今どきのスーパーシューズ全力レビュー!
■今どきのスーパーシューズを全力レビュー
世界中のマラソン大会に参加する足元を彩るスーパーシューズ。最近はどのブランドも切磋琢磨して良いシューズをマーケットに送り込んでいて高いレベルで争っている印象があります。
そんなハイレベルな競争環境の中、例えば箱根駅伝2024ではシューズの着用率を見たときに、ナイキが98人着用の40%台とのまだまだそのシェアは大きく過半数に近い勢力を維持しその人気は衰えることがありません。そんな中でアシックスが57人着用と第2勢力に、そしてプーマが20人着用の第4勢力になったのは記憶に新しいところです。ブルックス、ホカ、オンといったこの大会に登場した新規ブランドもありました。
そのような現状の中、今回はあらためて何足かのスーパーシューズを全力でレビューしようと思います。
■オレの5Kタイムトライアルで全力レビュー
実は私、全12戦、12足のシューズで5Kタイムトライアルをして全力レビューをする企画「オレの5Kタイムトライアル」なるものの真っ最中なのです。
こちらの他の記事でも書いていますが、[いつものコースをレースコース]のコンセプトに、大会申し込みもなし、トイレも、スタートにも並ばず、はたまたスタート時間も自分次第という気楽な[タイムトライアル]を実施しています。
※関連記事: 5Kタイムトライアルをやってみよう!この時期はスピード強化、スピードで遊ぶ
シューズレビューはもちろんトレーニングで使ってもできます、ただ、5Kのような全力で走ってみることで出るリアルなタイムとか、そこから出てくるコメントは、自分自身も期待でき楽しみなものなのかなと思いまして、今回自らハードルを上げて楽しんで頑張っています。
そんな中から、前半の4足にフォーカスして、その効果や感触を比較レビューしましょう。
ただ実際のタイムだけでは気象条件や体調も関係してしまって単純比較はできないので、今回はCASIO(カシオ)のRunmetrix(ランメトリックス)の力をお借りして、20項目の詳細データから[6つのスコア]に抜粋、さらに[総合スコア]の2種類の評価を加えて考えてみます。
ということで、「実際に出した5Kのタイム」それとランメトリックスの「総合スコア」、少し細かい「6つのスコア」、それと私自身の感触で各シューズを評価しました。では、箱根駅伝で履かれた4品番に絞ってスーパーシューズの比較レビューをお届けしましょう。
■世界最高記録を出したシューズ『ナイキ アルファフライ 3』はどうか
残念ながら交通事故で他界してしまいましたが、ナイキアスリートであったK・キプタムが2時間00分35秒という世界最高記録はこのシューズ、ナイキ アルファフライ 3を着用したレースで作られました。言わば公認レースで世界最速はこのシューズで達成されたわけです。
箱根駅伝2024でも発売前に14名のランナーが着用したこのナイキ アルファフライ 3を第1戦に選んで私も着用しました。
タイム的には[16分36秒]とこの4つの中では下から2番目、総合スコアは2位、そして、「左右対称性」のスコアは1位と言う結果でした。タイムとスコアはダントツではなったことが興味深い結果でした。
このシューズの大きな特徴であるナイキ エア ズーム ユニット+ZoomXフォームはとてもソフト。実際は、ちょっとグニャッとソールを潰してから戻りを待つ、そんなタイミングで走った方が前に進んでいく印象です。そんな印象とは裏腹に、安定要素のスコアが高かったのはこちらも面白いですね。
ナイキ エア ズーム ユニット部分の改良が施されて、初代と比較してもとても“クセ”の少ない仕上がりで、やはり履きやすかったことはタイムが証明してくれています。ネガティブな要素としては、現状は手に入りにくいシューズであることです。ただそれも徐々に解消されるではないでしょうか。
■五輪イヤー!アシックス メタスピード エッジパリ登場!
第2戦はこのシューズ、アシックス メタスピード エッジパリを着用しました。
箱根駅伝2024では、発売前のパリシリーズのプロトタイプを履くランナーが実は多かったのですが、その中でもエッジパリ着用ランナーが意外に多く、前作まではスカイプラス > エッジプラス というイメージでしたので驚きました。
でも、実際着用してみるとそれは納得できました。今回オーソドックスなスーパーシューズに仕上がっている印象ですね。
タイム的には[16分32秒]2番目、しかも、ナイキ アルファフライ 3を上回りました。総合スコアは3番目、6つのスコアの中では「安定した姿勢」のスコアが全体で2番目と良かったです。
今回、兄弟モデル アシックス メタスピード スカイパリとソールの厚み、ドロップが同じ5mm(前回8mm)になりました。違いは、前足部のスプーンのエの部分がカーブの効いたスプーンプレートが入っていることです。
ミッドソールの素材「FF TURBO PLUS(エフエフターボプラス)」はソフトですが、沈み込むような感覚がない、反応がいいチューニングになっていますね。足を置けば返ってくるような反応の良さ、前作で使用されていた「FF TURBO」がパワーアップしてより履きやすくなりましたね。
今回のエッジパリはまるで“スカイプラス“の後継のような仕上がり。扱いやすさはこの4モデルで群を抜いています。ボストンマラソン2024の女性のトップアメリカンもこのエッジパリの方を着用していました。
■アシックス メタスピード スカイパリはエッジパリとはどう違うか
3戦目はスカイパリ。少し疲れていて、ちょっと体が重たかったのですが、タイムは1番の[16分31秒]でした。このシューズのおかげです。
しかし、面白いのは、総合スコアは最下位。
6つのスコア「安定した姿勢」「負担の少ない着地」「骨盤を軸とした全身の運動」の3つがハイスコアも、スムーズな重心運動が4モデル中最低スコアだったのでこれが評価を下げたのでしょう。
エッジパリと比較してカーボンプレートがカーブ少なくフラットに入っているのが大きな違いです。それゆえ走行時、踏みつけ時には素材が潰して戻すような感覚があり、これが前作までソールに傾斜があったエッジを彷彿させるわけです。今回のスカイパリはエッジのような雰囲気になったと個人的には思っています。
というのもあって、エッジパリのオーソドックスさに比較して、蹴り出しに自由が効くような、もっとフットワークがいい雰囲気ですね、このシューズは。3Kまでの通過はエッジパリの方が3秒ほど良かったのですが、後半ピッチを上げることで最高タイムを叩き出した感じです。
ロングディスタンスはエッジパリ、ショートディスタンスはスカイパリという印象がしました。
■赤崎 暁着用シューズ、ニューバランス FuelCell SuperComp Elite v4
第4戦はこのシューズ、赤崎暁選手が着用しているニューバランス FuelCell SuperComp Elite v4を着用しました。このモデル29,700円(税込)といった価格にも関わらず、SNSやYouTubeでの投稿の反応も良く、多くのランナーが期待しているように感じました。
しかし、いかんせん人気のためか在庫が少ない印象です。私は発売当初に購入したのですが、現在ではサイズが欠けて、入手が困難なサイズも多くなっています。
前作とは全く違う挑戦的な作り、ミッドソール素材は、スーパーシューズとしての定番素材であるPEBAを使用。超ソフトなフィーリングになっていて、それゆえプレートを感じないような接地感覚ですが、走るともっとしっかりと安定する印象だから不思議です。
かまぼこ状に横にたわみ、縦方向にスプーン状になったEnergy Arcは、ミッドソール中央部の窪みも相まって、推進力を作り出す構造です。
タイムは[16分56秒]とこの4つでいちばん悪かったのですが、総合スコアは最高点の85点でした。安定した着地、骨盤を軸とした全身の運動、スムーズな重心運動が最高スコアでしたね。安定要素が体感と一致します。
このシューズも5Kよりは、もっとロングディスタンスの方が良さが光るように思いました。
■どんな距離で、どんなタイムで走るかがポイント
これが4足の成績のまとめです。左から[タイム] [総合スコア] [ラップごとのスコア平均]になります。タイムだけではなくて、ランメトリックスのスコアがあるとほんと面白い比較になりますね。
何せ、タイムがトップのシューズが総合スコアが最低で、タイムが一番悪かったシューズの総合スコアが最高なのですからね。
基本的に素材のバウンドが強く、反応のいいことで速く走れていることはあると思います。研究論文の類でもプレートより素材の影響が強いことは指摘されています。
逆を言うとゴム毬のようなどちらに飛んでしまうか分からない、その分裏返して言えば安定性が担保されない作りであることと同じ意味ともいえます。そういう点で安定要素を重視した作りのニューバランス FuelCell SuperComp Elite v4のスコアが高かったのも頷けます。5Kよりももっとロングディスタンスでは違う結果になったかもしれません。
実は王者ナイキ アルファフライ 3も安定要素のスコアが高く、ラップスコアの平均も高く、やはり良いモデルであることは間違いないですね
是非、この結果をもとにスーパーシューズ選びの参考にしてください。
<著者プロフィール>
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久( FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)
RECOMMENDED POSTS
この記事を見た方におすすめの記事