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running2023.02.13

ADIZERO TAKUMI SEN 9。履きやすい、をマックスまで高めたレーシングシューズ

■箱根駅伝にてADIDASシェア伸長

「シューズから見た箱根駅伝」をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

> シューズからみた駅伝はこちら


2023箱根駅伝では、学連選抜チームも加えた21チーム、各チーム10人のランナー、総勢210人のうち、シューズの内訳は、ナイキシェア61.9%とまだまだ圧倒的なシェアでしたが、アディダスが18.1%の38人とシェアを伸ばしました。

そのうちほとんどがADIDAS ADIZERO ADIOS PRO 3(アディダス アディゼロ アディオス プロ 3)というまさにカーボンファイバー搭載のいわゆるスーパーシューズだったのですが、その中の6名は、今日ご紹介するADIZERO TAKUMI SEN 9(アディゼロ タクミ セン9)というアディゼロアディオス プロ 3より、少し薄いソールのシューズを履いていたのですよね。

学生ランナーは箱根駅伝までのトレーニングプロセスの中でこのシューズこそ自分の力を発揮できるからこそ選択したわけです。しかし、厚底全盛の今、敢えて薄底スタイルを履くというのはどういうことなのでしょうか?逆に面白い現象です。


これは、アスリートだけの話って思わないでほしいのです。今回はこの学生ランナーの選択をヒントにレースデイシューズ、トレーニング効果を高めるシューズ選びを、ADIZERO TAKUMI SEN 9をご紹介しながら考えていこうと思っています。

その前に、箱根駅伝を見て“走りはじめたいなあ“って思った人は、彼らが当日履いたそれらのシューズではなくて、そのエッセンスが入った、ADIZERO SL (アディゼロ エスエル)を購入検討し、ランニングをスタートさせましょう。その方がきっと楽しめます。詳しくはこちらも参考ください。

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■かつて日本人ランナーのレースデイシューズは、薄底1択

かつてレーシングシューズと言えば、特に日本人ランナーにとっては、薄くてフラットなソールのシューズを指したと言っていいでしょう。そのまま“薄底”とか、英語では“レーシングフラット”と呼ばれて、それらが、レースデイシューズとしてのほぼ1択であったわけです。

箱根駅伝でも2017年まではアシックスのSORTIEMAGIC(ソーティーマジック)やミズノのクルーズ系のレーシングフラットが全盛、両者合わせて6割弱のシェアがあって、圧倒的な支持を集めていました。

この時代の薄底レーシングは、ランナーの鍛えに鍛えたパフォーマンスを、シューズはうまく伝えるのがメインの機能性だったわけです。ですからクッションより、接地感を重視した薄めの作りになっていたわけですね。

物理的にも作用反作用が起きやすい、ランナーのジャンプした力が伝わりやすいほぼ裸足の形状。近代オリンピックスタート時期の革靴に鋲を打ったスパイクシューズとコンセプトが同じといっても語弊がない、より接地フィーリングが良くなるようにより薄く、より軽いのがむしろそれの進化でした


ですから、レーシングフラットスタイルは、単純に多くの市民ランナーには足にかかる負担が大きい存在でしたが、アスリートにとってそれは、まさに「履きやすい」と「速く走れる」象徴、“感覚と実際“の両者一致していた時代のシューズ選択だったと言えるでしょうね。


■2017年Breaking2によりすべての“常識“が白紙に

それが2017年にナイキが開催したBreaking2において、速く概念は激変することになります。そのときは2時間00分25秒と大台は破られなかったのですが、それに続くINEOS 1:59 Challengeで現世界最高記録保持者、E・キプチョゲ選手が人類史上唯一のマラソン2時間切りを達成することになります。

そして、そのストーリーのすべてはこのシューズから始まったわけです。ナイキ ズーム ヴェイパーフライシリーズの出現により、「速く走るという常識」は大きく変えられることになっていきます。

このシューズは、当初から履きやすいと両手(もろて)をあげてランナーに歓迎されたわけではなかったわけですが、Breaking2やINEOS 1:59 Challengeの実績に証明された結果がモノを言ったわけですね。その後のワールドマラソンメジャースでナイキが表彰台を独占や箱根駅伝で95%強のランナーが着用するなど社会現象となっていくわけです。

まさに、速く走る概念が変わって、「履きやすい」と「速く走れる」が一致しない、そんな時代が到来したわけです。


■シューズとランナーの共同作業に変わった

当然の成り行きですが2023年の現在では、ほとんどのアスリートでこれらスーパーシューズでも「履きやすい」そして「速く走れる」シューズと感覚と実際が一致しはじめているはずです。履きやすい概念もすでに変化しているはずです。

トレーニングにおいてアスリート自身のパフォーマンスは以前までと同じように引き上げるべく努力するのはもちろんですが、同時に独力のみではなくて、そのパフォーマンスをシューズに引き出してもらって、そして速く走れるような、そんな時代になったことは間違いないです。

他のスポーツで言えば、ラケットをうまく使える人がテニスがうまい人、グローブとバットをうまく使える人がベースボールがうまい人と同じように、シューズをうまく使って、自身のパフォーマンスを引き出すことは常識になったと言えますね。


■2022年ワールドマラソンメジャーズ男子はアディダスが独占

そして、2022年、状況は変わってきています。ワールドマラソンメジャーズ、世界6大大会の男子の優勝者はなんと5レース中、4大会でADIDAS ADIZERO ADIOS PRO 3を履いた選手だったのです。

世界陸連ルールリミットギリギリの39.5mm厚のミッドソールは、クッション性を発揮する、弾性のあるLIGHTSTRIKE PROフォームの2層構造。さらにENERGYRODS 2.0をミッドソールに挟み込むことで、ランナーが求めるレベルの剛性とエネルギーの反発が得られる設計になっています。超軽量・反発弾性を追求した2022年の快進撃を支える機能性を持ったレースデイシューズ、それがアディオス プロ 3です。

2022年の箱根駅伝でもアディダス着用者のほとんどがこのシューズを着用したわけですね。


■シリーズ9代目もリニューアル2代目のレーシングシューズ

対して、6名のランナーが選んだのは、ADIZERO TAKUMI SEN 9、シリーズ9代目のいわゆる薄底レーシングシューズだったわけです。

TAKUMIとは匠のこと、開発当初から日本伝統の靴造りの匠の技術を投入、最新モデルも引き続き、大森敏明氏がプロダクト関わったモデルになっています。まさに匠がプロデュースしたTAKUMIなわけです。


もっと具体的に何がTAKUMIかと言えば、金栗四三氏の金栗足袋以来、ジャパンレーシングと言えば、あの薄いソールの中にすべてを詰め込んだ、軽量で接地感覚の高いシューズ、そのものだからです。


■ニュージェネレーションレーシングがADIZERO TAKUMI SEN 9

おっ、薄底レーシング回帰かというのは早計です。

このADIZERO TAKUMI SEN 9は実質”NEW SEN2”。従来の薄底レーシングとは区別すべき前回大きな変更があったリニューアル2代目のニュージェネレーションスタイルのレーシングフラットだからです。

今回のADIZERO TAKUMI SEN 9もLIGHTSTRIKE PROというアディオス プロ 3と同じ素材、33mm厚の中に、グラスファイバー製の5本のENERGYRODS 2.0とヒールプレートが組み込まれるまさに、薄いソールにすべてが詰まったモデルになっています。海外で盛んな5Kや10Kのロードレースではコーナリングでの操作性を重要視して開発されたものです。

確かな接地感はかつてのそのまま、でもかつてフラットとは比べものにならないクッション性と蹴り出しのスムーズさです。まさに従来の薄底と潮流の厚底のいいとこ取りのバランス感、これがADIZERO TAKUMI SEN 9なわけですよね。


■まさに「履きやすい」レーシングシューズ、ADIZERO TAKUMI SEN 9

ADIZERO TAKUMI SEN 9では、ENERGYRODSは剛性が強くて硬いカーボンファイバーではなくて、グラスファイバー製でしなりが出るスタイルを採用しています。強い蹴り出しを生み出すというより、ランナーの強い蹴り出しをスムーズに伝える良さがありますよね。また、ほどほどにあるクッションも加えて、まさに「履きやすい」レーシングシューズとも言っていいでしょう。

ADIZERO: ROAD TO RECORDSという ドイツのアディダスのヘッドクォーターで行われた公認タイムトライアルイベントでは、特にメーカー側が指示をしたわけではないにも関わらず、5KだとTAKUMI SENが多くて、10Kになると半々、ハーフだとほとんどADIOS PROという着用実績だったことにも言えます。

まさに、こういったフィーリングを気に入って、箱根ランナーも履いたことでしょう。そして、その「履きやすい」を信じてそして、自身のパフォーマンスを掛け合わせてレースでの使用を判断したのだと思いますね。


■市民ランナーの我々にも無縁ではない履き分け

では、我々市民ランナーはどうこれらを選び分け、履き分けるといいのでしょうか。

そのポイントは、トレーニングで「履きやすい」という感覚をしっかり持って、「速く走れる」という実際を生み出す、そんな履き分けを考えることでしょうね。

目標レベルが高いランナーこそ、アスリート的なアプローチはとても効率を高める意味でも大事。ただがむしゃらに走るだけではなくて、道具=シューズをうまく使うと速い時代になったのを忘れないでください

具体的には、インターバルトレーニングやショートディスタンスレースはADIZERO TAKUMI SEN 9を使って、自身の接地感・それに伴う出力を養うのがいいでしょう。まさに自分の言うことを聞いてくれる感じの履きやすいシューズです。これでフルでもいいのでは?と思うランナーも多いかもしれません。


■スーパーシューズであるADIOS PROの機能性

対して、厚底レーシング、スーパーシューズであるADIDAS ADIZERO ADIOS PRO 3は、何をしてくれるかと言えば、一言で言って8の力で10のスピードを出す機能性です

その素材バウンドの強さとロッドの強い蹴り出し・跳ね返りから筋的・心肺機能的にも楽な状態を作りだしてもらって速いと言う状態を作り出すシューズですからね。基本的にはよりロングディスタンスであれば、アディオス プロ 3一択になると思います。

私ならインターバルやショートディスタンスでは断然ADIZERO TAKUMI SEN 9、しっかり接地感、自分力を高めて10K以上なら ADIDAS ADIZERO ADIOS PRO 3を選択し、余裕を作ってもらって自分のパフォーマンスを有効利用するイメージですね。

接地フィーリングの履きやすさと、速く走れる余裕感で履き分けてみるといいですが、最後にお伝えしたいのは鍛えに鍛えた学生ランナーからすれば、駅伝の20K前後の距離では私の5Kぐらいの感覚なので、ADIZERO TAKUMI SEN 9にするかADIDAS ADIZERO ADIOS PRO 3にするかどちらか悩んでもおかしくなったわけです。

もちろん、説明してきたロジックはありますが、速く走れるという現象は、ランナー×シューズであることをお忘れなく。学生ランナーがそうであったようにトレーニングプロセスで信頼できると踏んだのであれば、ある種例外的なADIZERO TAKUMI SEN 9の使用だってもちろんありです。ADIZERO TAKUMI SEN 9は、NEOレーシングフラットに生まれ変わっていますしね。
 


<著者プロフィール>

ランニングシューズフィッティングアドバイザー

藤原岳久( FS☆RUNNING(旧 藤原商会)代表)


日本フットウエア技術協会理事

JAFTスポーツシューフィッターBasic/Advance/Master講座講師

足と靴の健康協議会シューフィッター保持


・ハーフ1時間9分52秒(1993)

・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン) 

・富士登山競走5合目の部 準優勝(2005)

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