念の欠場となった。

MGC出場を巡る競争に話を戻そう。その後行なわれた国内のレースでも、複数の選手が出場権を獲得した。

8月の『北海道マラソン2022』では2位の柏優吾(東洋大学)、3位の青木優(カネボウ)、4位の松本峻(トヨタ自動車)、5位の山口武(西鉄)までが、MGCへの切符をつかんだ。

また、12月4日の『福岡国際マラソン2022』では、日本勢最高の7位に入った秋山清仁(愛知製鋼)、8位の赤崎暁(九電工)、9位の大石港与(トヨタ自動車)、10位の久保和馬(西鉄)までがMGCの挑戦権を得ている。

同日行なわれた『第53回別府読売マラソン』では、中村祐紀(住友電工)が2時間8分29秒で、自身6度目のマラソンで初優勝を果たした。中村に23秒差で2位の山本翔馬(NTT西日本)、3位の橋本峻(GMOインターネットグループ)が、日本人3位以内と2時間10分以内の条件を満たし、MGCへコマを進めている。

22年の男子マラソン界では、大迫傑の復帰にも触れなければならない。東京五輪後に引退を表明したが2月に現役復帰を発表した。9月にイギリスでハーフマラソンに出場し、11月6日には『ニューヨークシティマラソン』のスタートラインに立った。タイムは2時間11分31秒で、5位に食い込んでいる。31歳の「第2章」に注目だ。


◆女子もMGCに向けた、レベルの高い争いが繰り広げられている。

1月30日の『第41回大阪国際女子マラソン』で、松田瑞生(ダイハツ)が2時間20分52秒の大会新記録を打ち立て、2年ぶり3度目の女王に輝いた。東京五輪は補欠の立場に涙した27歳は、MGC出場に名乗りをあげた。

3月6日の『東京マラソン2021』では、東京五輪8位入賞の一山麻緒(資生堂)が2時間21分02秒で6位入賞を果たした。21年12月に結婚した鈴木健吾とともに、同一レースで日本勢トップとなった。

3月13日の『名古屋ウィメンズマラソン2022』では、安藤友香(ワコール)が2時間22分22秒の3位でフィニッシュした。また、大東文化大学4年の鈴木優花(現在は第一生命)が初マラソンに挑み、女子学生新記録の2時間25分02秒で5位に食い込んだ。

このレースでは安藤と鈴木に加えて、4位の細田あい(エディオン)、7位の福良郁美(大塚製薬)、8位の太田琴菜(日本郵政グループ)、9位の竹本香奈子(ダイハツ)の日本人選手上位6位がMGCの出場権を獲得した。さらに、11位の岩出玲亜(千葉陸協)、13位の川内理江(大塚製薬)が、対象2レースの平均が2時間28分00秒以内となり、MGC出場の条件をクリアしている。

『2022世界陸上競技選手権大会』の女子マラソンでは、松田が9位でフィニッシュした。序盤から異例のハイペースとなるなかで、最後まで諦めない走りを見せた。

東京マラソン2位の一山、同7位で出場権を得た新谷仁美(積水化学)は、新型コロナウイルスの陽性反応で欠場を余儀なくされた。日本チームの責任を一身に背負った松田は、「今回の悔しさを糧に、次は勝てるようにしたいです」と、前を向いた。

8月末の『北海道マラソン2022』では、山口遙(AC KITA)が2時間29分52秒(速報値)で優勝を果たした。実業団チームに所属したことがないことから、「最強市民ランナー」の異名を取る35歳は、「MGCの出場権を絶対に獲得したいと思っていたので、いまはホッとしています」と、レース後には笑顔を浮かべた。

日本陸上界の復権を担う選手たちは、高いレベルで研鑽を積んでいる。彼らの思いはただひとつ、24年のパリ五輪での飛躍だ。

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