葛西紀明(スキージャンプ) レジェンドが語るランニングvol.1「ランニング中に汗をかきたい」
8度のオリンピックに出場して銀・銅メダルを獲得、W杯では最年長優勝を果たすなど、数々の偉業を成し遂げてきた葛西紀明選手(46歳)。今もなお進化し続けるレジェンドが、欠かさず行うのがランニングだ。葛西選手は、なぜランニングをするのか?札幌で、単独インタビューに応じていただいた。
――葛西さんは、どのような目的でランニングをしていますか?
葛西:時間があれば30分位ランニングをしていますね。そんなに速くないペースで、必ず汗をかくようにしています。減量を兼ねてもいるので、サウナスーツは必ず着て走ります。サウナスーツの中に長袖のスパッツも着用していますね。
ランニング中に汗をかきたいので、夏は気温に合わせて薄いウインドブレーカーにしたり、冬は厚手の物の更に上にウェアを着ています。ランニングをすることで持久力もつきますし、メンタル的な要素も改善されますね。
早朝にランニングをすることが多く、1日の予定やジャンプで成功することを考えながら走っています。海外で走ることも多いですが、日本との違いは気にしていませんね。
――いつからランニングを始めましたか?
葛西:小学生の頃は走るのが今ほど好きではなかったんですが、体も弱かったのでランニングを開始しました。気がついたら地元で速くなっていて、駅伝大会に出たり陸上部からも誘われましたね。私の父親が厳しい人で、「何やってんだ!走ってこい!」と言うので、小学生の頃に4kmは走っていました(笑)。
――ランニングを続けるコツはありますか?
葛西:走るのって基本的に嫌じゃないですか(笑)。最初は10 分、15分と歩くのを続けていくと、「今日走ってみようかな」という気持ちになるはずです。ゆっくり走っていると「明日はもう少し走ってみよう」という感覚になってくるので、それで続けていくことができるんですよね。
徐々に時間と距離を増やしていけば、そんなに嫌にはならないと思いますし、「走らなきゃ」という気持ちになってくるんです。まずは歩きから始めてみて、無理をせずに走ってほしいですね。体重があるので痩せようとして我慢して走ると、なかなか続かないです。目標を落としていくと自然と走りたくなって、ランニングにハマっていくと思います。
――ランニングシューズに、こだわりはありますか?
葛西:現在ミズノさんがスポンサーでして、提供していただいているものを履いています。ソールが厚めのものを履いてランニングをしています。
――フルマラソンを走ったことはありますか?
葛西:フルマラソンは、まだ未経験となります。1回どれだけ走ることができるか挑戦をしまして、25km位で膝が痛くなって止めました。長く走るためのトレーニングをしなければダメなんだと思いましたね。10km、20kmと距離を伸ばしながら走っていく必要があると勉強になりました。
――ストレッチやケアを行っていますか?
葛西:ストレッチは、走り終えた後にやります。体が温まってからストレッチをした方が、よく伸びて気持ち良いんですよね。お風呂に入った後にも、ストレッチをやっています。
怪我をした時にだけ、ケアをやりますね。
――葛西さんは、スキージャンプ選手として35年間も競技生活を続けています。どのようにしてモチベーションを維持していますか?
葛西:今でも競技が好きであることですね。理由は沢山あります。昔から好きだったと思いますが、若い頃は今みたいに好きだという感じにはなりませんでした。「こいつらだけには負けない」と、勝ちたい気持ちが強かったからでしょうね。僕は負けず嫌いですからね。ソチ五輪が終わった頃から、好きだっていう気持ちを感じています。
長野五輪で自分がメダルを獲得できなく、ライバルの日本人選手が金メダルを獲ったというのが本当に悔しかったんですよね。当時は僕の身体能力に誰も付いてこれず、そこに自信があったのに、「なぜ負けたんだ?」と。あの時の悔しさがあったからこそ、「日本人選手には絶対に負けないぞ!」という気持ちになりました。それからフィジカルとメンタルを物凄く鍛えるようになりましたね。
若い頃はどこかの会社が自分を拾ってくれるだろう、成績を出せば助けてくれるだろうと甘い考えがありました。現在いる土屋ホームに入ってから、こんなにも沢山の社員がいて、「結果があるからこそ支援していただいている」と感じています。監督になって合宿を組んだり経費の使い方を考えたり大変なことが分かってきたので、「会社に恩返しするために頑張る」という想いも強いですね。友人、知人、ファンの応援や家族と会社の支えが一気にグッと固まって僕のエネルギーとなっています。
――世界トップレベルの選手として長く活躍できる理由を、どのように考えていますか?
葛西:スキー選手は会社に勤め、3、4年で結果が出ないと引退をしていくという厳しい世界です。僕はその中でも世界に出続けることができています。世界で毎年変わる競技ルールに対応してきた能力、自分のジャンプを進化させることができた能力・反応・判断というのが他の選手よりは強いのかなと思っています。経験とともに40歳近くになって気付くことができたからでしょうね。
vol.2 につづく。
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