川内鮮輝(100kmマラソンランナー)が走り続けるワケvol.1「世界一の選手になりたい」
100kmウルトラマラソン2017年度世界ランキング5位の川内鮮輝選手(27歳)は、ロンドン世界陸上男子フルマラソンに日本代表として出場した優輝選手(30歳)の弟である。鮮輝選手が100kmを走る道を選んだ理由を尋ねてみると、非常に興味深い答えが返ってきた。
――辛過ぎた小学生時代
川内:兄と弟が走っていたので、私も4歳の時に自分の意思というよりは強制的にやらされて走り始めました。小学生の時までは辛過ぎて全く楽しくなかったです。 毎日がタイムトライアルで、日々記録の更新を求められるという異常な環境にいました。体が疲れ切っていましたし、心も疲弊していました(笑)
――天国を感じた中学生時代
川内:幼少期からの流れで、中学では陸上部に入りました。部活動ではジョギングの日、筋トレの日など練習メニューのバリエーションが豊富で楽しかったです。
それまでは家族とマンツーマンの練習ばかりで、毎日が地獄かと思いましたが、中学からは仲間も沢山できて嬉しく、そのギャップもあり、天国かと思いました。何より、「毎日タイムトライアルをすることだけが練習じゃないんだ」と気付かされました(笑)
――不完全燃焼の高校生時代
川内:兄と同じ埼玉県立春日部東高校に進学しました。中学3年時から東高校の練習に参加していて練習環境が良いことを知っていました。
また中学時代からライバル視していた選手が東高に入るのを聞いてもいたので、一緒に練習したいと思い、それが進学の決め手となりました。
高校では自己記録の更新を重ねて、関東駅伝大会に出場することができました。しかし、個人では埼玉県大会止まりだったので、不完全燃焼で卒業しました。
――憧れを抱いた箱根駅伝
川内:幼少期から高校時まで正月に箱根駅伝を毎年観ていて、「いつか自分も箱根駅伝を走りたい」と思うようになりました。当時強かったのが東洋大と駒沢大で、高校時の自身の持ちタイムから考えると、ここでは部内での競争に敗れ、選手として出場できないと思い受験するのを諦めました。
色々調べると青山学院大が駅伝に力を入れ始め、ここであれば選手として箱根に出られる可能性を感じました。それで第一志望にして勉強を始めたんですが、試験で落ちてしまい、同じ様に駅伝に力を入れ始めていた、第二志望の國學院大に進学しました。
入学後、國學院は箱根駅伝の常連校となり、レギュラーとなれるように練習に励みました。5000mの記録を約1分更新して14分30秒となりました。10000mの記録も29分54秒となり、箱根駅伝エントリーメンバー(補欠)に入りました。しかし、残念ながら箱根駅伝本戦に出場することはできませんでした。
――会社員時代に改善した体の歪み
川内:大学で実績を残せなかったので、一般就職して都内の印刷会社の営業職に就きました。営業職ですからお客様第一で働いていて、そのため練習計画を遂行できず、マラソン大会に出場しても良い結果を残せませんでした。
整体院で体を診てもらった時に自分の体がかなり歪んでいることを自覚し、練習時間が確保できない分、日々の生活の中でバランスを改善することに努めました。
社会人1年目にはフルマラソンのタイムが大学時より30分も落ちて2時間50分台になってしまいました。ですが、体が徐々に整ってくると、タイムも確実に伸びて2時間30分台になりました。
――100kmのプロランナーになったワケ
川内:会社員時代に、ふと自分の将来を考えた時に、このままの思い描く練習を実行できないスタイルで競技を継続していくと、死ぬ時に必ず後悔すると思いました。
ハードな練習に耐え得る、回復力も高い若いうちに自分の夢を追求したいと考え、丁度3年間勤務をした2016年3月一杯で会社を辞めて、4月からプロランナーとしての生活をスタートさせました。
プロになってから色々な距離の大会に出場し、5000mや10000mのタイムをうんと伸ばすには個人練習では難しいことを感じました。一方、7時間ぐらい走る超長距離走では集中力を切らさずにそこまで苦にすることなく走ることができたので、超長距離は自分に向いていると思いました。
また一緒に練習をしていた兄からも、「お前、長い距離の方が向いてるから100kmが良いんじゃない」とアドバイスされ納得し、100kmウルトラマラソンに本格的に出場するようになりました。2017年シーズンに関しては、100kmウルトラマラソンで結果を出す事を最優先事項に据えて、練習に打ち込み、大会に出場しました。
――目標は世界一の選手になること
川内:プロランナーとなりフルマラソンのタイムを2時間17分台まで伸ばしましたが、日本ランキングでは100番程にしか値しません。今のままでは日本代表として選抜され世界大会に出ることは不可能です。
ですが、100kmウルトラマラソンの2017年度世界ランキングでは5位になることができたので、こちらは日本代表となることに現実味があります。世界大会に出られることになれば、日本が世界のウルトラマラソン界で首位を走っている現状ですから、世界一を目指したいですね。
弟が取り組む50kmですと、フルマラソンと距離が8kmしか変わらないので、スピード不足により上手く世界とは戦えません。
24時間走ですと、逆にスピードをほとんど必要としなくなるので、私が競技経験で培ったスピードを生かすことが出来ません。矛盾しているようですが、これらの事から100kmが私にとっては最適だと思うんです。
vol.2
に続く。
【プロフィール】 川内鮮輝(かわうちよしき)
1990年生まれ。埼玉県久喜市出身。
4歳から長距離を始め國學院大學では箱根駅伝メンバーにエントリー。
会社員を経て、2016年4月よりプロランナーに転向。トラック・フルマラソン・100kmウルトラマラソンまでマルチに取り組む。
兄の優輝、弟の鴻輝と共に川内3兄弟として知られる。
フルマラソン 2:17:27(2018東京)
100kmウルトラマラソン 6:42:06(2017四万十川)
2017年度100kmウルトラマラソン世界ランキング5位
川内鮮輝Facebook
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