ナイキ ズームフライ フライニットをわたしがオススメする理由
赤いナイキのシューズが世界を圧巻
世界をアスリートが、赤い目立つナイキのシューズを履いて圧巻している。
記憶に新しいところでは、エリウド・キプチョゲ選手の世界最高記録や大迫傑選手の日本最高記録達成だが、 ちなみに、2017年~2018年の世界6大大会の1-3位の独占率は実に、6割と、ものすごい。
その、彼らの履いている赤いナイキのシューズが、これらは、アスリート用に開発された「ヴェイパーフライエリート」や市販モデルでアスリートも使用する「ヴェイパーフライ4%」で、今までの常識にないビックリするぐらいの厚底だ。このシューズはどんな速く走れる秘密があるのであろうか?本当に速くなるのか?自分たちが使っても速く走れるのだろうか?
写真: ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット
これは接地感革命だ
速く走るという行為は、"ストライド"と"ピッチ"を高めた産物に他ならない。「スピード=ストライド×ピッチ」は運動力学の公式だ。
ランナーの速く走りたい、という欲求をかなえるには、ストライドと、ピッチ(回転数)を保つことがキーになる。それを自分でたくさんやるか、シューズにやってもらうか、でシューズ選びが変わるわけだ。
その上で、今までのレーシングシューズは、ランナーの能力を大前提として、ピッチ(回転数)をアップ、維持に重きを置いた作りになっていて、接地感のある薄いソール「薄底」が日本では特に一般的であった。
しかし、今までのこれらレーシングシューズとは、一見、真反対に見えるこの奇想天外な「厚底」のシューズは、実はあらゆる観点から、とても合理的にできている。
ストライドが自然に出る構造
10mmドロップと言われる、踵が厚くて、前足部に向かって薄くなる坂道ソールは、そもそもトレーニングシューズに採用されるストライドを自然に作り出す一般的な構造だ。また、屈曲も制限してあげることで揺れやすくなっている。
つまり、シューズがバランスを崩すことで、自然とストライドをキープする構造になっている。また屈曲を制限することで接地時間も短くなるという一石二鳥の構造なのだ。
ズームフライ フライニットを履いて、つま先を踏み込むとバランスが崩れることだろう。 重力に従って、バランスを崩し続けることが、推進力そのものだ。また股関節からコアトルクを使ってストライドが出す状態を作り出すことになる。
ピッチの掛け算発想
また、この段階でシューズの跳ね上げを感じることになる。この屈曲を制限したトゥスプリングと言われる構造は、まさにトレーニングシューズのそれだ。このシューズには、そこにカーボンプレートが内包、スプーン状に湾曲するように配置されていることがポイントだ。
坂道構造+跳ね上げ構造は、そもそもバランスを崩して、ストライド広げ、さらに接地時間を短くする効果を期待したものだった。着いても、安定しないでバランスが崩れるのだから、原理的に接地時間は短くなる。
カーボンプレートの素材自体、またその形状から、さらなるその構造全体の後押しをする形になり、その接地時間はさらに短縮され、同時に力の伝達はピークをむかえる。それが圧倒的な推進力の秘密だ。
簡単に言えば、ピッチでスピードを維持、アスリートの能力を引き出しやすくするのではなくて、その接地した一歩一歩の力(パワー)の伝達力を高めて、全体として推進力を高めた構造になったと言っていい。つまり、アスリートの能力をさらに一歩高めるような発想だ。
厚底VS薄底ではなく、目標が同じシューズであるが、それに対する別解釈になるのであろう。
もちろん、ランニングにはトレーニングをしての能力アップは欠かせない。それは有酸素能、その燃費能(乳酸作業閾値)はもちろんだが、シューズによってそれをもっと引き出すという発想だ。アスリートがそうであったように、ランナーのみなさんもこのシューズによって、自分の成果をさらに引き出すことが可能だ。
これが速く走るための秘訣になる。自分たちがうまく使うコツをつかめば、誰にでもやってくるのだ。まるで、スポーツカー、F1カーのよう、運転するドライバーの操作性でマシンのポテンシャルはいかようにも変わるのだ。
ズームヴェイパーフライシリーズ市販のモデルを整理
ズームヴェイパーフライエリートはアスリート向けのシューズであり販売していない、だが2種類の市販モデルがある、それが「ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」と「
ズームフライ フライニット
」だ。
「ズーム ヴェイパーフライ 4%」のネーミングは、ランニングの効率がナイキ ズーム ストリーク6と比較して標準偏差で4%改善するというコロラド大学の研究チームが検証に由来する。
構造的に、1番ズームヴェイパーフライエリートに近いモデルであり、契約のアスリートの大半は、このモデルを着用している。彼らの能力を引き出すのに相応しいシューズなわけだ。
自分の体感から言っても、このシューズは単純に、ランナーの能力が高ければ、高いほど、シューズと共鳴するイメージがある。簡単にいうと、レースでハマると、全体通しての余裕感が変わる、私の自己ベストもこのシューズで達成した。
よい接地感位置(スイートスポット)を、ズーム ヴェイパーフライ 4%では、うねってバネを使っていくので、ランナー自身がそこを捉え続ける必要がある感じがするときがある。
最高のシューズと最高のコンディションをどう嚙合わせるのか、市民ランナーには難しい課題だ。28,080円を出費して、宝の持ち腐れは、もったいない。
ズームフライこそ、まず試してほしいシューズだ
一方、「ズームフライ」は、もっともっと誰もが履ける構造に、アスリートモデルを解釈したカタチだと思ってほしい。廉価版ではない。
超軽量、高反発素材である一方、耐久性に課題があるZOOM Xの代わりに「ルナロン」、カーボンプレートの代わりに「ナイロン混プレート」が採用されて、うねるようなバネは感じられないが、その構造全体はそのまま、それでいて軽量性を保ったシューズスタイルだ。
スイートスポットにハマれば、シューズにその推進力が導かれる感覚だ。トレーニングシューズで軽いモデル、ランナーの誰もが、より使いやすいシューズに仕上がっている。
まさに履くランナーを限定させない、キプチョゲ体験できるシューズ、それが「ズームフライ」だ。
ズームフライ フライニットにアップデイトして進化
そしてその進化版が『ズームフライ フライニット』というわけだ。
写真: ズームフライ フライニット
ミッドソールソール素材が、最新素材「リアクト」に、また今回から、カーボンプレートが搭載されるということになり、もうアスリートモデル「ヴェイパーフライ4%」に一歩近づいたと言っていい。しかも、クセのなさは「ズームフライ」ゆずりだ。
きっと、みなさんもズームフライ フライニットを履いた瞬間に、ズームフライをはじめて履いた感覚は上書きされて、ウソのように、もとの記憶は忘れさられる、そんな不思議な感覚を味わうことであろう。
大げさではなく、はじめて履いたときの印象はヴェイパーフライ4%以上だ。
まさに良い足の接地位置(スイートスポット)は、ズームフライのように、ハマりやすく、そのまま保っていく感覚はある。
一方でズームフライの何倍も、ヴェイパーフライ4%のようなポジティブな推進力も同時に感じられるのだ。
これらシリーズが気になっている方には、まずズームフライ フライニットを試してほしい。価格的にメリットのある「ズームフライ」ではなく、またまた手に入りにくい「ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」を無理して手に入れるのではなくだ。
それは、耐久性のメリットがあまりにも大きいからだ。
リアクト採用により耐久性はモデル内ダントツ
ミッドソール素材は、70年代からその加工のしやすさ、コスト面のメリット、そして、そこそこの耐久性もあり、長きに渡ってEVA(エチレン・ビニール・アセート)が使用されてきた。
しかし、近年は、「リアクト」に代表される熱可塑性ポリウレタン樹脂素材が、メキメキ頭角を現してきていて、EVAに取って代わるミッドソール素材として、各メーカーがこぞって採用しはじめているのだ。
ずばり、そのメリットは、耐久性と素材の持つ反発力だ。今回のズームフライフライニットで、EVAのルナロンから、ポリウレタン系素材リアクトになり、その耐久性は大きく変わることになる。というより雲泥の差になる。
耐久性を形容した”走行距離160キロ“は、主にヴェイパーフライ4%を表現したものであったが、その表現はズームフライにも少なからず当てはまっていた。それもズームフライ フライニットには、もはや過去のものになったといっていいだろう。
決して大げさではない。EVAという従来素材は、高分子スポンジ構造だ。家庭用のスポンジを想像してもらうと簡単だが、繰り返しの使用で、いつかは気泡が潰れてへたってしまうことになるものだ。
それに対して、「リアクト」のようなポリウレタン樹脂は、スポンジ構造ではなく、軟質化されたプラスティック構造。スーパーボールのようなものイメージ頂けると分かりやすいが、ヘタリ現象が原理的起きないばかりか、反発力も兼ね備えた、まさに文字通り“最新素材”なのだ。
ヴェイパーフライとは違うカーボンプレートの科学反応
ただ弱点もある。これらの素材は、やや柔らかすぎてしまうことだ。
そもそも、ミッドソールに求められる機能性は、安定していて、クッションがあることになるわけで、これは言いかえれば、硬くて、柔らかいものになる。そんな物質などあるわけがなく、そもそも、ミッドソールには、とても難しいことが要求されているわけだ。
それだけに、今回このモデルに、カーボンプレートが搭載された意義は大きい。リアクトという”柔らかい“物質とカーボンプレートという”硬い“物質がうまく噛み合ったことで、相性のいいコラボレーションになった。
しかも、ZOOM Xソールとカーボンプレートのような激しいうねり感ではなく、リアクトとカーボンプレートのコラボのその妙は、前回のズームフライそのもの感もあり、もはやヴェイパーフライ4%のような感覚ですらある。ズームフライとズームフライ フライニットは、まさに別物だと言いたいのもこの感覚だ。
これはカーボンプレートの影響か、トゥスプリング(つま先の跳ね上げ感)が体前方に誘導する感じがとてもスムーズだ。お世辞抜きでスピードに乗る感じは、ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニットよりも好きな感じさえあるのだ。
毎回ではないが、私のワークアウト中のトレーニングデータが目立ってクオリティーが高い日がある。それが決まって
ズームフライ フライニット
を履いた日なのだ。
具体的には、グランドコンタクトタイム(接地時間)がとても短く、ストライドが身長以上になったのだ。(ヴェイパーフライ4%よりよいデータのときもある)
さあ、次回は、いよいよマラソン2時間34分自己ベスト、シューズアドバイザー藤原岳久の体験から「 ズームフライ フライニットを徹底的に履きこなすコツ 」をお伝えしましょう!
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【著者プロフィール]
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
藤原岳久(F・Shokai 【藤原商会】代表)
日本フットウエア技術協会理事
JAFTスポーツシューフィッターBasic/Master講座講師
足と靴の健康協議会シューフィッター保持
・ハーフ1時間9分52秒(1993)
・フルマラソン2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
・富士登山競走5合目の部 準優勝 (2005)